官僚、検事、弁護士というエリート集団のなかから国会入りする女性たちに、なぜ不祥事が相次いだのか。国際政治学者の三浦瑠麗氏が分析する――。

■小池都知事は数少ない実力派

女性国会議員のスキャンダル報道が続いています。ここ1年ほどを見ても、稲田朋美元防衛大臣のPKO日報問題、蓮舫前民進党代表の二重国籍問題、豊田真由子前衆議院議員の秘書へのパワハラ問題、今井絵理子参議院議員や山尾志桜里前衆議院議員の不倫疑惑など、枚挙にいとまがありません。

こうしたスキャンダルが続出するのはなぜなのか。そこには彼女たちの個人的資質というだけでは片づけられない、構造的な問題があると私は思っています。

日本では女性議員はいまもって圧倒的なマイノリティーです。そのため、政党や派閥を率いる本格的な政治家として成長していくための機会をなかなか与えてもらえません。また成長途上で男性議員とは違った役割を担わされることも多く、それゆえの無理が「不祥事」というかたちで噴き出すのです。

そのことを理解していただくために、女性政治家を簡単に類型化してみました。

----------

女性政治家のタイプ
侍女タイプ
(咬ませ犬)山尾志桜里・稲田朋美
(クリーン)今井絵理子
(党内官僚)豊田真由子
お姫様タイプ
小渕優子
実力派タイプ
小池百合子
業界の代表タイプ

----------

最もわかりやすいのは世襲型の「お姫様」タイプでしょう。小渕優子元経産大臣や野田聖子総務大臣がこれに当たります。選挙地盤がしっかりしているために、小渕氏のように少々の不祥事が発覚してもいったん政府の役職を離れて「休む」ことができるという強みがあります。

しかし多くの女性議員はお姫様ではありません。ほとんどの女性議員は、与野党のボス政治家に側近として仕える「侍女」タイプだと言って差し支えありません。そのなかにもいくつかの類型があります。

ひとつは鋭い舌鋒と忠誠心を買われ、国会やメディアで敵対勢力を攻撃する役割を担う「咬ませ犬」です。咬ませ犬の典型は、弁護士であり保守派の言論人だった稲田元防衛大臣や、検察官から政界入りした山尾前衆議院議員です。

他方、国会での論戦やメディア露出からは距離を置き、党幹部から目をかけられながら党内で政策立案や利害調整などの党内政治に注力するのが「党内官僚」です。多くは官僚やエコノミスト出身で実務に強い人たちです。

全国的な知名度を活かして参議院の比例区や縁の薄い選挙区に落下傘候補として擁立されるのが「クリーン」型です。知名度は低くとも話題性があり、○○ガールズとして1本釣りされ、刺客になる人たちもいます。古くは山東昭子参議院議員や扇千景元参議院議員、佐藤ゆかり前衆議院議員。山尾前議員も元は小沢ガールズでした。最近では元SPEEDの今井参議院議員がここに入ります。ここから党内官僚や咬ませ犬になる人もいれば、クリーン型に満足して留まる人もいます。

数は少ないものの「実力派」タイプも存在します。アメリカの上院議員や国務長官を歴任し、昨年の大統領選挙ではトランプ候補に惜敗したヒラリー・クリントン氏はまさに実力派です。日本では、このたびの解散総選挙で存在感を発揮している「希望の党」代表の小池百合子東京都知事がこの範疇に入るかもしれません。

ほかにも日本看護協会などの職業団体に推されて議席を得ている「業界の代表」タイプの女性議員もいますが、ここでは詳しくは触れません。

■山尾氏を見捨てた、民進党の女性議員

先に私は「女性議員はマイノリティーであるため本格的な政治家に成長できない」と述べました。侍女タイプやお姫様タイプの女性議員が実力派に脱皮しようとしてもうまくいかないケースが多いのですが、それは彼女たちが政治家として成長するプロセスをきちんと踏んでいないからなのです。このことは政治の世界では女性が圧倒的な少数派であることと関係しています。

たとえば自民党では、男性議員は国会議員のグループである派閥に所属し、先輩議員から教育を授けられ、やがて閣僚級を経て派閥を率いる長となり、総裁候補に擬せられ、首相を目指すというキャリアを歩みます。派閥とは俗な言葉で言えばサル山のようなもの。政治家たちは、そこでボスになるための切磋琢磨を経験します。

派閥を率いるために必要なのは、実務能力や演説のうまさや集金力だけではありません。人を押しのけるだけの人なら人望は集まらず、離反されるおそれがありますから、ボスザルを目指すには優しさや惻隠の情も必要です。サル山のなかで切磋琢磨を経験することで、男性議員は次第に人格を陶冶していくのです。

しかしマイノリティーである女性議員は、サル山のボス争いに加わることはありません。派閥のメンバーではあっても、主要メンバーとは少し離れた場所に置かれるというイメージでしょうか。このあたりの事情は、企業や学会など一般的な男性中心の組織と変わりません。

ボス争いをしないのは一面ではいいことでしょうが、人格陶冶の機会を持てないということでもあり、そのため女性議員の多くは、いざというとき困っている仲間へ手を差し伸べるような行動を取れないのです。山尾氏が不倫問題でメディアの集中砲火を浴びたとき、同じ民進党の女性議員から彼女を擁護する声がほとんどあがらなかったのは象徴的です。

優しさは女性一般の特徴だと思われています。実際に世間の女性は男性よりもはるかにこまやかな気遣いをしますし、「女性=優しさ」のイメージを持つこと自体は間違っていないと思います。ただ、国会議員などに抜擢される女性は、マイノリティーならではの頑張りを強いられる一方、サル山経験がなく人格を磨かれていないために、惻隠の情を持てない人がいるのです。

それが端的に表れたのが、豊田前議員のパワハラ問題でしょう。豊田氏は年上の男性秘書を「このハゲーッ!」と罵倒し、暴力を振るったとされています。女性が男性社会で出世するには、豊田議員がしていたように支持者のもとへ誕生日のメッセージカードを届けるといった地道な努力が必要だという一面もあるでしょう。その頑張りが空回りしてしまったのだという見方もできますが、こうした振る舞いやそれによる悪評は必ず外へ漏れ出ます。部下に対して惻隠の情を持てない人が衆望を集めることはありません。

■党の都合で演じた「無理な役柄」

女性政治家はボス争いという王道のルートをたどらない代わりに、キャリアの初期から目立つ役割を与えられることがあります。それがメディアや国会の委員会を舞台とした咬ませ犬役です。彼女たちは舌鋒鋭く相手陣営を責め立てますが、その姿勢は自分自身の思想信条というよりもボス政治家や党の都合に合わせたもので、過剰に攻撃的であったり清廉潔白であったりするものです。

たとえば山尾前議員は清廉さを強調するために、青と白のスーツ姿で国会やテレビ番組に登場していました。咬ませ犬としての山尾氏は、夫婦関係に悩みもし恋もする本来の「人間・山尾」ではなく、党の都合によっていささか無理な役柄を演じていたのです。

そんなところへ、きわめて人間臭い不倫疑惑が持ち上がったのが今回の不祥事です。決して褒められるようなことではありませんが、もし山尾氏が過剰に清廉な咬ませ犬役を演じていなければ、世間からこれほどまでに叩かれることはなかったと思います。

咬ませ犬のなかにはその役柄に安住してしまい、派閥のリーダーや党首などへのステップアップをしようとしない議員も出てきます。清廉さやけなげさだけが売りのクリーンタイプも同様です。それは議員個人にとっても日本にとっても不幸なことではないでしょうか。

咬ませ犬はメディアで顔と名前を売ることができるので、選挙区でも強いのではないかと思われがちですが、決してそうではありません。それは彼女たちが民意ではなく、徹頭徹尾、ボスや党のほうを向いているからです。高市早苗元総務大臣はかつて咬ませ犬としてテレビなどでも活躍していましたが、2003年の総選挙で1度落選しています。その後の高市氏はメディア出演を控え、党内官僚の役柄に徹して閣僚経験を重ねています。

ただ、咬ませ犬であれ党内官僚であれ、サル山経験がないままに大臣や党首などの要職に就いた女性議員には、「守りに弱い」という共通の欠点があります。咬ませ犬を演じるだけであれば、相手陣営の弱点をピンポイントで突けばいい。しかし大臣や党首といった全責任を引き受ける立場に置かれたときは、あらゆる点について受け答えをする高いコミュニケーション力が問われます。

こういうとき、女性政治家の多くは責任感を持った受け答えができません。稲田元防衛大臣や蓮舫前民進党代表に不祥事が持ち上がったとき、満足な受け答えができずに、問題を鎮静化するどころか炎上させてしまったのは記憶に新しいところです。

いずれにせよ、問題の根源は政界における女性比率の低さにあります。女性が政界における「お客さん」であるうちは、人格の陶冶もできなければ全責任を引き受けるコミュニケーション力が育つこともありません。女性議員が政治家として健全に成長できる環境を整えるため、議員定数の一定の割合を女性に割り当てるという「クオータ制」を取り入れるのも、ひとつの方策ではないでしょうか。

----------

三浦瑠麗(みうら・るり)
東京大学政策ビジョン研究センター講師。1980年、神奈川県茅ケ崎市生まれ。湘南高校、東京大学卒業。博士(法学)。『シビリアンの戦争』、『国家の矛盾』(高村正彦氏との共著)、『国民国家のリアリズム』(猪瀬直樹氏との共著)などの著書がある。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」ほか討論番組の顔としても知られる。

----------

(左上)山尾志桜里氏(日刊スポーツ/AFLO=写真) (右上)稲田朋美氏(毎日新聞/AFLO=写真) (左下)今井絵理子(読売新聞/AFLO=写真) (右下)豊田真由子(AFLO=写真)