現在、建築や土木、アパレルといった多くの分野で利用されている「CAD(キャド)」。一般的なコンピューターソフトとは異なり、各分野に適した種類のソフトが存在しています。それぞれの分野の知識とCADの操作に関する知識を持って指導をする仕事を「CADインストラクター」といいます。 今回は株式会社3Aの宇田川あやのさんにCADインストラクターの仕事の内容や、仕事に就くまでの経緯について伺いました。

受講生の多くは建築で働いている人か、建築業界で働きたい人

Q1. 仕事概要と一日のスケジュールを教えてください。
 
私は一級建築士として建築図面を作成しつつ、CADスクールでインストラクターをしています。CADとは建築や土木、アパレルの業界で使用される図面制作ソフトです。

当スクールの講座を受講する方は主に建築業界で働いている人やこれから建築業界に進む人です。建築の知識はあるけどCADが分からないというお客さまもいれば、CADは使えるけど建築図面は作成できないという人もいます。そのためCADインストラクターはCADの操作方法だけではなく、建築の知識も必要になる仕事です。

スクールには基礎コースや応用コースがある他、オーダーメードの講座もあります。オーダーメードで受講するお客さまは主に建築業界で働いている方です。仕事で作成しなくてはいけない図面を作成できなかったり、大まかなCADの操作は知っているが分からない部分があったりするという悩みに対応していています。ですので建築スキルが高く、専門的な質問をするお客さまばかりです。

<一日のスケジュール> ※一日3回のレッスンがある日
09:00 出勤
09:30 午前の部のレッスン開始
12:30 午前の部終了、昼休み
13:30 午後の部のレッスンスタート
16:30 午後の部終了、社内ミーティング、教材の作成、最新CADの勉強、建築士としての業務
19:00 夜の部のレッスン開始
22:00 夜の部終了
 
 
Q2. CADインストラクターの楽しさ・やりがいは何ですか?
 
初回のレッスンではパソコンすらうまく操作できなかったお客さまがCADを使いこなせるように成長すると達成感がありますね。基礎のレッスンを終えた後に「仕事で図面が描けた!」と報告してくださるときもあり、うれしくなります。

また、お客さまの質問が初歩的な内容から実務レベルの内容に変化するのも楽しみの一つです。初回のレッスンでは線の引き方、単純な形を描く操作といった質問をされるのですが、2カ月ほど指導を続けると一度描いた図面の縮尺を変更するにはどうしたら良いのかといった少し難度の高い質問内容になります。
 
 
Q3. CADインストラクターで大変なこと・つらいと感じることはありますか?
 
この仕事はCADの操作と高い建築の知識が必要になります。どちらかの知識が欠けているとお客さまの悩みに対応しきれませんので、2つの内容に関する最新の知識や情報を知っておくために絶えず勉強しなくてはいけない大変さがあります。
 

CADの技術を広めて女性の社会進出を支援したいと思った

Q4. どのようなきっかけ・経緯でCADインストラクターの仕事に就きましたか?
 
中学生の頃から住宅設計の仕事を志していたのですが、私が若い時には産前後休暇や育児休暇といった制度が建築業界にあまり定着していなかったため、一つの会社で働き続けられずにいました。そのため、建築積算(建築物の見積書を作成する仕事)や建築現場の補助、一級建築士受験対策講座の指導と職を転々としながら働いていたのです。職場が変わっても建設業からは離れたくないと思う一方で、技術がないために働き先の選択肢が限定されている主婦の方がたくさんいると実感しました。

育児のために家を留守にできない方や旦那さんの転勤により環境が変わる方など、働きたくても働けない女性がいる。しかし、図面作成の仕事はパソコンとインターネット環境、そしてCADがあれば活躍できます。技術を身に付ければ働ける女性が増えるのではないかと思ってCADスクールを開講しました。
 
 
Q5. 大学・専門では何を学びましたか?
 
専門学校では一級建築士の資格を取得するために建築の基礎を学びました。卒業後、専門的な建築の知識を持つ方々と接する機会が増えて「より知識を深めたい」と思い大学にも通いました。大学では図学(立体物を平面図として平面上に写す方法を知る学問)といった基礎から建築法規ができた背景や構造、施工といった各分野の研究など専門的な知識も学びました。

大学は建築現場で実際に働いてから通いましたので、専門学校で理解しきれなかった内容もスムーズに理解できました。仕事をしてから建築を学ぶという経験は理解を深める上でとても勉強になったと思います。

CADは専門学校で学ぶ機会がありましたが、しっかり身に付いたのは働いてからです。産休をきっかけに当時働いていた会社を辞め、自由に過ごせる時間が確保できたのでCADを学べるスクールに通っていました。
 
 
Q6. 高校生のとき抱いていた夢が、現在の仕事につながっていると感じることはありますか?
 
自宅の作りを不便に感じていて、中学生の頃から住宅の問題を解決できる住宅設計の仕事に興味を持っていました。それに、人に何かを教えて理解できたと喜ぶ姿を見るのも好きでした。高校の定期試験前には友人に数学を教えたりしていましたね。当時から人に何かを説明するには自分自身がきちんと内容を理解していないといけないと思っていて、現在の仕事にもつながる考え方が身に付いていたのだと思います。
 

CADを学ぶ前に、実際に手を動かしてものを作ってみてほしい

Q7. どういう人がCADインストラクターに向いていると思いますか?
 
建築の場合、どんな材料を使用するのか、どのように組み立てられるのかといった手順を知らなければ正確な図面は作成できません。構造を理解するためにも、ものづくりが好きな人に向いていると思います。

また、CADインストラクターはお客さまに合った説明をするために、建築やパソコンのスキルを理解しなければいけませんので、相手の状況を理解しようと思う気持ちを持っていることも重要です。

また他の仕事にも共通しているかもしれませんが、粘り強さと、抱いた疑問はその日のうちに解決しようとする人も向いているのではないでしょうか。
 
 
Q8. 高校生に向けたメッセージをお願いします。
 
CADを使う前にプラモデルや洋服、食事といったいろいろなものを作ってみてください。CADを使って何らかの図面を作成するには、作りたいものについて理解していなければいけません。図面とは制作方法を記したものづくりのための手段です。材料や寸法、手順を知らなければ図面は作成できません。ものを作る経験から、それを実感してみてください。

そして、インストラクターに欠かせないのはコミュニケーション能力です。高校生のうちにたくさんの人と話してコミュニケーション能力を身に付けてくださいね。
 
 
CADインストラクターの仕事はCADを使いこなせるだけでは務まらないと宇田川さんの話から伝わってきましたね。各分野の知識に加えてものを作るために必要な要素や説明力が必要になりそうです。

将来の夢が決まっている方は、その仕事に就くための専門的な知識だけではなく仕事をする上で必要になる要素について考えてみてみるといいかもしれませんね。
 
 
【profile】株式会社3A 宇田川あやの