【連載コラム】ドイツ在住日本人コーチの「サッカーと子育て論」――一緒に遊ぶ大人の存在

 サッカーのトレーニングで指導者が一緒にプレーすべきかどうかというのはよく議論されるテーマだと思うが、僕は極力一緒にプレーするようにしている。外からのほうが問題点を見つけやすいし、指摘もしやすい。でも、特に小学生までの子どもたちはコーチと一緒にプレーしながら、いろんなことを学ぶことができると思う。

 どのようにボールを動かし、どのようにゲームをコントロールし、どのように走るのか。そうした手本となるものを一緒にプレーしながら見せてあげられると、ただ言葉で説明する以上の説得力をもたらすことができる。

 気をつけなければならないことはある。一緒にプレーをすることで、いろいろと学べるようになるためには、子供たちが私のプレーから“学べるようなプレー”をしなければならない。子供の前で良い格好をしようと、試合では使わないようなアクロバティックなプレーをして良い気になっていてはいけないのだ。練習中に「さっさとパスを出せー!」と怒鳴っておいて、相手が何人もいるところで得意気にドリブルしていたら、子供たちは「言ってることと違うじゃんか」と思うだろう。

 もちろん、だからといっていつもあまり厳しい目で見ていると、指導者にとっても子供たちにとってもストレスになってしまう。時には細かいこと言いっこなしで、単純に子供たちとサッカーをする時間も必要だし、僕もその時間が大好きだ。

せめぎ合いを重ねることで生まれる心の交流

 僕のボールを取ろうと思いっきりぶつかってくる彼ら。なんとか出し抜いてやろうと必死に股抜きを狙ってくる彼ら。そうはさせるかと真っ向勝負を挑む私――。そうしたせめぎ合いを重ねることで、言葉で交わすこととはまた違った交流をすることができる。

 本気でボールを取りに行ったのに動きの逆を取られて突破を許した時のショック、そして同時にこみ上げるなんとも言えない喜び。子供の成長を肌で感じられるのは、なんとかけがえのないことだろう。ドヤ顔の子供の肩を叩き、「今のは完全にやられたよ。でも次は負けないからな」と宣戦布告すると、ニヤッと笑ってこぶしを突き出された。軽くこつんと合わせて、僕らはまたゲームに戻っていった。

中野吉之伴●文 text by Kichinosuke Nakano

指導者が子供たちと一緒にプレーする意義とは【写真:Getty Images】