2014年12月31日、栃木県日光市の「鬼怒川秘宝殿」が閉館したことにより、この日本で「秘宝館」という名を冠するそれは、「熱海秘宝館」だけとなってしまった。「昭和を象徴するエロスの殿堂」が、たった1軒となってしまったのは、なんとも寂しい限りだが、そんな中、新たな「秘宝館」を“運営”している男性がいる。

 埼玉県八潮市で暮している兵頭喜貴さん(44歳)。彼が“運営”しているのが「八潮秘宝館」だ。2015年に自力で作り出したもので、館内には、10数体のラブドールやマネキンなどが並べられている。1階には、戦時中の病院を再現したような展示室があり、ラブドールやマネキンが怪しげな光に包まれている。そして、2階には、ラブドールがベッドに寝そべっていたり、椅子に腰掛けていたりする。ピンク色を基調とした美しい光に包まれた部屋は、今まで何人もたどり着いたことのないような楽園を思わせる。この「秘宝館」は、自宅を兼ねている。

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「1階は、旧・日本軍が人造人間の少女たちを集めて結成した『特殊看護部隊』という設定となっています。彼女たちは、人体実験や拷問、暗殺を行う特務機関で、そのモチーフを元に作り込みました。2Fは『狂った楽園』というか、僕にとっての夢の世界を体現しています。ラブドールは集め始めて13年目になりますが、その他にマネキンや人体模型などがいます。すべての始まりは、17年前に空き地に捨てられてたマネキンを拾ったことだったんです。葛飾区の亀有での出来事です。それからというもの、彼女を全国に連れ回して写真撮影をしていました。その後、2004年の冬に30万円でオリエント工業のラブドールを買いました。マネキンでやれることは、ほぼやったという気持ちがありましたからね。もう150万以上は使っているかも知れません……」(兵頭さん)

「八潮秘宝館」は、「秘宝館」という名前を冠しているが、一般的なそれとは一線を画すものとなっている。普段は、写真撮影の際に使うストロボを製造・販売している会社などに勤務している兵頭さんの脳内で蠢いているものが表出しているところであり、写真系の大学院に通うなどして学んできたことなども折り重なっている。11月に行われた「下着祭り」と題された一般公開にも多くの人が足を運んだ。

「もう昔から女性の下着も好きで集めていたんですよ。そうしたら、ちょっといい感じのを見つけたんですね。見てくださいよ。エロいでしょ。こんな小さなサイズの下着でここまでエロいのってないんですよ、ナカナカ。65Aです。小柄な高校生か中学生、またちょっと大きな小学生用ですね。ワコールです。ウチの娘たちは、(身長が)136センチと小さいですから、これがこの人形に合うんですよ。大井町のイトーヨーカドーで見つけました。もうすぐに買っちゃいましたよ!!」(兵頭さん)

 兵頭さんは、ラブドールを集めるだけではなく、彼女たちにどんな感じの服を着てもらったらいいかをよく考えている。特注の服もあるほどだ。下着というものは、その上から服を着てしまえば見えなくなるものだが、そこにもこだわりがあるのだ。今回の「下着祭り」は、イトーヨーカドーでこれらの下着と出会ったことから始まっている。

 また、兵頭さんは、マネキン時代と同様にラブドールを車に乗せて運んで写真の撮影を行っている。もちろん、撮影の技術もしっかりとしていて、心躍らされる作品が多い。その中には、自分がモデルとなって参加しているものもあり、自身がカメラに映り込む場合、リモコンを使ってシャッターを切っている。

「小学生の頃からカメラが好きだったですね。そのときにすでに、今に繋がるものはありました。特撮やアニメに出てくる女改造人間や、女人工生命体とかが大好きだったんですよ。ボトムズとか、メカゴジラとか大好きで影響受けましたね。これは性癖というかフェチなんですけど、勃起するとかって表面的なことじゃなくて、もっと深いところにジワーっとくるものなんです」(兵頭さん)

 近年の傾向として、ラブドールを性的な対象とするのではなく、ガールフレンドやモデルに見立てて写真撮影を楽しむ人たちが増えている。これらの写真は、ホームページやSNSなどで見ることができるが、どの作品も個性的で魅力的なものばかりだ。そんな中、兵頭さんの写真には、ちょっとした違いを見てとることができる。それは、アニメや特撮などの影響だ。ファイルに収められている数多くの写真には、もうすぐやって来るかも知れない近未来的な感覚が盛り込まれている。「八潮秘宝館」が20代の女性に人気があるのも、こういった趣があるからだろう。

「これは、別にアートだと思ってやってないんですよね。自分の好きなことを突き詰めていったらこうなったわけです。生きている間は、活動に終わりはないですから。他の人が理解できなくてもいいんです。どんどん自分の世界を極めていきたいですね、よく誤解されるんですが、若い頃に10代から50歳女性まで一通りつき合って、色んな経験をした上で、こっちの世界に来てます。僕の知ってる限り、こういうラブドール好きの人で生身の女性に興味ない人はいないと思いますよ」(兵頭さん)

 以前、兵頭さんは、都内にある有名なギャラリーから、「これらの展示物をそのまま移設して展示したい」というオファーを受けたことがあるという。しかし、その量が膨大すぎることから、ギャラリーでの展示には至らなかった。

 次回の一般公開は、来年1月に予定されている。ここでは、兵頭さんが撮影を続けているラブドールの写真も観ることができる。最近は、かなりの人が訪れるようになっているので、予約はお早めに。
(文・写真=酒井透)

撮影=酒井透