民に原発への根強い抵抗感があるなか、安倍政権が原発の新設に動き出したという。

『週刊プレイボーイ』でコラム「古賀政経塾!!」を連載中の経済産業省元幹部官僚・古賀茂明氏が落胆する、安倍政権や原子力ムラのやり口とは―

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慌ただしい年の瀬に、立たないが気になるニュースがふたつ流れた。

ひとつはの「エネルギー基本計画」見直しのなかで、「経産省原発新設の議論に着手した」というニュース

もうひとつは「東京電力原子力事業を今後も安定的に続けるため、に経営環境整備をめた」というニュースだ。

まず原発新設のニュースについて。安倍政権は2014年に「エネルギー基本計画」を策定し、原発の「重要なベースロード」と位置づけた。それを前提に、翌15年には30年度の電構成で、原発2022すことを決めた。

この数字の意味することは原発の新・増設である。

なぜか? 原発は運転期間40年で炉にするというのが基本原則だ。これを忠実に実行すると、30年の原発シェアは15までに下がる。2022シェアを死守するには、40炉をやめて、古い原発をどんどん運転延長することが必要だが、安全対策などの費用がかさむので、延長できない原発も多く、どうしても原発の新・増設が必要となるのだ。

ただ、民に根強い抵抗感があるなかで原発の新設を言いだせば、内閣支持率が急落する恐れがある。そのため、安倍政権はこの議論を封印し、「原発を新設するのか?」と問われても「現時点では考えていない」などと、うやむやにやり過ごしてきた。

そして、ふたつ東電ニュース。「経営環境整備をめた」とは、つまり原発ビジネス東電赤字が出ないように様々な支援措置を講じてくれということだ。

具体的には、固定価格買取制度や赤字補填(ほてん)制度のように絶対に損をしない仕組みや、事故を起こしたときの損賠償を1兆円程度に抑えて、あとは責任を取る仕組みなどが考えられる。その財はもちろん税。とんでもない話だ。










そもそも、発電コストが安いという理由から、原発は「重要なベースロード」に選ばれたはずだった。しかし、安全対策コストの増加などで、その神話は崩れ去っている。炉費用なども含めれば、原発の発電コスト火力などのほかの電べると、逆に割高になっているというのが実情だ。

本来なら、エネルギー基本計画見直しのプロセスで、原発を「重要なベースロード」から外すのが妥当なのだが、安倍政権も原子力ムラも、どうしても原発を維持したい。そこで「原発ベースロードを担う大切な存在だから、たとえコスト高でもが税を投入して守るべき」という倒錯した論理をひねり出し、東電に政府支援を要請させたというわけだ。

このふたつのニュースは、安倍政権の支持率を下げる要因となる可性が高い。

だが、10月総選挙で大勝し、安倍政権の基盤は再び強化された。しかも、19年の参院選まで2年間、選挙がない。今なら不人気政策を決めても選挙までに民は忘れるーーおそらくそんな判断が働いたのだろう。

原発から再生可エネルギーへと急速にシフトする世界の潮流のなかで、いまだに原発にこだわる日本ビジョンなき国家は没落する。このままだと日本は近い将来、世界エネルギー産業市場で敗者になることは確実だ。安倍政権や原子力ムラのやり口には、本当に呆れ果てるばかりだ。

古賀茂明(こが・しげあき)










1955年生まれ、長崎県出身。経済産業省の元官僚。が関のリーダーだったが、民主党政権と対立して11年に退官。新著は『日本中枢の狂謀』(講談社)。ウェブサイト『Synapse』にて動画古賀茂明の時事・政策リテラシー向上ゼミ」を配信中

「原発の新設」で日本は世界の敗者になる──安倍政権と原子力ムラの呆れたやり口とは?