11月25日、テレビディレクター岡宗秀吾さんが書き下ろした全部実話の青春特盛りエッセイ『煩悩ウォーク』の発売記念イベントが開催されました。岡宗さんの幼馴染であるYOUR SONG IS GOODのサイトウ“JxJx ”ジュンさんと、ラッパーのナオヒロックさんが登場した第1部の後半戦をお届けします。

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渋谷のチーマーが出てきて、「あ、これがやりたかったんや」

JxJx ある日、シュウゴから電話がかかってきて。すごいもったいぶったトーンで「電話じゃ言えないから家に来てくれへんか」と。家に行ったら「衣食住ってあるやん」と。「人間の重要な三大要素や。その中の衣、これは服や」と。「つまり、ファッションや」と。「今から映画を1本見せるから」と言われて、見せられたビデオが『ワンダラーズ』だったんです。

岡宗 ブロンクスを舞台にした、若者が抗争を繰り広げる青春グラフィティ的な映画ですよ。

JxJx 映画を見たあとに「こいつらの着てる服をよく見てみろ」と。『ワンダラーズ』では、チームごとにオリジナルのスカジャンを着てるんですよ。「これを俺たちも作るぞ」と。

ナオヒロック 俺のところにもシュウゴから個別にその話がきたんだけど、俺は映画を見せられてなくて、第一印象としては面倒臭かったよね(笑)。

JxJx 熱意はわかるんだけど、中1ですから小遣いも限られてるし。「これ、いくらかかるんだ?」と。今だったら「いくぜ!」ってなるけど、当時は全然わからなくて。

ナオヒロック でも俺、思い出したんだけど、各々ジャンパーのデザインを描くところまではやったよ。俺、バックのプリントに「japanese parisien」ってロゴを描いた記憶がある。俺は映画見てないからブロンクスの映画って知らんかったし(笑)。

JxJx でもシュウゴは早かったですよ。そのあと渋谷のチーマーが出てきて、「あ、これがやりたかったんや」と、のちに理解ができた。

あのとき乗らなかった俺がダサかったんだなって

岡宗 結果、お金がなくてジャンパーが作れなかったことが無念として残ってて、渋谷のアメカジ屋さんで『ワンダラーズ』の復刻ジャンパーが出てるの見つけて、着てみたの。そしたら、楽天ゴールデンイーグルスの監督にしか見えなかった。腹も出てるしさ(笑)。でも俺、今も番組のグッズをすごく作るのよ。俺、番組タイトルを決めるとき「Tシャツにできるか」ってまず考えるもん。

堀 『BAZOOKA!!!』のスタッフ用のスウェットを作ることになったときも「チャンピオンのボディじゃないとあかん」とか、延々会議で言ってて。

岡宗 全員キョトーンでしたよ。中学のときにオリジナルジャンパーを作れなかった悔しさがずっと続いてるのよ。

JxJx でもあとから、そういうのが大事だってわかりましたよ。あのとき乗らなかった俺がダサかったんだなって。

岡宗 お金もなかったしね。昔、「Columbia」のフィッシング・ジャケットを着るのがヒップ・ホップ界隈で流行ってさ。藤原ヒロシさんが赤のジャケットを着て、「KANGOL」のハットにゴールドのチェーンをつけてさ。ヒロシさんと同じColumbiaのフィッシング・ジャケットが欲しいんだけど、高くて買えないから、俺ら「がまかつ」ってガチの釣り具メーカーの上着買ってロゴを切って着てたよな。でも、がまかつには赤がなかったんだよ。

堀 魚が気づいて逃げますからね(笑)。

当時のシュウゴくんは、ちょっと虚言癖がありまして

JxJx んな感じで、シュウゴの放り込んでくる情報は、同級生の領域を超えていたんですよ。一時期よっちゃんと「シュウゴ、大丈夫か?」と心配するくらい先を行っていたんです。当時、「SEDITIONARIES」っていうパンクのブランドがあって……。

岡宗 それこそ、Sex Pistolsが着てたやつや。

JxJx 中学時代にそれが復刻されて、「どこで買えるんだ?」って話になったとき、僕らが普段行動していた神戸の三宮を飛び越えて、シュウゴは大阪のアメリカ村まで行っちゃうんですよ。で、「アメ村でSEDITIONARIESの服を見た」と言うんです。でも僕とよっちゃんはシュウゴのことが信用できなくて。

ナオヒロック 当時のシュウゴくんは、ちょっと虚言癖がありまして(笑)。嘘すぎてこっちが突っ込めないような話をするんですよ。

JxJx 「中国で200メートルのシャケが見つかったんやで」とか言うわけです。そういうファンタジックな話の中に、「SEDITIONARIESが大阪で売ってた」って話があって。

ナオヒロック UMA発見みたいな感じに聞こえたからな。嘘っぽいねーって。

JxJx よっちゃんと悩みながらもアメ村に行ったら、本当にSEDITIONARIESが売ってて、「あー、シュウゴ、ゴメン!」って(笑)。

ナオヒロック たまに本当のこと言うねん。ややこしい。ハイビスカスの話、すごかったよな。

岡宗 これはホンマ、嘘じゃないのよ! 1985年だったかな、ユニバーシアード神戸大会っていう大学生のオリンピックが開かれて、選手村ができたのよ。マット・ビオンディとかカール・ルイスも……、カール・ルイスは来てないか。

ナオヒロック ほら、もう怪しい!

ブラつけるまでいかない子の胸、丸見えやねん

岡宗 時代背景的にはカール・ルイスが活躍してた頃って話よ。マット・ビオンディはマジでおったぞ。ユニバーシアードの最初に小学生がマスゲームを披露するっていうのがあって、俺ら参加したよな。

JxJx 地元の小学生が集まってね。

岡宗 小学校3年くらいから3年間くらいマスゲームの練習させられて。あのとき支給されたアディダスの黄色い上下の服があったやん。上がノースリーブのやつ。当時、同級生の女の子は、ちょうどブラをつける、つけないって時期なんですよ。そのノースリーブの服、アームホールが広すぎてブラが脇から見えるんですよ。しかも、まだブラつけるまでいかない子の胸、丸見えやねん。そのとき、女の人のおっぱいって、最初は乳頭部が前に出てきて、とんがり始めるものなんだってわかって。

JxJx 当時もその話してたな(笑)。

岡宗 女の子のお母さんが見て「これはアカン」となって、シャツの脇の下を縫い始めてん。そうすると、服のシルエットが変わるねん。おっぱいの大きさに合わせて各家庭で縫い約(つづ)めるから、せっかくお揃いの服なのに印象がバラバラになって……、あ、ごめん。そんな話はどうでもええねん。ほんで、そのユニバーシアードの選手村に外国人選手を見にいって、外国人からサインとピンバッジをもらって集めるブームが起きて。

きれいに咲いてるやつが「ピー、ピー、ピー」って言うとる

ナオヒロック すっごいいっぱい持ってる子、おったよな。

岡宗 「サイン・プリーズ」ってな。それを俺、率先してやってて。あるとき自転車で一人、選手村から帰ってたら、「ピー、ピー、ピー」って音がする。最初、トラックがバックする音だと思ったんだけど、見回してもトラックなんていないわけ。

 その選手村に続く道にはハイビスカスが植えられていたんだけど、秋口になって枯れてきている中で1本だけきれいに咲いてるやつが「ピー、ピー、ピー」って言うとるわけよ。まさかと思うやん。「えー?」と思って近づくと、俺のほうをクルッと向いて「ピー、ピー、ピー」と言いよるねん。これは事件や、おい! と。帰って親に話したら「早く寝なさい」と言われて。まあ、親も答えを持ってるわけじゃないからね。こういうことって解決しようがないやん。で、次の日学校で2人に言うたよな?

ナオヒロック そんな話をされてもなあ。もう1個、おぼろげな話があるんやけど、ニホンカモシカの話をしてもらってもいいですか。

岡宗 家にニホンカモシカが迎えに来た話な。家の2階の窓から自分の家の玄関が見えるわけ。で、何気なく窓から覗いたら、バッチリ角のあるニホンカモシカが玄関にスーンと立ってるわけ。俺、『もののけ姫』見たときにさ、「こういうことか」と思った。あの映画もさ、鹿が聖霊の象徴として出てくるじゃないですか。

車に乗ってたら、軽自動車くらいの大きさのイノシシが出た

JxJx この話、街中だったらエキセントリックすぎるんですけど、造成地なのでイノシシなんかはいるわけですよ。

岡宗 そうやで。小学校のとき、女の子がイノシシに殺されたよな? 神戸はイノシシのメッカなんだよね。だって俺、嫁さんを初めて連れて神戸に帰ったとき、100万ドルの夜景を見せてあげよう思うて六甲山に行ったわけ。そのとき車に乗ってたら、軽自動車くらいの大きさのイノシシが出たで。

ナオヒロック 軽自動車(笑)。

岡宗 いや、ホンマやで。それで嫁さんが窓を開けて「バイバイさせて!」って言うたんですよ。イノシシって車を見たら突っ込んでくるのよ。だから俺は「危険や!」と思って「窓、閉めなさい!」って言って。

JxJx まあ、そういう環境ではあって。だから、ニホンカモシカが来そうなバックグラウンドはあるわけですよ。

ナオヒロック で、カモシカはどうしたんだっけ?

岡宗 スクッと立ってて……、なんらかのメッセージがあったんやないかなー。

学研の『ムー』みたいなことを、学校でやっちゃう

JxJx こうやって僕らに話して終われば、普通の楽しい同級生なんですけど、そこで終わらないのが岡宗秀吾で。学校の廊下に貼る壁新聞に、こういう不思議な話を書いて、メディアとして発信してたんですよ。

岡宗 友達に言ってるだけじゃないからね。学校の生徒全員に伝えようとしてたから。

JxJx  学研の『ムー』みたいなことを、学校でやっちゃうんです。

ナオヒロック 自前でな。

岡宗 当時、オカルト・ブームだったしね。ユリ・ゲラーが流行って、妹がフォーク曲げたりしてたし、徳川埋蔵金ブームもあって。

堀 いまだに、会議で3回に1回は「徳川埋蔵金探し」の企画出すよね。

岡宗 俺ね、一番したいのは埋蔵金探しやねん……って、そろそろ第1部終わりなんですが、お2人、どうですか? 最後に「これは言うときたい」ってこと、ないですか?

JxJx  『煩悩ウォーク』、めちゃくちゃ面白かったです。

岡宗 ありがとうございます!

朝立ちや 小便までの 命かな

JxJx 同級生とかそういうのを抜いても、読み物としてめちゃくちゃ面白くて、読んでて、文章がシュウゴの声で再生されてくるんですよ。これってつまり、一番リアルなグルーヴが入ってるってことだなって思うんですよね。岡宗秀吾って人の本当にリアルなノリ、センスが間違いなく120%入った本だなって思って。そこがすごくグッときましたね。

ナオヒロック 僕は小3からお付き合いさせていただいていまして、自分の話で申し訳ないんですけど、小4のときお父さんが亡くなって母子家庭になるんです。それで、シュウゴくんの家庭にすごく優しくしてもらってまして。小5のときに、京都に一泊旅行に連れていってもらったんです。京都のことはあんまり覚えていないんですけど、一つだけすごく覚えてることがあって。朝起きたらシュウゴが「よっちゃん、俺、朝立ちしたわ」って言って、「朝立ちや 小便までの 命かな」って言ったんですよ。それをすっごい覚えてて。大人になって、それは江戸川柳だとわかって。小5の子が江戸川柳を詠んだってことが衝撃でしたね。

JxJx 小学校の頃、オナニーの仕方をクラスの全員に教えてたの、シュウゴです。「本当はこうやってやるんだよ」って(笑)。

岡宗 オナニーに関しては、俺はすごかった。

JxJx シュウゴから発信されて、大人になっていくというのがあった。

ナオヒロック アハハ。でもそこに集約されてるね。

岡宗 そんなところで、第1部終了です(笑)。ありがとうございました!

(「文春オンライン」編集部)