『大日本サムライガール』至道流星/星海社FICTIONS この表紙の少女が神楽日毬ちゃんです。手に持っているのは愛用の拡声器「拡さん」。この少女が、政治の頂点を目指すために、アイドルとして芸能界の頂点を目指すのです!
エキサイトレビュー

「真正なる右翼は、日本に私ただ一人である。有権者諸君、我が国は今、大きく舵を切るべき瞬間を迎えている。日本が取れる指針はもはや少なく、残された時間には猶予もない。」

いきなり何だと思われたかもしれませんが、これは大日本サムライガールという小説のヒロイン、神楽日毬(かぐらひまり)ちゃんの決め台詞なのです。いや、決め台詞というのもふさわしくないか。街頭演説の時の前口上なのです。

何ともすごい小説が出てきました。この本は真に日本を憂うあまり、自らが独裁政権を敷くしかないという結論に達した真正右翼の16歳の美少女ヒロインと、そんなヒロインを陰に日向に支える主人公織葉颯斗(おりばはやと)くんのお話なのです。どれぐらい日毬ちゃんが真正の右翼かというと、日米同盟に疑問を挟んだり(いつまでもアメリカの庇護下におかれていいわけがない!)、領土拡張も辞さない(権力者ならばそのくらいの心意気で外交交渉に当たるべき!)し、さらには核武装だって否定しません。むしろ必要不可欠と言い切っちゃうぐらいの右翼なのです。でも堅物ではなく、弱きを助け強きをくじく、どちらかというと激しい心を持った(正しいことをきちんと正しいと言う)大和撫子という感じでしょうか。

そして、こんな2人が日毬ちゃん独裁政権を築き上げるための手段として選んだのが「芸能界の頂点に立つ」ことなのですね。ジャンルとしては政治・経済・芸能小説となるのでしょうか。

現在星海社のWebサイト「最前線」でプロローグと第一話「右翼的な彼女」が公開されているので、興味を少しでも持った方はこちらをご覧になってください。特に、冒頭の演説のPVは必見です! youtubeで大きい画面で見たい方はこちらから。なんかもう、この街頭演説を見てノックアウトされちゃいました。

さて、お話を大日本サムライガールに戻しましょう。そもそもなぜ日毬ちゃんが芸能界の頂点を目指すことになるのか。そこから話さなければなりません。

現実の世界でも、芸能と政治が割と密接に関わってきますよね。例えば芸能人が知事になったり、国会議員になったりという例は枚挙にいとまがありません。果ては大臣になったり、総理大臣……は、まだ日本の場合は無いみたいですが、大統領になった俳優だっているわけです。これは現在の民主主義が人気投票的な一面がある以上仕方の無いことです。

真正の右翼で活動家であり、芸能界に全く興味の無かった日毬ちゃんは、颯斗くんにこう諭されるわけです。ちょっと長くなるのですが引用しましょう。

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「俺自身がよく知っている例になるけど……たとえばうちの家も、自友党の政治家一〇人ほどにずっと献金し続けているんだ。彼らはうちにもよく挨拶にやってきていた。その彼らの、最も重要で効果的な仕事は何だと思う?」
「それはもちろん、自分の政策を実行することではないのか?」
日毬の言葉に俺は首をふる。
「違う。本質は、実に簡単で単純だ。いかにマスメディアに取り上げられるかがすべてなんだよ。それが彼らの最大の関心事で、唯一無二の政治的な仕事なんだ。メディアに露出している政治家の方が有能だという錯覚を多くの人が持つから、献金だって集めやすい。世間が政治家の能力を判断するのは、その政治家が地道にやっている仕事なんかじゃない。いや、もっとハッキリ言えば、政治活動とは、対マスコミ向けのアピールのことを指している。中身なんて関係ないんだ」
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はい。もう、ズバッと言っちゃっています。とにかく大事なのは露出である、と。そして、ずば抜けた美貌を持つ日毬ちゃんが自らの政治理念を多くの人に知らしめるためには、芸能界の頂点に立つのが一番早い、と。

かくして、日毬ちゃんの芸能デビューが決まったのでした。

でも、やっぱり真正の右翼でかつ活動家である日毬ちゃんですから、普通の芸能活動をするわけではありません。いや、普通の活動をしているのですが、時々ちょっと素が出るのです。いや、正確には本人はいつも素でびっくりするぐらい真剣に日本のことを憂いていてそのことしか考えていないのですが、まわりが一生懸命普通のアイドルらしい言動をさせようとするのですね。

とにかくこの日毬ちゃんがまっすぐなのです。何せ、グラビアアイドルとしてのインタビューに答えるときも「真正なる右翼は、日本に私ただ一人である。」からはじまったりするわけですから。キャラを作っているとかではなく、素です。

あまりにまっすぐなため、芸能界でよくありがちな(?)さまざまな妨害にあっても一刀両断してしまうのです。これは本当に爽快なまでの一刀両断なので、気になる方は本書を読んでください。

この作品がすごいところは、細かい部分でのメディアミックス展開も充実していることでしょうか。例えば、選挙期間中は更新ができなくなったりもしますが、現実でも政党が自らのWebページを作って情報を発信していたりしますよね。日毬ちゃんが総帥を務めている(作中ではきちんと届け出を出して活動しています)政治結社日本大志会のページが作中に出てきますが、なんとこれ、実在します。

アイドルといえば、やっぱりブログですよね。アイドルの赤裸々な私生活とかを、ファンはブログで見たかったりするわけです。というわけで、しっかりとオフィシャルブログページもあります。芸能プロダクションのページだって、しっかりとあったりします。これらは全部作中に出てくるURLとかそのままに、用意されているのです。なので、本を読みながら、Webを見るとより楽しめるというわけですね。

特筆すべきは、作中でも重要な役所となるひまりボイスまでもしっかりと作り込まれていることでしょう。

「こんにちは! 今日も私、神楽日毬は一生懸命がんばります……」みたいなかわいらしいボイスの中に、さりげなく「この国難に立ち向かうためには、一時的に民主主義を捨てる勇気を持つことが必要だ……」なんてのが入っているんですよ。くらくらきます。こんなにも魅力的で、パワーのあるヒロインにあったことがありません。


2ヶ月連続刊行ということで、早くも2巻の予約が始まっているようです。政治、経済、芸能界などにちょっとでも興味のある方は、今すぐ2巻とも予約をするといいでしょう。ヒロインの魅力だけではなく、エンターテインメントとしても極上なのですから。今すぐ新世代のヒロイン「神楽日毬」を体験しましょう!
(杉村 啓)

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