連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第10週「笑いの神様」第55回 12月4日(月)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:保坂慶太

55話はこんな話
大正5年、大阪は好景気。藤吉(松坂桃李)は、寄席の数をもっと増やし、笑いの神様に愛されているという落語家・団吾(波岡一喜)と契約を結ぼうと考える。

相変わらずの藤吉
滋味あふれる赤ちゃんだった隼也が、あっという間に渡部翔夢という子役に。この子がいやにきりっと二枚目で、藤吉似であるところが、子役選びに定評ある朝ドラの面目躍如。

あっという間に、大正5年。寄席ができて6年近く経過しているというのに、芸人たちの演目は同じ。この頃はこれくらい笑いが牧歌的だったのだろうか。

ふたつの寄席を、アサリ(前野朋哉)、キース(大野拓朗)、万丈目(藤井隆)、岩さん(岡大介)の四人と、寺ギン(兵藤大樹)のところの芸人で回しているのだろうかとはなはだ疑問ではあるが、さすがに、さらに寄席を増やすとなると、芸人を増やさないといけなくなって、藤吉は人気落語家・団吾師匠に目をつける。
さあ、ここが今日の最大の、わろ点。 
視聴者の多くがテレビに、もしくはパソコン、ケータイに向かってツッコンだことと思う。

藤吉は、おもろい芸人を見る目があると豪語していたが、風太(濱田岳)のほうが目敏いじゃないか!
藤吉も噂には聞いていたようだが、風太が「笑いの神に愛された天才や」というから、偵察に行って、専属契約結ぶと言い出すのだ。
思えば、寄席をやるのもてん(葵わかな)が言い出したことだった。
コレ!という自分の強い意思がなく、なんとなく、ひとの言ったことに流されてしまうタイプの藤吉。
お人好しなんだろうけれど・・・。

団吾のことを、破天荒、破天荒と言っていたが、破天荒とは誰もやったことのないことを率先してやることだ。一方、藤吉は、破天荒ではなく、ひとのつくった道を行くタイプ。
だから、大きな失敗はしない。現に、てんの言うとおりに寄席をはじめてうまく行っている。

松坂桃李がずーっと、なんだか輪郭がはっきりしない演技をし続けているのは、そのせいであろう。
だが、しかし、そんなぼやけた人物でも、こんなに毎回、毎回、書いてしまうってことは、藤吉のことが気になって気になって仕方ないということ。
無視できない時点で、藤吉の魅力に取り憑かれてしまっているということではないか。
たぶんこれが、てんも参った藤吉マジックなのだ。

それにしても、風太
いくら集金に来たついでとはいえ、ライバル店で、耳寄りな話をしてしまうっていうのは、てんのために情報を伝えているとしか思えない。すでに、陰ながら、てんを助けているのではないか。

なんだか、藤吉がのび太で、風太がドラえもんに見えてきた。
そうだ、藤吉が、のび太と思えば、腹も立たないではないか。
笑いといえば、現代のM-1グランプリのほうが盛り上がり、昔の笑いの世界「わろてんか」は笑えないと
いう意見も多いなかで、10週目にして、「わろてんか」の楽しみ方がやっとわかってホッとした。
藤吉は、のび太だ。うんうん、そう思おう。

藤吉=のび太 のビジュアルは「ゆとりですがなにか」(日本テレビ)で銀縁地味メガネをかけていた松坂桃李を想像すると、ニマニマできる。
(木俣冬)
イラスト/まつもとりえこ