移動がラクな直通運転、通勤・通学や観光に便利な特急列車や座席指定列車などを展開する西武鉄道。「武蔵野」へ広がる路線網は、沿線の自然と文化もつなげています。

自然と共生する武蔵野と東京都心を結ぶ路線網

西武鉄道といえば特急「レッドアロー」。その列車名のひとつに「むさし」があります。西武鉄道の路線網が、武蔵と呼ばれる地域に張り巡らされているからでしょう。作家・国木田独歩の随筆『武蔵野』に書かれた、自然と人々の共生する地域です。

西武鉄道は池袋と飯能・秩父を結ぶ池袋線系統と、新宿と川越を結ぶ新宿線系統を中心に路線網を形成しています。所沢駅(埼玉県所沢市)で池袋線と新宿線が交差し、駅前には西武鉄道の本社もあります。

所沢駅の南側は新宿線を基軸に、支線の多摩湖線、国分寺線、拝島線、西武園線が絡まっています。このうち、西武鉄道でもっとも古い路線が国分寺線です。もともと国分寺(東京都国分寺市)と川越(現・本川越、埼玉県川越市)を結ぶ路線でした。しかし、東村山~本川越間が新宿線に組み込まれたため、現在は全長7.8kmの短い支線に。ただし現在、国分寺線から本川越方面の直通列車が走っています。

国分寺線は東村山から西武園線にも直通しています。終点の西武園駅(東京都東村山市)は「西武園競輪場」「西武園ゆうえんち」が近接。また、狭山線は池袋線の西所沢駅(埼玉県所沢市)から西武球場前駅(同)に達し、ここから西武遊園地駅(東京都東村山市)へは「レオライナー」の愛称で親しまれている山口線があります。西武鉄道屈指のレジャー地域に複数の路線が接しており、沿線の人々に「遊び」を提案しています。

それでは、子どものころに特急「レッドアロー」に憧れ、現在は「西武 旅するレストラン 52席の至福」に興味津々の筆者(杉山淳一:鉄道ライター)の思い込みと独断による「西武鉄道の魅力ベストテン」をご覧ください。もちろん異論は大歓迎、SNSなどで盛り上がってくださいね。

西武線の強みは「ふだん使い」の便利さ

【1位】池袋線の多方面相互直通運転 渋谷・横浜・有楽町へ乗り換えなし

「住みたい」で気になる要素は「ふだん使い」の電車の便利さ。そこで第1位は、特急や観光列車ではなく、池袋線の相互直通運転を挙げます。

池袋線は東京都豊島区の池袋駅と埼玉県飯能市の吾野駅を結ぶ路線です。飯能駅で運行系統が分かれるため、池袋線の終点は飯能駅と思う方もいるかもしれません。しかし実際は西武秩父方面へ5つ先の吾野駅が終点で、ここから西武秩父駅までが西武秩父線です。

池袋線の地下鉄直通運転は1998(平成10)年から、西武有楽町線を介して営団地下鉄(現・東京メトロ)有楽町線と相互乗り入れする形で始まりました。東京メトロ有楽町線は小竹向原から都心方面に向かって、飯田橋、市ケ谷のオフィス街、永田町の政界、有楽町、銀座一丁目の繁華街を通ります。他の地下鉄路線などの乗り換えも便利です。新木場でJR京葉線に乗り継げば、幕張メッセや東京ディズニーリゾートへもアクセスできます。池袋線から東京メトロ有楽町線方面へは、飯能などから、朝夕の混雑時間帯に快速や準急、日中は快速急行が直通するほか、小手指(こてさし)などから各駅停車も設定されています。

2013年からは小竹向原に東京メトロ副都心線が接続され、相互直通運転が始まりました。副都心線は小竹向原~池袋(地下)間で東京メトロ有楽町線と並び、池袋から南下して新宿三丁目、明治神宮前、渋谷を結びます。西武池袋線から副都心線に直通することで、JR山手線への乗り換えが解消されました。

副都心線は渋谷で東急東横線と相互直通運転を実施しています。東横線と横浜高速鉄道みなとみらい線は一体的に運用されているため、直通運転は横浜市中区の元町・中華街に達します。東横線の代官山、中目黒、自由が丘などのファッション街へアクセスできるほか、菊名でJR横浜線に乗り換えれば新横浜で東海道新幹線も利用できます。東横線と相模鉄道の直通運転が始まると、そのルート上に新横浜があり、乗り換えもラクになりそうです。

東京を象徴する地域へ直通で行けること。横浜へ直通で行けること。これも池袋線の大きな魅力です。池袋線の多方面相互直通運転を象徴する列車が「S-TRAIN」ですが、これについては後段であらためて紹介します。

新宿線の強みは?

【2位】新宿線は直通なし 実はそこが最大の利点?

新宿線は池袋線と双璧を成す幹線です。その起点である西武新宿駅はJR新宿駅の北側、少し離れたところにあります。JR山手線との乗り換えは高田馬場駅が便利。線路もプラットホームもピッタリ並んでいます。特急「小江戸」も停車します。高田馬場は東京メトロ東西線の乗換駅でもあります。皇居に近い竹橋、ブランド街の日本橋、オフィス街の大手町、金融街の茅場町に新宿線から乗り換え1回でアクセスできます。

新宿線の運転系統は、西武新宿と本川越を結ぶ列車だけではなく、小平から拝島線に直通する急行・準急があります。拝島はJR青梅線、五日市線、八高線が集まる交通の要衝。JR東日本も中央線の快速・特快電車を直通させています。拝島線の玉川上水駅(東京都立川市)では多摩モノレールとも乗り換え可能です。新宿線・拝島線ルートは、多摩・東京西部と都心を結ぶ幹線ルート。JR中央線とライバル関係にあるといえそうです。

その重要性に注目して、西武鉄道は2018年春から有料座席指定列車「拝島ライナー」を運行します。夕方・夜間の下りに西武新宿~拝島間で運行予定とのこと。車両は池袋線の有料座席指定列車「S-TRAIN」と同じ40000系電車です。新宿線・拝島線ルートは、2011年から2014年まで、忘年会シーズンなどに下り臨時特急を運行した実績があります。3年のブランクを経て、定期列車に“昇格”。帰宅が快適になります。

ところで、新宿線には意外な特長があります。「大手私鉄の幹線でありながら、都心方面で地下鉄に直通していない」ことです。2015年に東京都中野区が東京メトロ東西線と新宿線の相互直通構想を掲げました。しかし、2016年に国土交通省の交通政策審議会が答申した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」には盛り込まれませんでした。

2017年の西武鉄道の株主総会では、新宿線沿線在住の株主から「池袋線ばかり便利になって、新宿線への投資が少ない」という指摘もあったと報道されました。しかし、新宿線は相互直通運転がない。これは不便なことでしょうか。乗り換えなしに都心へ行けないことは不便かもしれませんが、その代わり「遅延が少ない」というメリットもあります。

相互直通運転は乗り入れ先のダイヤの乱れに影響されやすいというデメリットがあります。相互直通運転がなければ、自社線内で問題が発生しない限り安泰です。「新宿線は安定している」――これはなかなか気付きにくいメリットかもしれません。大切なことは、西武鉄道沿線にこれから住もうという人にとって「直通で便利な池袋線」「運行トラブルが少ない新宿線」を選択できることでしょう。

行きと帰りで経路を選べる定期券も発売

【3位】通勤する人の気持ちに寄り添う定期券「だぶるーと」「Oneだぶる」

西武鉄道の通勤定期券には「だぶるーと」「Oneだぶる」というユニークなシステムがあります。利用する駅間はそのままに、経由ルートを選べるものです。

「だぶるーと」は池袋線と東京メトロ、池袋線と東急線にまたがる「PASMO」の通勤定期券に設定されています。直通運転の小竹向原ルートでも、池袋駅で乗り換えるルートでも、どちらにも使えます。たとえば急いでいるときは小竹向原経由の直通電車で、座りたいときは池袋発の下り電車に並んで、といった具合です。

「Oneだぶる」は新宿線とJR東日本にまたがる「PASMO」の通勤定期券に設定されています。新宿線とJR山手線を乗り継ぐとき、行きは乗り換えが便利な高田馬場駅経由で、帰りは新宿から歩いてでも、西武新宿駅から始発列車に座れます。金額は西武線各駅から西武新宿駅までの運賃と、JR高田馬場駅からJR線着駅までの運賃の合算です。

本来の趣旨は、お疲れの人がラクに帰宅できるように……ですが、池袋や新宿で一杯ひっかけて帰りたい、という元気な人にも便利かもしれません。

【4位】多彩な列車種別、でも法則を知れば迷わない?

池袋線は西武秩父線も合わせると総延長76.8kmに。大手私鉄としては比較的長距離の幹線です。乗降客の核となる駅が池袋、所沢、入間市、飯能と4か所あります。こうした路線では列車種別が増える傾向があります。乗客の要望として「乗り継ぎなしでラクに行きたい」「早く着きたい」があり、鉄道会社側の事情として「乗客の集中を避けたい」があるからです。こうした条件を調整する役目が、列車ごとの停車駅設定です。

池袋線の列車種別は通過駅の多い順から「特急(ちちぶ・むさし)」「S-TRAIN」「快速急行(Fライナー)」「急行」「通勤急行」「快速」「通勤準急」「準急」「各駅停車」です。なんと9種類もあります。数を聞くと、どの列車に乗ったらいいか迷いそうですね。でも大丈夫。池袋線の列車種別ごとの停車駅は法則性があります。

速達性と快適性を重視した「特急」「S-TRAIN」、全駅に停まる「各駅停車」は別として、快速急行など乗車券のみで利用できる列車を比較しましょう。共通点は「都心に近いほど通過駅が多く、都心から離れると各駅停車になる」です。「快速急行」は池袋から飯能までが通過運転。飯能から各駅に停まります。「急行」の通過運転は所沢まで。「快速」の通過運転はひばりヶ丘まで。「準急」は石神井公園までが通過重視です。

通過運転区間の停車駅は練馬(池袋線池袋発着の急行は通過)、石神井公園、ひばりヶ丘、所沢、小手指、入間市、飯能です。先に挙げた「快速急行」「急行」「快速」「準急」は、これらの駅に停まります。それぞれの種別が「どの駅から各駅停車に変わるか」を把握すれば、最適な列車を探しやすくなります。

ただし、混雑時間帯に登場する「通勤急行」「通勤準急」は要注意です。通勤急行は主要駅のひばりヶ丘を通過し、その前後の急行通過駅である東久留米、保谷、大泉学園に停まります。通勤準急も主要駅の石神井公園を通過します。「通勤」が付く列車が来たら、停車駅を確認しましょう。

新宿線の列車種別は5つ。「特急(小江戸)」「通勤急行」「急行」「準急」「各駅停車」です。特急を除くと4種類。通勤急行と準急は混雑時間帯のみで、日中は「急行」と「各駅停車」だけです。池袋線と同様に、急行と準急は途中から各駅停車になります。急行は田無、準急は上石神井が通過運転と各駅停車の境目です。通勤急行は田無~本川越間も通過駅があります。ただし主要駅の通過はしませんから安心です。

特急は「風景に溶け込む」新型車両を計画中

【5位】秩父へ、川越へ 「レッドアロー」&「Smooz」

西武鉄道は通勤が便利、と分かったところで、いよいよ特急列車に登場していただきましょう。

西武鉄道の看板列車といえば、「レッドアロー」の愛称が付いた座席指定特急です。池袋線系統、新宿線系統で、おおむね日中は60分間隔で走っています。池袋線系統は池袋と西武秩父を結ぶ「ちちぶ」、池袋~飯能間の「むさし」。新宿線系統は西武新宿と本川越を結ぶ「小江戸」です。予約はオンライン決済可能なチケットレスサービス「Smooz」が便利です。シートマップで座席が選べます。

「ちちぶ」はその名の通り、秩父方面の観光客を想定した列車です。池袋~西武秩父間の所要時間は1時間20分程度。途中停車駅は所沢、入間市、飯能、横瀬です。主要駅に停まるため、西武鉄道沿線の人々もレッドアローで秩父へ遊びに行けます。また、池袋方面へ買い物に出掛けるときも座って往復できます。

池袋線内の人々の用途に徹した列車が「むさし」です。日中の運行は少ないですが、早朝6~7時台の池袋着、22時以降の池袋発も設定されています。通勤ライナーの役割です。平日の池袋終発は0時。残業や遠方からの出張の帰りで疲れた方に、着席できる列車が提供されています。

変わり種としては、臨時列車として、池袋~西武球場前間を結ぶ「ドーム」があります。これはメットライフドーム(西武ドーム、埼玉県所沢市)の野球開催日に合わせた運行です。

愛称の「レッドアロー」号は、初代5000系電車の車体に赤い帯があったから。ロシアの特急列車「赤い矢号(クラースナヤ・ストレラー)」を連想させます。実はスイスの観光列車が由来という説があります。スイスの山岳風景に西武秩父線の風景を重ねたかもしれません。2代目の「レッドアロー」(10000系電車)も赤い帯をあしらっています。

西武鉄道は2018年から3代目に当たる新型車両を導入する予定です。車両外観は「アルミ素材に塗装をし、風景に溶け込むカラーデザイン」になるとのこと。銀色のイメージ画像が公開されましたが、伝統の赤い帯は入るでしょうか。

【6位】「西武 旅するレストラン 52席の至福」と「S-TRAIN」

関東大手私鉄の中でも、西武鉄道はチャレンジ精神にあふれています。その象徴的な列車が「西武 旅するレストラン 52席の至福」と「S-TRAIN」です。

「西武 旅するレストラン 52席の至福」は「厨房付きレストラン観光列車」です。JR九州や第三セクターなどが食事付き観光列車を続々と投入し、鉄道旅行の新たな潮流を作っている中で、関東大手私鉄では西武鉄道が参入しました。西武秩父線などで活躍する4000系4両編成を改造し、3号車にキッチンを装備。その両側を食堂車風の客席に。1号車はイベントなどに使える多目的スペースとなっています。この車両はレストラン列車だけではなく、結婚式などにも対応できます。

「52席の至福」は主に土日、ブランチコースとディナーコースの運行です。有名シェフによる食事を楽しめて、ブランチコースは1人1万円、ディナーコースは1人1万5000円。クリスマスやバレンタインデーの特別運行もあります。とても人気があり、ブランチコースは3か月先までほぼ満席。ディナーコースは西武秩父発の上り列車であることから、秩父旅行の締めくくりにオススメです。誕生日、結婚記念日などに特別なデザートを提供するオプションもあります。

また、西武鉄道には池袋線から横浜へ快適に移動できる直通列車があります。座席指定列車「S-TRAIN」です。平日は通勤用として東京メトロ有楽町線に直通し、土休日は東京メトロ副都心線、東急東横線、横浜高速鉄道みなとみらい線に乗り入れます。最長列車は西武秩父と元町・中華街を結びます。車両は西武鉄道が40000系電車を新造しました。通常は窓を背にして座るロングシートですが、「S-TRAIN」として運行するときは、座席を90度転換して前向き(クロスシート)になります。長距離運転を想定してトイレも備えています。

「S-TRAIN」は、平日は快適な通勤ライナーとしてビジネスパーソンを支えます。土休日は西武鉄道沿線から横浜へ、東急電鉄沿線から秩父へ。座って観光に出掛けられる列車として人気です。沿線の人々の行楽の選択肢を増やし、行動範囲を広げました。

レジャースポットも、漫画・アニメスポットも豊富

【7位】遊園地・レジャースポットがいっぱい!!

西武鉄道の沿線には家族で楽しめるレジャースポットがたくさんあります。その筆頭は遊園地。7つのプール、ウォータースライダー「ハイドロポリス」でおなじみの「としまえん」(東京都練馬区)は西武グルーブの運営です。最寄り駅もズバリ「豊島園」。2017年9月30日には運転を楽しめるミニ列車「チャレンジトレイン」がオープンしました。

「西武園ゆうえんち」(埼玉県所沢市)の最寄り駅は「西武遊園地」。「バイキンク」「ジャイロタワー」など大型アトラクションのほか、メリーゴーラウンドの定番施設も。冬期は広大なイルミネーションや雪遊び広場がオープンします。

西武遊園地駅の近隣には埼玉西武ライオンズの本拠地「メットライフドーム」があります。その隣接地には屋内人工スキー場の「狭山スキー場」などレジャースポットが集まっています。ウィンタースポーツなら新宿線・東伏見駅近くの「ダイドードリンコアイスアリーナ」。都市型のレジャースポットとしてはナムコ「ナンジャタウン」がある「池袋サンシャインシティ」も忘れてはいけません。

2019年春には北欧やムーミンをテーマにしたレジャー施設「metsa(メッツァ)」(埼玉県飯能市)が開業予定です。ダム湖「宮沢湖」のほとり、かつて西武グループが「レイクサイドパーク宮沢湖」を運営していた跡地で建設が進んでいます。「レイクサイドパーク宮沢湖」の案内では「池袋線飯能駅からのんびり歩いておよそ40分」とありました。送迎バスが用意されるか。アニメに力を入れている西武鉄道と、どんな連携をしていくのか楽しみです。

西武秩父駅前には、2017年のグッドデザイン賞を受賞した「西武秩父駅前温泉 祭の湯」があり、賑わっています。お土産屋さんも広く、ユニークな商品があります。筆者のオススメは「たい平座布団まん」。秩父出身の落語家、林家たい平さんが出演しているテレビ番組『笑点』の座布団がモチーフになっています。

【8位】漫画・アニメの沿線

西武鉄道沿線、特に東京都練馬区はマンガ・アニメに関連する作家や企業が多いことでも知られています。漫画家の手塚治虫さん、藤子不二雄(藤子不二雄A、藤子・F・不二雄)さん、石森章太郎(石ノ森章太郎)さん、赤塚不二夫さんらが居住した「トキワ荘」は池袋線の椎名町駅付近にありました。大泉学園には東映アニメーション大泉スタジオがあります。見学施設の東映アニメーションギャラリーは2014年に立て替えのため休館していますが、翌2015年には大泉学園駅前に「大泉アニメゲート」が誕生。アニメの名作に登場したキャラクター像や展示施設があります。

大泉学園には漫画家の松本零士さんがお住まいとのことで、駅には『銀河鉄道999』の壁画や車掌さん像があります。富士見台駅付近には手塚治虫さんが設立した「虫プロダクション」も。

新宿線の上井草駅前には『機動戦士ガンダム』の像が建ちます。筆者が見に行ったときは足下にお賽銭がありましたが、どんな御利益があるのでしょうか。同駅付近にはガンダムシリーズの制作会社サンライズがあります。同駅の発車メロディーも『ガンダム』の主題歌です。田無駅付近には『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』のシンエイ動画があります。この会社は『西武鉄道員タコちゃん』という沿線案内アニメを制作しました。

高橋留美子さんの漫画『めぞん一刻』に出てくる時計坂駅のモデルが東久留米駅ではないかとファンに信じられており、同駅の改築の前に駅名の看板を「時計坂」にするイベントが開催されました。秩父をロケ地としたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の映画が公開されたときは、ラッピングトレインや記念きっぷを発売するなど大型タイアップを実施。こうした流れを受けて、西武鉄道沿線は他の作品にも登場し、アニメの聖地として認知されました。

西武鉄道は練馬区とも連携しながら、アニメとのコラボレーションを積極的に進めています。集客や売上促進ではなく、子ども向け環境保護PRマガジン『アニッコ』の発行、マナーアップポスターにアニメキャラクターを採用するなど、社会貢献などにも活用しています。

そしてついに、西武鉄道はオリジナルアニメの制作を決定しました。秩父を舞台とした恋愛仕立ての物語で、約20分の作品とのこと。2018年3月に西武鉄道公式サイトで公開する予定です。

ヤギが見守るローカル線、武蔵野を凝縮した多摩川線

【9位】セミクロスシートのローカル区間

大都会、新宿と池袋。そこから続く西武鉄道の沿線は、雑木林と街並みが続く武蔵野の風景です。武蔵野はもともと原野でした。現在の武蔵野の風景は、厳密には自然のままではなく、農地として開墾され、植林された人工的な風景といわれています。秩父も観光地として開発された地域です。

しかし、秩父と飯能のあいだに、自然が残されたエリアがあります。通勤エリアでもない、観光エリアでもない、意外な西武鉄道の魅力。それは西武秩父線の車窓です。この路線は吾野~西武秩父間19.0kmを結んでいます。全線が電化されていますが、線路は単線です。川を渡る鉄橋は21か所。トンネルは16本。これは険しい大自然を物語る数字です。特に印象が強い場所は全長4811mの正丸トンネル。距離が長いため、トンネル内に列車のすれ違い設備があります。

この区間の各駅停車には、セミクロスシート(一部がボックスシート)の4000系電車が使われています。短い編成、単線区間でボックスシート。大手私鉄とは思えないほどローカル線の味わいがあります。各駅停車は池袋線の飯能駅まで直通運転しています。池袋線の武蔵横手駅(埼玉県日高市)ではヤギを飼っていて、草刈り役として「みどり」が草を食べています。車窓からも見えます。飯能~西武秩父間のローカル線の旅、オススメです。

【10位】武蔵野の原風景を凝縮する多摩川線

武蔵野と呼ばれる一帯に路線網を広げた西武鉄道で、孤立した路線がひとつだけあります。多摩川線です。JR中央線も発着する武蔵境駅を起点とし、多摩川の河原付近の是政(これまさ)駅(東京都府中市)までを結びます。8.0kmの短い路線です。しかし、その風景はまさに武蔵野のイメージです。

多摩川線は河原で採れる建設用の砂利を運ぶために作られました。多摩鉄道によって、1917(大正6)年に開業、1922(大正11)年に全通しました。この路線を西武鉄道が買収したため、既存の西武鉄道の路線とは離れています。全通時は貨物輸送が主でしたが、砂利輸送の終了後は、多磨霊園の訪問客、多摩川競艇場の来場者などが利用しています。沿線に学校や住宅も増えており、短いながらも愛される路線になりました。

沿線には武蔵野を愛した著名人が眠る多磨霊園や、武蔵野公園、野川公園などがあり、自然と人々か調和した武蔵野の風景があります。西武鉄道の他の路線からは離れていますが、JR中央線を乗り継いでも、出掛けてみる価値はあります。線路の真上に張られた高圧電線さえ、なにかチカラを分けてもらえそうな気がします。

終点の是政駅から橋を渡るとJR南武線の南多摩駅です。ここは西武鉄道の路線網の南限です。そして、随筆『武蔵野』を残した国木田独歩による武蔵野の南の境界も、この多摩川でした。多摩川線がなければ「西武鉄道の路線網は武蔵野の隅々に……」とは言えません。

随筆文学を育んだ武蔵野。西武鉄道はいま、そこにアニメ・マンガの文化を重ねます。西武鉄道の沿線には、武蔵野の自然と文化の伝統が息づいています。

【画像】2018年度登場予定の西武“光学迷彩”特急

特急「レッドアロー」に使われている10000系電車。左は初代「レッドアロー」の5000系電車をイメージした「レッドアロークラシック」(2015年3月、恵 知仁撮影)。