“NBAに最も近い日本人”米5年目・渡邊雄太がNCAAで絶対不可欠になり得た理由

ジョージ・ワシントン大の渡邊雄太(4年)がアトランティック10カンファレンスのプレーヤー・オブ・ザ・ウィーク(週間MVP)を受賞――。12月4日に飛び込んできたそんなニュースは、日本のバスケットボールファンを喜ばせたはずだ。この週に行われたモーガン州立、テンプル大との2試合で、渡邊は平均21.5得点、6.5リバウンド、3.5スティール、2.5ブロックをマークして連勝に貢献。今季ここまで4勝4敗のチームにおいて、すでに絶対不可欠の存在になっている。

 ゴンザガ大の八村塁(2年)と並び、渡邊は一般的に“NBAに最も近い日本人”と評されている。その夢に向けてひた走る23歳の俊才が、NCAAのディビジョンIで様々な意味で貴重な経験を積み重ねていることは間違いない。

 何より特筆すべきは、渡邊は大学4年間で平均得点、リバウンドの数字を毎年向上させていることだ。得点は1年目から平均7.1→8.4→12.2とアップさせ、4年生になった今季は最初の8試合で平均15.0得点。リバウンドの数字も平均3.5→4.0→4.8、今季は7.1本と見事に右肩上がりである。これほど着実に成長してこれたのは、2013年にアメリカに留学して以降、ハイレベルな場所で激しいトレーニングを積んできたからに他ならない。

「アメリカに初めて来た時に日米の練習の違いで一番驚いたのは、練習中の激しさでした。同じチーム同士なのに、相手側に回ったら、ケンカするくらいの勢いでやっている。日本にいた時は絶対になかったことでした。日本では先輩と後輩の関係があって、なかなか先輩に対して後輩がガツガツいけなかったりします。ここの選手たちはそんなのは関係なく、たまにコーチが止めに入らなきゃいけないくらい。普段の練習からハイレベル。なおかつそれだけ激しくやっていて、練習中から日本とアメリカの差は出てきているんだなとすごく感じました」

称賛されたバスケIQ「日本でやってきたことが生きている」

 アメリカのカレッジバスケ界に飛び込んだ直後のことを渡邊はそう振り返る。学生とはいえ、身体能力にあふれた選手たちはチーム練習時から闘志をむき出しにする。そんな中で力を示し、生き残った者だけが、ゲームに出る機会を得る。

 上下関係に厳しく、礼儀正しい日本の部活動にも良い部分はあり、そこから得られるものも少なからずあるだろう。「文化の違いもあるので、一概にどっちが良いとは言えない」と渡邊も述べている。その一方で、純粋に1日の練習の成果を考えた時に、「こっちの選手の方が吸収しているものはたくさんあると思います」という渡邊の言葉を否定するのは難しい。何より、そんな激しいトレーニングを日常的に重ねてきたからこそ、今の渡邊があるのだ。

「甘い気持ちは捨てて、練習中から激しくやらないと世界を相手にするのは厳しいという風には感じています」

 日本代表でのプレーも経験し、今ではNCAAのトップレベルで活躍している選手の言葉にはやはり説得力がある。ただ、アメリカでの生活も5年目に入った渡邊は、日本で学んだことも忘れているわけではない。尽誠学園で過ごした高校時代を振り返り、そこで手にしたものの大きさにも言及している。

「僕が通っていた高校の色摩(拓也)先生は、バスケットボールをとてもよく理解している聡明な方でした。(高校時代は)頭を使わないと、チームの連携が上手くできなかった。普段からそれをやっていたおかげで、こっちでもバスケットボールIQの高さは褒められたりもします。全体的に見て、日本の選手はアメリカ人と比べてもバスケットボールに関する賢さは負けていません。身体能力、激しさは明らかに違いますが、賢さ、一生懸命さは、日本でやってきたことが生きていると感じます」

生き馬の目を抜く米国で得たものは日本バスケ界の財産に

 今ではA10カンファレンスでも最高級の2ウェイプレーヤーと評されるようになった渡邊は、献身的な姿勢に対しても評価は高い。ミッドメイジャーの強豪であるジョージ・ワシントン大で、1年生から出場時間を確保できたのはそれが要因だろう。日本人離れした才能、能力、さらに日本仕込みのバスケIQとプレーへの姿勢が上手く融合され、アメリカの舞台でも堂々たるプレーができる選手が生まれたのだ。

 成長を続ける渡邊が、大目標に掲げるNBAに本当に辿り着けるかどうかはまだ分からない。しかし、“夢の行方”がどうあれ、生き馬の目を抜くようなアメリカのコートで得たものは、渡邊本人にとって、そして日本バスケットボール界にとっても大きな財産になることは間違いない。渡邊だけでなく、次の世代にまで――。日本、アメリカの両方のバスケットボールを熟知する選手の経験と言葉は、これから先にますます重要な意味を持って響いてくるはずである。

◇杉浦 大介

1975年、東京都生まれ。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、ボクシング、MLB、NBAなどを題材に執筆活動を行う。主な著書に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)、「イチローがいた幸せ」(悟空出版)。

杉浦大介●文 text by Daisuke Sugiura

渡邊雄太【写真:Getty Images】