早くもSNS上などで「続編期待」の声が上がる米倉涼子主演のテレビ朝日系ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~。最終回の視聴率は25.3%(関東地区)と、約4人に1人がテレビにくぎ付けになる注目ぶりだった。

 だが、大きな影響を与えた分、その影響を心配する声もある。医療事件を専門に扱う石黒麻利子弁護士は「ドラマの盛り上がりに水を差すつもりはありません」と前置きしながらも、こんな懸念を示す。

「現実にはドラマの大門先生のように、マルチに何科でも手術できる外科医なんていません。外科医と言っても、脳外科は脳外科だけ、心臓血管外科は循環器だけ、消化器は消化器だけ。医師は万能ではなく、専門外のことはわかりません」

 石黒弁護士がそう懸念を示すのも、医療事件に巻き込まれる人の多くに共通する事象として、患者の「医師任せの姿勢」を見てきたからだ。石黒弁護士はある50代の男性が遭った医療事故を例に挙げる。その男性は胸に酷い痛みを感じたことから、夜間救急病院を受診。当直医はベテランの外科医で、患者の症状から大動脈解離を疑ったものの、CT検査の結果、緊急性がないと判断し、男性患者を帰宅させた。しかし、翌朝、急性心筋梗塞で男性患者が死亡したというケースだ。

「男性は帰宅後も胸の痛みを感じ続けていましたが、医師の『緊急性はない』という言葉を信じ、痛みを我慢し続けていました。我慢せずに自分で救急車を呼ぶなどすれば助かったかもしれません。男性は救急外来受診時に心筋梗塞一歩手前の不安定狭心症の状態にあったのですが、ベテランの外科医が気づくことはありませんでした」

 石黒弁護士は「医師なら何でも知っていると思いがちですが、専門外のことはほとんど知らないと考えたほうがいい」と指摘する。石黒弁護士自身も、それは痛感している。

「医療法律相談を受ける際に、事前に医師と相談することが多々あります。その際、たとえば脳神経外科医の医療事故をほかの科の医師に尋ねても『専門外でわからない』と言われるのが関の山です」

 そうした現実を踏まえ、石黒弁護士が医療事故に遭わないための「患者の心構え」に挙げるのが、次の4つだ。

①医師任せにしない
「どんなことにも詳しく、どんな手術もできるスーパードクターは医療ドラマのなかにしかいません。専門分野であっても先入観から医療ミスをする医師もいれば、知識や経験の乏しい研修医に丸投げする医師もいます。医師にすべてを任せきりにするという態度は危険です」

②病気を知る
「医師任せにしないためにも、まずは自分や家族の病気を知ることが大切です。緊急の措置が必要な病気であるにもかかわらず、外見上は重症感が見られなかったり、経験の乏しい医師にあたったりすると、見落とされる可能性もあります。そんなとき、患者に最低限の病気の知識があれば、典型的な症状のキーワードを使って医師にうまく伝えられることができ、医師の見落としを防げる可能性が高まります」

③我慢しない
「自分の直感を無視して我慢したばかりに命を落としてしまう医療事故が後を絶ちません。医師に病気を見落とされないためには、とにかく我慢しないことが大切です。症状を正しく伝えようとする努力はもちろん、多少大げさに症状を伝えるくらいが丁度いいかもしれません」

④コミュニケーション力を磨く
「病院は少ない人数で多数の患者を診ているので、意図しなくても結果的に放置されることは避けられません。日頃から医師や看護師と良好なコミュニケーションをとっていれば、おのずと関心を持たれ、異常に気がついてもらえる可能性も高まるでしょう」

 スーパードクター・大門未知子はあくまでテレビドラマ上の人物であり、現実は患者側も積極的に医療に関わっていく姿勢が必要ということだろう。<取材・文/日刊SPA!取材班>

【石黒麻利子(いしぐろ・まりこ)】
弁護士・医学博士。東京都出身。1992年、藤田保健衛生大学大学院医学研究科博士課程修了。理化学研究所などで主に脳神経科学の研究に携わった後、法曹へ転身。2006年中央大学法科大学院修了、同年司法試験合格。近著に『医療事故に「遭わない」「負けない」「諦めない」

番組公式サイトより