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けもフレに完勝した「忖度」

 ファミリーマートは、2017年に話題となったキーワード“忖度”をテーマにした弁当「忖度御膳」を、12月1日から全国のファミリーマート・サークルK・サンクス(沖縄県を除く)にて数量限定で発売しています。価格は798円。

 ネット上では、賛否両論です。ファミマの店員と思しき人物がSNSで「売れない」と嘆く投稿もありますが、真偽は明らかではありません。「自分が訪れた店舗では売れていた」という声もあります。

 そもそも、なぜ忖度をテーマにした弁当が発売されたのか。

 まず、ファミリーマートの公式Twitterアカウントは11月10日、「流行語大賞を取れそうな #忖度 と #けものフレンズ のどちらかで商品化する事になりそうです 皆さんは、どちらがいいですか?」と投票を呼びかけました。

 投票方法は、対象のツイートに対し、けものフレンズへ投票したいならリツイート(RT)を、忖度なら「いいね」をするというもの。投票の結果、11月13日時点で、RTは3万件弱、いいねは6万件以上。ダブルスコアで忖度の圧勝となりました。

 これを受けてファミリーマートの公式アカウントは13日「投票結果に上司も驚いてましたが、、、皆さんから頂いたご意見通り #忖度 を商品化することになりました!」と報告していました。

 ちなみに12月1日、ユーキャンが「2017年 ユーキャン新語・流行語大賞」を発表。年間大賞は「忖度(そんたく)」「インスタ映え」の2語が受賞しています(関連記事)。

弁当としてはよくできている

 実際に商品化された忖度御膳は、“忖度の成功”を祈って、12月現在のファミリーマートの弁当ラインナップで最高額となる798円の高級弁当に仕立てたとのこと。塩麹で漬け込んで焼き上げた金目鯛、藻塩で焼き上げたのどぐろ、枝豆サラダや野菜のうま煮、豚肉炒めなどを詰めた和風の弁当になっています。

 これだけ話題にしておいて、実際に食べないのも卑怯な話です。さっそくファミリーマートで忖度御膳を購入しました。

 おかずはどれも凝っていて、味も悪くない。金目鯛とのどぐろの量は、決して多くはないですが。ポテトサラダに枝豆が入っていたり、豚肉炒めやうま煮はしっかり味付けしてあったりと抜かりがなく、細かく食べられる楽しみがあり、お酒のおつまみとしても機能しそうです。

 コンビニ弁当というよりも、駅弁といったニュアンスですね。コンビニで売っていると考えると高いかもしれませんが、駅弁や仕出し弁当などの類と思うと安いような気がします。

 さて、弁当としてのクオリティーはともかく、疑問は売れているのかどうかです。そもそもどうやって開発されたのかも気になります。ファミリーマートの広報さんに問い合わせてみました。

売れていないの? どうやって作ったの?
広報さんに聞いた

―― さっそくですが、忖度御膳は売れていますか?

広報「店舗によって異なるので、一概には言えない、というのが正直なところです。もちろん我々の耳にも、売れているかどうかが話題になっていることは届いているのですが……ただ販売数を限定しているので、およそ3週間ほどで売り切れてしまうと思います」

―― 投票結果が出てから商品発売まで、とても短いスパンでしたが、よく間に合いましたね。

広報「商品としてはもちろん投票の結果を受けて生まれたものですが、正確に言うと『弁当の開発』は、結果発表後にスタートしたわけではないんです。もともと弊社は6月に新マーケティング戦略を始動させていまして、たとえば『ファミチキ先輩』も、その流れで生まれたキャラクターですね。その時期から『年末向けの話題性を持った商品』ということで、いろいろなものを開発していたんです」

―― 忖度御膳という商品は11月13日(結果発表日)から生まれたものですが、その日に、一からお弁当つくりをスタートしたわけではないと。

広報「弊社では開発カテゴリーごとに、いろいろな商品を開発して、いうなれば“温めている”わけですね。もちろん中にはタイミングというか、きっかけがなく、世に出ないものもあります。今回の場合は、投票結果で『忖度』となったときに、忖度というテーマを表現しやすいのはどれだろう、開発しているあの弁当がぴったりじゃないかとなって、『忖度御膳』として名付けられて登場した。そんなイメージでしょうか」

―― なるほど。素材となるもの自体は前からあって、忖度というお題をその上に乗せた、みたいな。ざっくり言えば、お弁当が先で、ネーミングが後なんですね。

広報「金目鯛やのどぐろなど、普通の商品ではなかなか使わない食材も使用しているので、それを全国で展開するとなると、さすがに前もって開発していないと無理です」

―― お弁当の味付けとか、おかずの選択とか、さすがに短期間では決まりそうにないですものね。

広報「例え話になりますが、ミュージシャンの方が、未発表曲を持っていたりされるじゃないですか。ドラマや映画のテーマ曲を依頼されたときに、『あの曲をちょっとアレンジすれば、テーマにピッタリだな』と考えて、発表していない持ち曲に手を加えて提供する……それに近い感じですかね」

―― とはいえ、商品化までは時間がなかったから、大変だったのでは?

広報「忖度御膳そのものの苦労ではありませんが、忖度とけものフレンズのどちらを商品化するのかは最後までわからなかったので、ハラハラしましたね。RTといいねの数を見ながら、『どちらが勝つんだろう』という緊張感はすごくありました」

投票結果が悪いわけではない

 ちなみに5日現在、ファミリーマートは「けものフレンズクリスマスキャンペーン」を展開し、オリジナルグッズや缶バッジなどをプレゼント中(詳細はこちら)。ファミチキ先輩とのコラボLINEスタンプも配布されています。このことから、もともと、けものフレンズを商品化するとなっても、ある程度は下準備ができていたものと考えられます。

 Twitter上での投票に話を戻すと、何しろネット上での投票ですから、筆者としては、けものフレンズが勝利するのではないかと安易に考えていました。

 ところがどうして、インターネット上には「企業が注目していない(と感じられる)側」を勝たせようという動きが出てくるものです。実際、企業のネット投票では、悪ふざけのような組織票が集まることもあれば、都合が悪くなったのか、中間発表からは想像もつかない不自然な結果が出ることもある。

 まったくの余談ですが、2012年にケロッグが実施した「チョコVSわさび」チョコワ対決企画で、ワサビ側のスフィンクスが圧倒的有利だったにも関わらず、なぜか最終的に負けたことを思い出した人もいるでしょう。

 ともかく、忖度御膳が「ネット民がノリでけものフレンズを勝たせなかった結果、ファミリーマートがあわてて変な弁当を作った」というストーリーで語られているとするならば、少しばかり間違っているといえるかもしれません。

 忖度、けものフレンズ。どちらが勝ってもファミリーマートとしては自分たちが持っているアイディアを利用し、商品化する自信があったのですね。極論を言えば、どちらが勝ってもよかった、ともいえるかもしれませんが、そのあたりは“忖度”するしかなさそうです。

 もし、けものフレンズが勝利していても、忖度御膳はまったく別名の豪華なお弁当として、世に出ていた可能性があったかもしれませんね。


ファミマ「忖度御膳」売れてない? 担当者に聞いた