ある日突然、正気と狂気の間をさまよう原因不明の病に侵されたら…。実在の女性記者スザンナ・キャハランの闘病記『脳に棲む魔物』を、クロエ・モレッツ主演で映画化した『彼女が目覚めるその日まで』。病によって精神のコントロール能力を失ってしまう難役に挑んだクロエが、休業報道をはねのける女優への飽くなき情熱と、プロデュース業にも乗り出した近況などについて赤裸々に語った。

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 シャーリーズ・セロンが製作を務める本作は、順風満帆だったニューヨーク・ポスト紙の記者スザンナ(クロエ)が、謎の病によって“絶頂”と“絶望”を激しく行き来する精神錯乱状態に苦悶する姿、そしてそれを全力で支える家族の愛を描く衝撃の実話ドラマ。2007年、“抗NMDA受容体脳炎”という病名が与えられるまで、悪魔憑きや精神の病と判定され、オカルト映画『エクソシスト』のモデルとなった少年も、この難病の典型的な症例だったと指摘されている。また、日本でも年間約1,000人が発症しており、映画『8年越しの花嫁 奇跡の実話』でも同病が描かれている。

 両親が医療関係に従事していたことから、この本の存在を聞かされていたというクロエ。スザンナ役のオファーを快諾したという彼女は、「すでに原作を読んでいた母から“抗NMDA受容体脳炎”のことを詳しく説明され、すごく興味が湧いてきて、脚本を読んでみたい、そしてスザンナ本人にも会ってみたいと思ったの。最終的には原作も読んだけど、誤診が続いたことによって招いた悲劇に胸がとても痛んだわ」と振り返る。

 さらに、「現代の医療は、私たちを“生身”の人間ではなく、1つの“症例”として捉えているところも多分にあると思うの。こういう症状が出たからこの病気、という具合に、教科書通りに解いていこうとするでしょ? そんな中、自分の直感を信じ、スザンナの心の叫びに耳を傾け、全く違うアプローチで病に挑んでいったナジャー医師の姿に強く惹かれたわ」と言葉に力が入る。

 何の予備知識もなくこの映画を鑑賞すると、「オカルト映画?」と見間違えるくらい、病状はシリアスだ。スザンナに憑依したかのようなクロエの演技は、破壊的な恐怖を観客に突き付ける。「精神の錯乱状態に陥っているシーンの連続で、過去に自分がやってきた芝居にはなかったもの。だから、その瞬間に身を託して、スザンナの身になってやるしかなかった」と撮影当時を思い出すクロエ。

 「クランクイン前に、スザンナやお医者さん、この病気を体験しているほかの患者さんにも話を聞き、知識武装じゃないけれど徹底的に予習を積み上げて撮影に臨んだの。あとはスカイダイビングのように飛び込だけ。監督からアクション! と言われれば、もう全てを手放してやるしかない。崖からダイブするような気分だったわ」。

 女優休業報道が飛び交い、一時、ファンをやきもきさせたクロエだが、本作の演技を観る限り、映画への熱意は以前よりも高まっているようにも感じられる。「幸い、私は14年間、女優のキャリアを積むことができたけれど、気づいたら、どんどん知らない領域に入り込んでいたの。だから一度、自分のキャリアを精査しなければならない時期があったの」と胸の内を告白。

 「例えば、“マンネリ化してない?”とか、“自分の気持ちに正直に生きてる?”とか、自分のお尻を叩くというか、そういうことも意識でやっていくことが大事だと思ったから、ある時期、いくつか企画を断って一人旅に出たこともあった。でも、そのおかげで本作はもとより、これから公開される映画(『ノーベンバー・クリミナルズ(原題)』『ザ・ウィンドウ(原題)』『サスペリア』リメイク版など)は、自分が納得できる素晴らしい作品ばかり」と自信をのぞかせる。

 家族と共に映画の製作プロダクションを設立したというクロエは、プロデュース業にも意欲を見せ、自分のペースを取り戻しながら、自己実現に向けて再び歩み始めようとしている。本作を皮切りに、2018年以降のクロエから目が離せない。(取材・文:坂田正樹)

 映画『彼女が目覚めるその日まで』は12月16日より全国公開。
クロエ・モレッツ、『彼女が目覚めるその日まで』インタビュー