「MicrosoftとAmazon、どちらが優秀なエンジニアを集められるか?」という議論が広がっている。
Microsoftが米ワシントン州レッドモンドの本社をモダンなキャンパスに大改修する計画を公表したからだ。完成したらAppleの「Apple Park」に劣らない壮大な郊外キャンパスになる。一方、同じシアトル地域でもAmazonは都市の中心にキャンパスを置いており、本社キャンパスに対するビジョンは対照的だ。

Microsoftは新キャンパスを新たに建造するのではなく、500エーカーに及ぶ現在のキャンパスを"拡張"する。18棟の新しいビルを建て、現在125棟のビル数が131棟に増えるが、従業員用の駐車場は完全に地下になり、より緑が豊かなキャンパスになる。670万平方フィートものワークスペースをリノベートし、また交通インフラの改善、パブリックスペース、スポーツフィールド、グリーンスペースなどに1億5000万ドルを投じる。2エーカー、約1万2000人が利用できるオープンプラザを新設、ジョギング/ウォーキング・コース、サッカーやクリケットの施設、小売りスペースなどが設けられる予定だ。高速道路によって分断されているキャンパスを結ぶ歩行者/自転車用の陸橋を作り、2023年にはLink Light Railの駅もオープンする。このキャンパス再開発は2018年秋から工事を開始し、5〜7年をかけて完成させる。

Microsoftのオフィスというと、エンジニアが個室で集中して作業できるワークスペースで知られるが、Apple Parkが形になり始めてからは、社員のスムースなコミュニケーションを促すオープンなワークスペースの価値も評価されている。オーバーホール後のMicrosoftのキャンパスは、個々のスペースと開放的なスペースのメリットが融合したワークスペースになりそうである。

それでも、若いエンジニアはMicrosoftの新キャンパス計画に惹かれないと見る向きが少なくない。同社が本社を置くレッドモンドが、シアトルから離れた郊外の地域だからだ。Microsoftだけではなく、Facebook、Google、AppleといったIT大手は大都市郊外にキャンパスを設けているが、それらの企業のエンジニアの平均年齢は、ここ数年でどんどん若返っており、ミレニアル世代が主力になろうとしている。彼らは街中指向が強い。

だから、シリコンバレーにおいても、若いエンジニアは郊外キャンパスの城下町ではなく、大都市であるサンフランシスコに住む。シリコンバレー地域のキャンパスへの通勤に、サンフランシスコ市内からだと車で片道1時間弱かかる。それでも約8500人が毎日サンフランシスコから通っている。また、郊外キャンパスの企業を避ける傾向も強まっている。CBREのTech-Thirty 2016によると、2013〜2015年にソフトウエア/サービス・エンジニアの仕事が最も増加した都市の1位はサンフランシスコ (47.0%)。シリコンバレーは6位 (26.1%)、サンフランシスコ-ペニンシュラ (FacebookやOracleなどが本社を置く地域)は17位 (15.1%)だった。シリコンバレー地域も伸び続けているものの、サンフランシスコの伸びが顕著。同市には、TwitterやUber、Pinterestといったユニコーンやスタートアップが多く拠点を設けている。

そうした動きに敏感に反応したのがAmazonだ。同社は、シアトルのダウンタウンに巨大な本社を作り上げた。2014年にAmazonのCEOであるJeff Bezos氏はインタビューで次のように述べている。

「シアトルの郊外に移したら多額の費用を抑えられる。だが、都市の中心部にキャンパスを建造することにした。それは社員を惹き付ける利点になる。無料マッサージよりも歓迎されるだろう」

同社は今年の夏に、第2ヘッドクォーター (Amazon HQ2)を北米に設ける計画を発表し、建設候補地の公募を開始した。その条件の1つを「有能なエンジニアを獲得できるところ」としており、エンジニアの若返りが進んでいることからHQ2も都市部に置く可能性が高いと見られている。

郊外キャンパスにとどまるMicrosoftやAppleと、都市の中心部にあることを最高の福利厚生とするAmazon。それ自体が街であるようなキャンパスは、人々の暮らしを変えていこうとするIT企業のビジョンを形にしたものになる。そんな近未来的な環境で働けるのは魅力である。だが、郊外のキャンパスのままでは、スポーツフィールドやモール、オープンプラザが用意されてもミレニアル世代の心には響かないかもしれない。

一方でWordPress.comのAutomatticのように、サンフランシスコ・オフィスを閉鎖した会社もある。リモートワークを徹底して推進した結果、Automatticがサンフランシスコに設けていた豪華な拠点がほとんど使われなくなったからだ。Staplesが行っている調査によると、ミレニアルズ (20〜34歳)の44%、X世代 (35〜49歳)の45%がリモートワークが「必要」と答えている。
(Yoichi Yamashita)

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