実力派女優のジェシカ・チャステインが主演する「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」の公開記念トークイベントが12月4日に都内で行われ、北海道・旭山動物園の元園長・小菅正夫氏、生態科学研究機構理事長で動物行動学を専門とする新宅広二氏が出席。戦時下における動物園の歴史や役割について語った。

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第2次世界大戦中のポーランド・ワルシャワで、当時迫害を受けていたユダヤ人を動物園の檻にかくまい、300人もの命を救ったヤン(ヨハン・ヘルデンベルグ)とアントニーナ(チャステイン)の動物園長夫婦の実話を映画化。「クジラの島の少女」「スタンドアップ」で知られ、ディズニーの実写版「ムーラン」が控えるニキ・カーロ監督がメガホンをとった。

小菅氏は舞台となったワルシャワ動物園について「非常に知られた動物園だけに、その裏でまさかこんなドラマがあったなんて」と驚きの表情。「危険を冒してまで、多くのユダヤ人を救った夫婦の行動は奇跡であり、勇気という言葉はこの2人のためにある」と敬意を惜しまなかった。また、映画の原題である「The Zookeeper's Wife」に触れ、「要は飼育係の奥さんということで、私の女房もそうですから(笑)。きっとこの題名だけで、内容が伝わるほど、ヨーロッパでは知られた話なのでしょう」と笑いを交え、欧州におけるヤン夫妻の知名度を説明した。

かつて、国内の動物園で飼育されたホッキョクグマの血統登録に携わった経験があり、「一部のホッキョクグマは戦時中に"処分"されてしまった。先輩からその様子を聞かされたが、今でも涙が出てしまう」と回想。「動物園はあらゆる命のことを考え、すばらしさを伝える場所。それがある社会が、どれだけ豊かで幸せか改めてかみしめたい」としみじみ語った。

この言葉に、新宅氏は大いにうなずき「本来、教育機関である動物園が、戦争という異常事態では(動物が逃げ出して)凶器になりうる。そのようなことは、絶対に起こるべきではない」と力説。本作について「歴史と動物学を結びつける大切な要素が、見事に映像化されていて、見ごたえがある。いい映画でした」と太鼓判を押し、「映画を見た後は、ぜひ、動物園にも足を運んでほしい」とアピールした。

「ユダヤ人を救った動物園 アントニーナが愛した命」は、12月15日から全国公開。

(左から)新宅広二氏、小菅正夫氏