スパコンの性能ランキングである「TOP500」は、HPLという巨大連立一次方程式を解くプログラムを実行する性能を競う。そして、元々は、1位から3位までのシステムを表彰していた。この頃はアメリカが1位~3位を独占することが多く、その中に日本の地球シミュレータや京コンピュータが顔を出すという程度であった。その後、1位~3位に加えて、ヨーロッパの1位とアジアの1位の表彰が追加された。

しかし、今回の第50回のリストでは、中国の「神威・太湖之光」が1位、「天河2号」が2位、3位がスイスの「Piz Daint」、4位が日本の「暁光」で、アメリカで最高性能のスパコンは5位の「Titan」ということになってしまった。そうなると、アメリカはTOP500の表彰に出番が無くなってしまう。

これを問題視したのかどうかは分からないが、今回から、アメリカで1位のスパコンの表彰が行われることになった。

アメリカ1位の追加だけでは、あまりに、手前味噌とみられると考えたのか、今回は、中近東1位の「Shaheen II」、オセアニア1位の「Raijin」、アフリカ1位の「Lengau」の表彰も追加された。なお、Raijinは富士通が構築を担当したシステムである。

しかし、アメリカ1位ではアメリカ以外の南北米大陸の国は対象にならないし、ロシアは欧州に入るのか、インドをアジアに入れるのかなど問題の多いスキームとなっている。

また、割を食ったのが日本で、中国が1位、2位なので、アジア1位にはならないし、暁光はTOP500 4位で、アメリカ1位のTitan(TOP500 5位)より上位なのに表彰対象にならないことになってしまった。

一方、これまではGreen500 BoFで表彰されてきたGreen500の1位のシステムの表彰が、TOP500の表彰に続いて行われることに変わり、理研の「Shoubu(菖蒲)System Bスパコン」の表彰が行われた。

なお、暁光はTOP500では4位、Green500では5位であったので、海洋開発研究機構(JAMSTEC)の関係者は表彰に登壇する機会を逸した。

また、TOP500は長期にわたる性能の推移をみるという歴史的な意義は大きいが、最近のアプリケーションの特性とのズレが大きくアプリケーション性能との相関が小さいという問題が指摘されている。これに対して、疎行列の連立一次方程式を解くHPCGプログラムの実行性能が重視されてきている。

ランキングには影響しないものの、今回から、TOP500のフルリストにHPCG性能を記述する欄が追加された。そして、TOP500 BoFの中でHPCG 1位~3位のシステムも表彰されることになった。HPCG 1位は6年前にTOP500に登録された京コンピュータである。

スパコンの更新周期は5年と言われ、もう退役の時期である京コンピュータが1位というのは皮肉というか、京コンピュータの設計が実アプリケーションの性能の点では優れていたともいえる。

TOP500 BoFにおけるGreen500の表彰が1位だけで、HPCGの表彰が1位~3位であることはHPCG性能の方が重視されているという印象を受ける。Dongarra先生はHPLとHPCGはブックエンドの両端と言っており、筆者の勝手な推測であるが、将来的にはTO500がHPLとHPCGの幾何平均でランキングされるということも起こり得るのではないであろうか。

なお、HPCGの2位は天河2号、3位は米国のTrinityである。そして、HPL性能に対するHPCG性能は、京コンピュータは5.7%、天河2号は1.7%、Trinityは3.9%となっている。強いて言えば、京コンピュータはメモリバンド幅に配慮して広い範囲の特性のアプリケーションでの高い性能を目指した設計であり、天河2号は浮動小数点演算を強化して、メモリバンド幅の必要性を切り捨てた設計といえる。そして、Trinityはその中間で、どちらかといえば京コンピュータよりの設計である。

HPLでの表彰は逃がしたとは言え、Green500とHPCGでは1位を維持し面目を保った日本であるが、米国のSummitが稼働すると見られる来年がどうなるかは予断を許さない。日本の次の巨大システムは産総研のABCIと見られるが、PEZYも海洋開発研究機構の暁光のアップグレードを表明しており、国内1位の行方も明らかではない。
(Hisa Ando)

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