連続テレビ小説「わろてんか」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)
第10週「笑いの神様」第56回 12月5日(火)放送より。 
脚本:吉田智子 演出:保坂慶太

56話はこんな話
団吾師匠(波岡一喜)を迎えるという藤吉に、アサリ(前野朋哉)、キース(大野拓朗)、万丈目(藤井隆)、岩さん(岡大介)たちは労働争議を起こす。

団吾反対(断固反対)
芸人たちのダジャレ出たー。
こういうシンプルなのは嫌いじゃない。

伊能さま、ピンチ
伊能栞(高橋一生)のもとに、本家の長男がやって来て、自分が製薬会社を継ぐから、社長解任を言い渡す。
伊能は、伊能活動寫眞だけは僕のものだという。
新しいことに挑戦し続ける開拓者の団吾に倣って、僕らも時代を切り拓くんだと前向きな伊能に、藤吉は、またも「よっしゃ俺もやったる」と流される。ほんとうにこの人、自主性がない。
でもこれだけ徹底していると、もはや、ネタである。

寺ギンも団吾を
寺ギンもじつは何年も狙っていた。藤吉が団吾獲得に動き出したと聞いて、むむむとなる。
藤吉と寺ギンの団吾をめぐる争奪戦が繰り広げられるのか。

なんだか凄そうな団吾師匠、月曜日の55話ではまだベールに覆われていたが、56話でついに明るみに。
派手に飲んで、買って(打ってるかはわからない)、遊びまくっている人物のようだ。それが芸の肥やしになっているらしい(肝心の芸は、台詞で説明されてるだけ)。赤い人力車の伝説はなかなかおもしろい。
演じている波岡一喜は、朝ドラだと「ちりとてちん」(07年)に“上方落語三国志”のひとり、ハデな落語家役で出ていた。また、NHKでも放送されたドラマ版「火花」では、主人公が憧れる型破りの芸人先輩・神谷を演じていた。たとえ売れずとも自分のおもしろを追求し続け、驚くべき領域まで自分を追い込んでいく、なかなかいない存在を、悲惨に見えないギリギリを保って演じていた。
「わろてんか」の団吾師匠は、どんな活躍をするだろう。

今日の、わろ点
芸人たちの反乱。5年ほどずっと仲良くわちゃわちゃ、ぬるま湯やっていたのに、急にこんなふうになるなんて。そこはドラマとはいえども、藤吉とこの芸人たちがいったいどういう芸に対する意識でやってきたのか、さっぱりわからないので、戸惑うばかりではあるが、これこそ、落語に書かれる人間の業なのかなとも思う。
なあなあで続く関係にしても、熱い何かで結ばれた関係にしても、どんな関係でも、何かの拍子にふいに状況が変わってしまうもので、そのときの都合で、言っていることを変えることなんていくらでもある。人間とは、吹けば飛ぶような軽いものなのだってことを達観しているお話を描くのは、面白い挑戦だと思うが、それには単純な勧善懲悪ものよりもだんぜん作家の腕が必要になってくる。

一方、演出面は、演出家が変わったからか、今週からちょっと雰囲気が違う。画面にメリハリをつけようとするカメラワークをところどころやっている。また、雨に雷などで、ここ、不穏な感じですよ、というわかりやすい合図を送る、オーソドックスなドラマらしいドラマになってきた。

保坂慶太は、「まれ」(15年)、まれの出産と一子がブロガーとして活動しているエピソードなどがある第22週の一週だけ担当している。そこでは、一週だけの担当だったからか、弾けた印象はあまりなかった(西村武五郎を筆頭にそれまでの演出がかなりぶっ飛んでいたので)。ところが、その後、大河ドラマ「真田丸」になると、メリハリ利かせた演出は冴える。出浦(寺島進)が「わしが惚れたのはそんなお主じゃ」と激白する29話、信之(大泉洋)、信繁(堺雅人)の「こんな感じか」「こんな感じです」の間合いが面白かった39話「歳月」、信之の台詞がオフになった46話「砲弾」と、担当回が少ないながら、盛り上がった回を担当した(「真田丸」は全話面白かったけども)。
そんな保坂回で印象的なのが、「真田丸」の「歳月」で真田紐を編んでいる長澤まさみと松岡茉優の姿と、「まれ」128話でスイカを食べている土屋太鳳と山崎賢人の姿だった。どちらも自然な感じが観ていて心地よかった。わちゃわちゃした中に、ふと、こういう瞬間を入れてくるところに、可能性を感じている。がんばってください。
(木俣冬)
イラスト/まつもとりえこ