(C)COLONY FILMS LIMITED 2016

現在公開中の『パーティで女の子に話しかけるには』が最高にブッ飛んでいました! いろいろと予想外のことが起きるので、「何も知らずに観に行って、ポカーンとして欲しい!」で終わってもよいのですが、その魅力を紹介します!

1:女の子に話しかけるためのノウハウを教えてくれる映画……では全くなかった!

『パーティで女の子に話しかけるには(原題も“How to Talk to Girls at Parties”でそのまんま)』というタイトルを見て、「がんばって好きな女の子に話しかけようと努力する、健気な男の子の話かな?」と思うでしょう。ところがどっこい、全然違う!

メインとなるストーリーは、むしろ「愛しの女の子がヤバいカルト集団(?)に丸め込まれている!彼女を助けてあげなきゃ!」というものなのです。「話しかけるとかどうこうの問題じゃないじゃん!」と良い意味でツッコめるでしょう(笑)。サイケデリックな衣装のインパクトも並大抵のものではなく、頭がクラクラしてしまいそうな衝撃がありました。

そのカルト集団と思しき連中が「実は……?」ということもポイントです。「一見するとただのヤバい連中だけど、ひょっとする宇宙人か何かではないのか?」「人知を超えた力を持っているのでは?」などと、観客に揺さぶりをかけてくるのです。

舞台は1977年のイギリスでありながらも、広角レンズを通した撮影、アニメーションの挿入、CGで作られたシーンもたっぷりある、ということもポイント。普通の映画じゃない、観たことがない摩訶不思議な世界に迷い込んだような感覚を得られる。これこそが、『パーティで女の子に話しかけるには』の一番の魅力と言っていいでしょう。

そんなわけで、良い意味で超ヘンテコな映画なのですが……クライマックスからラストにかけては、とんでもない感動が待ち受けています! 主人公の少年を演じたアレックス・シャープは脚本を読んだ時、「信じられないほどバカげていると同時に、なんて美しい話なんだと思った」と語ったそうですが、まさにその通り! ただただ「美しい」としか表現できないサプライズと喜びがあったのですから。

ちなみに、本作の原作小説を手掛けたのは、ストップモーションアニメ映画『コララインとボタンの魔女』の原作者でもあるニール・ゲイマン。小説では映画の発端部に当たる部分のみが書かれているそうなのですが、その奇抜な世界観をここまで映像として再現し、しかも物語として大きく膨らませるとは……監督はもちろん、衣装や美術のスタッフの“本気”をこれでもかと感じられるでしょう。

2:エル・ファニングがエッチでカワイイ! エキセントリックな女の子の魅力を堪能しよう!

本作のヒロインを演じるのは、『SUPER8/スーパーエイト』や『マレフィセント』のエル・ファニング。彼女の実力や可憐さが、もはや若手女優のトップクラスなのは言うまでもないこと。本作の彼女は(下世話な言い方をすれば)“カワイイだけでなく少しエッチ、そして少し不思議ちゃん”な役になっていました。

彼女はどこか世間慣れしていなくて、ちょっとズレた性的なアプローチをしたり、男の子が言っている“パンク”という言葉に並々ならぬ興味を抱いたりもする。言ってしまえば“宇宙人”のような印象をも持ってしまうキャラになっているのです。特に「彼女にキスできると思ったら……」というシーンでは驚いた、または笑ってしまったという方も多いでしょう(具体的に何が起こるかは、秘密にしておきます)。

エル・ファニングは現在19歳、少し大人になった彼女の魅力を堪能できる、というだけでも彼女のファンは必見でしょう。カワイイけど、ちょっとエキセントリックもある女の子とデートしたい、という願望がある方にもオススメします。

ちなみに、『ムーラン・ルージュ』や『LION/ライオン ‾25年目のただいま‾』のニコール・キッドマンがラスボス的な存在(?)を演じているのですが……いやいや、その出で立ちでは、彼女だとはとても気づけなかったよ! ニコールファンも必見ですよ。

3:“パンク”の精神に溢れている映画だ!

本作で最も重要なキーワードとなるのは、“パンク”です。それは1970年半ばに誕生した、社会に対する反骨精神や、「なんでも自分でやってやる!」な気概に溢れた、“音楽テロ”と呼んでも過言ではないムーブメント。やる気さえあれば演奏がヘタでもデビューできるということも相まって、当時のロンドンで社会に不満を抱えていた若者から熱狂的な支持を得ていたそうです。

劇中には、パンクロックの演奏があることはもちろん、パンクの“社会に対する反骨精神”が物語に関わってくるようになります。ヒロインは“コロニー(カルト集団?)”の中で画一的なルールに縛られているため、主人公が彼女を救おうとする行為こそが、まさに「パンクらしい」というわけなのです。

もちろん、劇中の音楽にもパンク・ナンバーが採り入れられています。ヒット曲をただ集めるのではなく、あまり有名でない隠れた名曲や、映画オリジナル楽曲もたくさん採用されているおかげもあり、「聴いたことのない音楽をたっぷりと劇場で堪能できる」という嬉しさも満載でした。

4:“はみ出し者の若者”への優しいメッセージがあった!

本作の監督は、ドラァグクイーンが主人公のロック・ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』で主演・脚本・監督を務め、熱狂的な支持を得たジョン・キャメロン・ミッチェルです。

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』と本作『パーティで女の子に話しかけるには』には、音楽でこそ自身のアイデンティティー=生き方を確立していくという共通点があります。性行動を赤裸々に描いた『ショート・バス』と、1人息子を事故で亡くしてしまった女性を追う『ラビット・ホール』は、いずれも“喪失”が描かれた物語でしたし、ミッチェル監督作品には一貫した特徴があると言っていいでしょう。

『パーティで女の子に話しかけるには』はとても奇妙な作品ですが、内包されているメッセージはとても優しいものです。ミッチェル監督は劇中でフィーチャーされている“パンク”について「はみ出し者を受け入れてくれるもの」であると考えているそうで、「本作が、自分をはみ出し物と思っているティーンにとって大切な作品になるとうれしいね」とも語っています。

若者は、親からの圧力や、学校の規則など、世界の様々なルールによって支配されていると思いがちです。しかし、既存の価値観に囚われない、まさにパンクの精神を持てば、世界はいかようにも変わるのではないか……。『パーティで女の子に話しかけるには』の物語からは、そんな若者にこそ観て欲しいと思える、尊いテーマがあるのではないでしょうか。

おまけ:この映画が好きな人に『パーティで女の子に話しかけるには』をオススメしたい!

最後に、ジョン・キャメロン・ミッチェル監督作品以外で、「この映画が好きな人に『パーティで女の子に話しかけるには』をオススメしたい!」または「『パーティで女の子に話しかけるには』が好きな人はこの映画も観て欲しい!」と思えた、3つの映画を紹介します。

1.『シング・ストリート』

数多くの傑作が生まれた2016年の中でも、ナンバーワンの呼び声が高い作品です。バンドメンバーの少年たちは皆が魅力的、閉鎖的な場所の日常を描きながら、二度とはない青春の日々を追体験できる作風は、多くの人の心の琴線に触れることでしょう。青春音楽映画×若者たちへエールを送る、という作風は『パーティで女の子に話しかけるには』と共通しています。

劇中で、デュラン・デュランやモーターヘッドなどの1980年代のイギリスのロック音楽や、MTV(ミュージックテレビジョン)のブームが起こっていることもポイント。音楽がただ懐かしさを強調するものだけでなく、しっかり主人公の心理描写と絡み合っているというのも最高でした。

2.『美しい星』

一家族が自身を宇宙人だと自覚したことから始まる、良い意味で「わけがわからない!」「なんじゃこりゃ!」と叫んでしまいそうなヘンテコな作品です。名作『桐島、部活やめるってよ』で各方面から絶賛された吉田大八監督が、リリー・フランキーや亀梨和也という豪華キャストを起用して、ここまで“攻めた”映画を作るとは……。

しかしながら、劇中のセリフや行動をよく考えてみると、いかに“計算し尽されている映画”であるかがわかるはず。音楽のセンスも格別で、正気とは思えない(※褒めています)画もてんこ盛り。「普通の映画に飽きた!」という方は、騙されたと思って観てみて欲しいです。

ちなみに、2017年には同じく宇宙人を題材にした日本映画『散歩する侵略者』も公開されていました。こちらも「なんじゃこりゃ!」と思ってしまう展開がありながら、エンタメ性はバツグン、クスクス笑えるシーンも満載なため、意外にも万人が楽しめる内容と言っていいでしょう。

3.『ネオン・デーモン』

『ヴァルハラ・ライジング』や『オンリー・ゴッド』など、観念的でわかりにくい、(語弊はあるとは思いますが)玄人向けの映画を手がけるニコラス・ウィンディング・レフン監督の作品です。

メインのストーリーは「16歳の少女がファッション業界でのし上がっていく」というシンプルなものですが、時折「どう解釈すればいいの?」と疑問が出てくるシーンが挟み込まれるので、良い意味で戸惑うことでしょう。R15+指定納得の残酷描写もあり、お世辞にも万人にオススメできる映画とは言えませんが、ハマる人には忘れられない1本になるでしょう。

なお、『ネオン・デーモン』は『パーティで女の子に話しかけるには』と同じくエル・ファニングが主演を務めており、彼女の幼いながらも“妖艶”な魅力もしっかりと引き出されていました。キアヌ・リーブスが、無駄遣いとしか言いようがない役で出演しているのも注目ですよ!

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(文:ヒナタカ)

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