2015年リリースの3rdアルバム『ワイルド・ハート』は、先行シングルの「コーヒー」をはじめ、上質な楽曲が揃った都会的でお洒落な傑作だった。同年にはライバル的存在のザ・ウィークエンドがアルバム『ビューティー・ビハインド・ザ・マッドネス』で大ブレイクしたが、ミゲルはその姿勢を崩すことなく、ブラック・ミュージックの本質と男気を貫いている。

 本作『ウォー・アンド・レジャー』は、その『ワイルド・ハート』から2年半振り、通算4作目のスタジオ・アルバム。全曲をミゲル自身が制作し、プロデューサーには過去2枚のアルバムにも参加したポップ&オークや、ベイビー・バッシュの「シュガ・シュガ」(2003年)やホールジーの最新シングル「ナウ・オア・ネヴァー」などをヒットさせたハッピー・ペレス、【グラミー賞】のプロデューサー部門でノミネートされるなど、90年代から活躍し続けているサラーム・レミ、そしてリアーナやビヨンセ、アリシア・キーズなどのトップスターに楽曲提供する米ニューメキシコ州出身の敏腕プロデューサー=ジェフ・バスカーがクレジットされている。

 今作は、これまでリリースしたアルバムの中で最もゲストが多い。まず、流行を取り入れたトラップ風の先行シングル「スカイ・ウォーカー」には、今年も大活躍したラッパーのトラヴィス・スコットが参加。ラップというよりは歌に近いフロウで、ミゲルのボーカルと上手い具合に重ね合わせている。レニー・クラヴィッツや故プリンスを彷彿させるロック色の強いナンバー「クリミナル」では、マイアミ出身の中堅ラッパー=リック・ロスが、ドスを利かせた重たいラップを披露。ミゲルらしさが出た、アルバムの冒頭を飾るに相応しい一曲だ。

 2013年にミゲルをフィーチャーしたシングル「パワー・トリップ」をヒットさせた、米ノースキャロライナ州出身のラッパー=J・コールと、プロデューサーとしても参加しているサラーム・レミの2人によるコラボ曲「カム・スルー・アンド・チル」は、どこかエキゾチックな雰囲気漂うアーバン・ネオソウル・チューン。ループされるメロディとアコースティック・ギターの演奏に、ずっと浸っていたくなるような中毒性がある。5曲目の「ウルフ」には、奇抜なファッションや独特のサウンドでリスナーを魅了する“ファンタジー・ガール”ことQuinがフューチャーされていて、同曲も彼らにしか表現できない、唯一無二の世界観が生み出されている。こちらも個性的なファッションや楽曲で注目されている、コロンビア出身の女性シンガー・ソングライター=カリ・ウチスは、9曲目の「カラメロ・デューロ」でミゲルとデュエット。スペイン語のタイトルからも予想できるように、ラテン・フレーバー漂うご機嫌なダンス・トラックに仕上がっている。ダークなイメージが強いミゲルの楽曲としては、かなり珍しいタイプのナンバーだ。

 本作は、ミゲル自身が「陽気なアルバム」だとコメントしているように、ポップな要素を取り入れた親しみやすいタイトルが散りばめられている。例えば、2曲目の「パイナップル・スカイズ」では、ザ・ウィークエンドの「アイ・フィール・イット・カミング」を意識したような80年代ディスコに挑戦していたり、4曲目の「バナナ・クリップ」では、「アハハハ!」というフレーズが飛び出す、陽気でスローテンポなレゲエ・サウンドを取り入れている。アルバム発売1か月前にミュージック・ビデオが公開された「トールド・ユー・ソー」も、過去3枚のアルバムでは聴けなかったエレクトロ調のダンス・チューンで、ビデオではミゲル自身も軽やかなステップを披露している。もちろん、生楽器の演奏に溶け込んだ70年代風ファンク「シティ・オブ・エンジェルズ」や、ずっしり重たい「ハレム」~「アノインテッド」など、「陽気」とは言い難い(?)、ミゲルらしいナンバーも健在。

 好き嫌いは別れるかもしれないが、これまでの作品で毛嫌いしていたリスナーにも、比較的受け入れやすいアルバムに仕上がったミゲルの新作『ウォー・アンド・レジャー』。かといって、質が落ちた、方向性が変わった……と、ファンをがっかりさせないところも凄い。


Text: 本家 一成

◎リリース情報
『ウォー・アンド・レジャー』
ミゲル
2017/12/1 RELEASE

ポップ要素を取り入れつつも、ブラック・ミュージックの本質を貫く力作 / 『ウォー・アンド・レジャー』ミゲル(Album Review)