近年、犯罪報道でよく耳にする「短絡的で独りよがりな犯行」「一見するとおとなしい人だった」といったフレーズ。こうした言葉と凶悪犯罪を結びつけて、「サイコパス」を連想する人は少なくないはずだ。

 しかし、そもそもサイコパスとは、どういう人物を指すのか? 精神科医の名越康文氏は「定義や特徴は、研究者や専門家、文脈により幅があるのが現状」と話す。

「一般に取り上げられるサイコパスは、例えるなら『タレント』のようなやや曖昧な言葉です。ジャーナリスティックな記事では、猟奇的な殺人犯=サイコパスとするケースもありますが、全員が事件を起こす暴力性の強い人というわけではない。同じような特徴を持った人を、何となく一括りにできる言葉として理解すべきでしょう」

 また、精神科医の朝倉孝二氏は次のように語る。

「精神医学ではサイコパスという言葉は使わず、『反社会性パーソナリティ障害』という病名になります。規則や社会のルールを守ろうとせず、他人を傷つけても自分を正当化するといった特徴を持つ障害のことです。精神疾患の診断基準『DSM-5』では、違法行為を繰り返す、虚偽性、衝動性、攻撃性、無謀さ、無責任であること、良心の呵責の欠如の7つが挙げられ、そのうち3つ以上で示されるものとなっています」

 こうした行動パターンをとる人々を「サイコパスは反社会的な人格を表す診断上の概念にすぎない」という前提のもと、どこにサイコパス的要素があるのかを紹介する。

◆歯止めが利かず、殺人に発展する例も

 フツーの人なら、多少腹の立つことがあって怒りを覚えても、暴力に訴えることはないものだ。だが、サイコパスのなかにはブチ切れると手がつけられないほど大暴れする者もいる。前出の名越氏は「歯止めが利かない暴力が常態化していれば、サイコパスの疑いは大いにある」と話す。次の証言はまさにその典型例と言えるだろう。

「カード詐欺のグループに所属して、いわゆる半グレ的なことやっていたんですが、そんな俺でもドン引きするほどのヤバイ先輩がいました。とにかく手加減を知らず、一度キレたら鉄パイプやら酒瓶やらを持ち出してフルボッコです。相手が倒れても延々と殴り続け、それも普段のヘラヘラしたテンションのまま暴れるから本当に怖かった」(男性・37歳・飲食店)

 手加減知らずのキレっぷりが原因で、終いには喧嘩で人を殺して刑務所暮らしになったという。

「俺も悪いことをしてきましたが、加減はわかってるつもりでしたし、やっぱり後で嫌な気持ちになる。先輩はそれがなかったですから」

◆フツーのはずの元カノが枕をハサミでズダズダに

 こんな派手な事例は一般人には無縁……とも言い切れない。続いては「元カノが暴力的だった」という証言。

「元カノは僕と一緒にいるときはフツーのコでした。でも、彼女の友人から話を聞くと、一度キレると手がつけられない女だったんです。食事中に突如ブチギレて、食べているパスタを投げつけたとか、友人宅に泊まった際に爆発してハサミで枕をズタズタにしたとか……。話を聞いたらゾッとして別れました」(男性・33歳・IT)

 おとなしそうに見えて、突然暴力的になるケースは他にもある。

「駅のホームで新幹線を待っていたら、20歳前後の気弱そうな撮り鉄が目の前に三脚を立て始めた。注意したら激昂して『お前がジャマなんだよ! 死ね!』と怒鳴られ、胸ぐらを掴まれました。子供連れだったので、本当に恐怖を感じました」(男性・40代・会社員)

 自らの目的を果たすため、平気で暴力を振るう。そんな人物はサイコパス的要素が濃いと言える。

「正常な人は暴力的になることに葛藤があるんです。でも、サイコパスはそれが緩い。『ちょっとカッとして』みたいな言い訳が当たり前になると危険ですね」(名越氏)

 エスカレートすれば大事件にもなりかねないだけに、危険なサインには注意したほうがいいだろう。

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