複数の家電に対応するマルチリモコン「ハウスリモートコントローラー(HUIS REMOTE CONTROLLER)」が、ソニーから販売されているのをご存じだろうか。

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この製品はソニーの新規事業創出プログラム「Seed Acceleration Program」(以下SAP)から生まれたHUIS(ハウス)プロジェクトで開発された次世代型リモコンで、1年前にホワイトモデルが販売され、今年11月からは新たにブラックモデルも発売を開始している。

このリモコンの特長は、あらゆる家電に付属しているリモコンから、よく利用するボタンだけを1つにまとめて自分好みにアレンジできるカスタマイズ性能と、インテリアに溶け込むマットな質感を持ち、本体も画面も黒色に統一した一体感のあるデザイン性だ。

さらに、電力を使わずに常に画面を表示し続けられる電子ペーパーを採用しているなど、従来のリモコンの常識をくつがえす仕様となっている。

今回、リモコンの未来を変える可能性を秘めた同製品の魅力について、製品開発を担当したHUIS事業室・統括課長の八木隆典さんと、デザイナーの石津雄登さんに話を聞いた。

――八木さんは入社2年目でこのHUISプロジェクトを立ち上げたと聞きましたが、なぜそのようなことができたのでしょうか。

八木「まず、入社の理由からお話しすると、もともとライフスタイルを変える、何か新しいものを作りたいという思いからソニーに入社しました。入社後、私が最初に配属されたのがテレビ事業部だったんです。

そこでテレビ事業に携わるうちに、本体の画質や音質は変わっても、使い勝手はあまり変わっていないことに気付きました。そこから使い勝手について考えを深めるうちにリモコンに注目するようになったんです。

ちょうどその時、SAPというものがあることを知り、新規事業を目指すきっかけになりました。この先リモコンは絶対変わっていくものだと感じていたので、チャレンジしたら面白いんじゃないかと。

SAPは新規事業のアイデアを事業化につなげるためのプログラムで、オーディションに合格すればプロジェクトリーダーとして事業化に挑戦していけます。おかげで入社2年目の私でも開発チームを立ち上げることができました」。

――プロジェクトがスタートしてまず何をしようと思いましたか。

八木「最初に考えたのはリモコンの表面を変えることです。今までのマルチリモコンは多くのボタンが敷き詰められていて、ボタンに機能を割り当ててもそれが複雑化してしまったり、そもそもデザイン的にも制約が多かったように思います。

でも、操作する中で最適なボタン配置というものは絶対あるはずで、それを実現することが必要かなと思っていたので、ユーザーによって異なる画面をディスプレイ表示できる点は他のリモコンとの大きな差になったと考えています」。

――画面に注目したということですが、なぜそこに電子ペーパーを採用されたのですか。

八木「有機ELや液晶だと、操作をするときにわざわざ電源をオンにしないといけないじゃないですか。でも、『テレビの電源を付けるためにリモコンの電源を付ける』のは正直どうかなと思って。そこはやはり従来のリモコンと同じように、持ってすぐ使える手軽さが大事だと考えているので、その点において電力を使わずに常に画面を表示し続けられる電子ペーパーは最適でした」。

石津「デザイン的に言うと私は“シンプルさ”がポイントだと思っています。電子ペーパーの画面は決してリッチに感じるディスプレイではありませんが、取ってすぐ使える手軽さがあり、目にやさしく見やすいうえにあらゆるリモコンを1つにまとめることができるので、非常にシンプルなんです」。

八木「それに、今回新たに発売したブラックモデルは画面も黒色に統一するために、技術的にもかなり挑戦しました。電子ペーパーは従来ですと黒色の画面は残像が残りやすく、あまりディスプレイに向いていなかったんです。でも、残像を極限まで抑える技術を取り入れることができ、実現にこぎ着けることができました。

そのかいもあって黒色のマットな質感の本体と合わせたデザインが思った以上に反響を呼んでいて、SNSなどでユーザーから『かっこいい』という評価をいただいています」。

――ほかにも挑戦されたところはありますか。

八木「今回、本体を黒にしたのですが、できるだけインテリアに溶け込むような深いマットな感じを出したかったので、実は調合した専用の塗料で塗装しています」。

石津「通常の樹脂色による黒だと、テカっとして複雑な印象になってしまいがちなので、今回は塗装をすることで上質な黒を目指し、落ち着いた印象に仕上げました」。

――その本体を、特徴的な縦置きにしたのはなぜですか。

石津「縦置きにしたのは『飾れるリモコン』と言われるくらい、置いていて心地良いものにしたかったからです。私自身は機能性だけでなく、所有する喜びを感じるようなちょっと変わった形やデザインに興味があって、こういうのを好きで買ってくれる方もいたりするので。自分がカスタマイズしたリモコンを飾るのも、ひとつの楽しみだと思っています」。

八木「実際ユーザーの方から『この立つのがいい』と言われることが多いんです。いくつものリモコンを机の上に好んで置きたがる方はそう多くないと思いますが、逆にこれが机の上にあるとむしろ優越感に浸れる方もいるみたいで。それに、これが家に置いてあると知り合いが来た時に話題になるらしいですね。『なにこれ、こんなのがリモコンになるの?』と言われるみたいです(笑)。

ほかにも、飾りとして立てながら好きな絵をボタンとして表示することもできるので、ユーザーの中には自分の好きなキャラクターやペットの絵を入れる方もいるみたいです。私たちも“時計を表示させたい”と思っているんですけど、実現はまだできていないので、これは今後の課題ですね」。

――このリモコンはカスタマイズ性の高さが魅力の1つですが、逆にそれが初心者の方にはハードルが高くはないですか?

八木「確かにカスタマイズについてはハードルが高いというコメントもありました。そもそもリモコンをカスタマイズしたことがある人が世の中にいないんですよ。だからどんな風にカスタマイズすればよいかがわからない。

でも、普段どんなボタンが使われているかはユーザーの方もわかっているので、それを元におすすめを作って提供すればいいという話になったんです。そこで、少し前から『おすすめリモコン機能』というのをソフトウェアアップデートにより追加していて、ボタンを押せば自動的にリモコンができるような仕組みを作っています」。

――今後もアップデートはしていく予定ですか。

八木「もちろんです。対応機器を増やすことや、お客様からの要望に対するアップデートが中心になるかと思いますが、ソフトウェアで改善できるものはしていきたいです」。

――最後に本製品のおすすめポイントをお願いします。

八木「テレビやカメラ本体などと違って、(付属品である)リモコンを選んで買っている方は少なかったと思います。でも、自動化で手軽にリモコンをカスタマイズできるようになった今、『リモコンも選べるんだよ』ということを知ってもらい、ぜひ手に取ってもらって選択肢の1つとして考えていただければと思います」。

石津「この製品は“新しいアナログ”だと思っています。昔からあるリモコンにデジタル要素を加えたことで、道具を取って操作する喜びと、自分の思い通りに部屋を操作する面白みがあるかなと。それをぜひ、感じてください」。(東京ウォーカー(全国版)・永田正雄)

「ハウス リモートコントローラー」の開発に携わった八木隆典さん(左)とデザイナーの石津雄登さん(右)