お酒をつぐ器、お酒を飲む器。酒器に思いを巡らせると、気になってくるあの人のお気に入りやコレクション、あのお店のセレクション。酒器を愛でて一献傾けるのが好きなライターによる酒器折々、酒器こもごも。

 前回に続き、「トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ」のカメリエーラで、大の日本酒好きというBettina Giannini(以下、ベッティ)さんにご登場いただいての『酒器も肴のうち』第25献。今回はお酒好きならば知っている方も多い、あのお猪口のお話です。

「これも結婚のお祝いでいただいたもの。気に入っているところ? とにかく可愛い! それだけ」と、手に取って眺めながらにこやかな表情になるベッティさん。ニコニコマークのお猪口は日本酒イベントで使われることも多い。参加記念として持ち帰ることもできたりするので、我が家にもニコニコが結構ある。

 これを見て利き酒用のお猪口を連想する人もいるだろう。利き酒に使われるお猪口といえば底が蛇の目だが、ニコニコはいたってカジュアル路線。蛇の目のお猪口にも種類があって、鑑評会や杜氏たちが酒の品質を見極めるためのお猪口はプロ仕様の本利き猪口。そして、普段使いのお猪口は呑み利き猪口と呼んでまったく別ものだと、以前酒蔵の方から伺ったことがある。

 さて、「見ているだけでハッピーな気分になる、とにかく可愛いお猪口」は、「6個あるので友達が来たときに使っても楽しいし、笑顔のおもてなしになります」と、ベッティさん。それにしても、前回紹介した江戸切子といい、お猪口といい、お祝いが酒器尽くしとはよほどのお酒好き? 「相当、酒飲みと思われているんでしょうね」と、隣りで聞いていたシェフがぼそりとつぶやいた。

「行くお店によってお酒のラインナップが違うので銘柄や種類は覚えられないけど、日本酒はエチケットを見るのも楽しい」。最近は飲んだお酒のラベル撮影に興じているといって、スマホの画像を見せてくれた。ついでにオススメの居酒屋も教えてもらった。(さっそく行ってきました)

 ひと通り取材が終わると、ベッティさんは「名案が浮かんだ!」というような顔をして、エスプレッソを入れた小さなお猪口をソーサーに乗せて運んできた。取っ手こそないがエスプレッソカップと重なるサイズ感。飲み干した底には日焼けした笑顔が現れ、二人で顔を合わせてほくそ笑んだのだった。日本酒好きなイタリア人との酒器トーーク、これにてフィニート。

(※実際、お猪口でエスプレッソは提供しておりません)

●DATA

トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ

トラットリア・デッラ・ランテルナ・マジカ

目黒駅至近の静かな住宅街にあるトラットリア。ワイン生産者を招いてのメーカーズディナーや、イタリアの州に特化したイベントも不定期開催。広島県生口島産のレモンを使ったリモンチェッロは食後のマスト。毎年恒例、ナターレ(イタリアのクリスマス)に欠かせない伝統菓子「自家製パネットーネ&パンドーロ」はいよいよ12月8日より販売スタート。

●SHOP INFO

住:東京都品川区上大崎2-9-26 T&Hメモリィ1F
TEL:03-6408-1488
営:17:30~23:00(L.O)
休:日曜

●著者プロフィール

取材・文/笹森ゆうみ

ライター。蕎麦が好きで蕎麦屋に通っているうちに日本酒に目覚め、同時にそば猪口と酒器の魅力にとりつかれる。お酒、茶道、着物、手仕事、現代アートなど、趣味と暮らしに特化したコンテンツを得意とする。

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