コンビニエンスストア各社が相次いで新規事業を打ち出した。

 最大手のセブン-イレブン・ジャパンはソフトバンクと組み、コンビニをシェア自転車の貸し出しや返却の拠点にする。2018年度末までに首都圏や地方都市の1000店で5000台を設置する計画だ。通勤・通学で自転車を使う人が増えており、インバウンド(訪日外国人客)など観光客のニーズを当て込んでいる。

 ファミリーマートは矢継ぎ早に新たなサービスに乗り出す。まず、単身や共働き世帯に人気の高いコインランドリー事業に参入。駐車場がある店舗を中心に、コインランドリーを併設する店舗を19年度末までに500店展開する。

 スポーツジムも始める。自社ブランドの「Fit&GO」1号店を18年2月に東京都大田区に開設する。月々7900円で24時間営業。5年間をメドに300店舗を目指す。

 11月16日、神奈川県で深夜の自販機店舗の実験を始めた。コンビニ業界が抱える深夜の人手不足を克服するための新しい取り組みだ。普通のファミマの店舗のすぐ隣にプレハブ小屋のような小型店舗が設けられた。深夜0時から5時までは店舗の営業を休止し、小型店舗が飲み物や食べ物を3台の自販機で売る仕組みだ。

 ローソンは深夜の時間帯に、従業員が接客せず無人で決済できる店舗を18年春から導入する。都内の2、3店舗で、午前0時から5時にレジを無人化する実験を始める。客はスマートフォンの専用アプリを店の出入り口の読み取り機にかざして入退店できる。決済用のアプリで商品のバーコードを読み取り、現金を使わずに支払いを済ませる。LINEの決済システム「ラインペイ」などを使用する予定だ。アプリで個人を特定できるし、防犯カメラの増設で万引きなどを防ぐ。無人化システムは18年度中に完成を目指す。

 コンビニでは24時間営業の見直しの議論が何度も浮上しては消えた経緯がある。業界の盟主、セブンはこれまで通り24時間営業を継続する構えだ。ローソンが中間。ファミマは「地方店で24時間営業を維持できなくなっている」というのが実態で、自販機を組み合わせながら繁華街の店を除き実質的に24時間営業をやめる検討に入ったといっていいだろう。ファミマは24時間営業をやめた場合の売り上げや費用などの試算も始めている。

 コンビニは弁当やおにぎり、飲料などの食料品のほか、日用雑貨などを扱う。コンビニの成長を支えてきたのは絶え間ない新サービスの追加だった。公共料金の支払い、宅配便の受け取り、ATMでの現金引き出し、チケットの購入など。コンビニは新たな機能を加えるたびに周辺の市場を侵食しながら利用者を増やしてきた。

 しかし、ここ2年、来客数は頭打ちとなった。集客力を高めるべく、現在伸びているサービスをさらに充実させることにした。

●セブン、4カ月連続客数減

 セブン&アイ・ホールディングスの17年3~8月期の連結決算は国内コンビニ子会社、セブン-イレブン・ジャパンにおんぶに抱っこだった。

 セブンのチェーン全店売上高は前年同期比3.8%増の2兆3731億円、営業総収入は2.8%増の4348億円、営業利益は3.3%増の1307億円と増収増益。百貨店やスーパーの不振を補い、セブン&アイの連結純利益は同2.7倍の894億円と2年ぶりに最高益を更新した。

 この決算から克服すべき課題が見えてきた。全店の平均日販は66万3000円だが、前年同期より4000円減少した。既存店売上高は客単価の上昇で1.0%増となったが、客数は0.2%減った。

 こうした傾向が、より顕著に表れたのが10月だった。10月の既存店売上高は前年同月比で0.5%の減収となった。12年7月以来、63カ月ぶりに前年実績を下回ったことになる。客数は4.5%減少した。大型台風や長雨の影響で客足が鈍った。

 だが、天候不順だけが理由ではない。セブンの変調は夏から起きていた。客数は7月に前年同月比1.2%減に転じて以降、8月1.6%減、9月1.2%減と、10月まで4カ月連続の前年割れとなった。

 11月の国内既存店売上高も前年同月比0.1%減となった。2カ月連続でマイナス成長だが、弁当など商品の販売はプラスに転じた。しかし、プリペイドカードの売り上げが前年を大きく下回った。音楽やゲーム、ネットショッピングに使えるプリペイドカードなどサービスの売り上げが落ち込んだ。セブンの既存店が2カ月連続で前年実績を割り込むのは12年7月以来のことだ。

 見方を変えよう。セブン&アイの井阪隆一社長は、カリスマ経営者・鈴木敏文氏の呪縛から解放され、ホッとしているのではないだろうか。既存店のプラス成長の神話を続けるために「おにぎり100円セール」など、粗利益率を下げる一時しのぎのセールに頼らずに済む。11月は商品売り上げに限ればプラスに戻った。これからは、コンビニの抜本的なテコ入れに軸足を移すことができるからだ。

 井阪氏は09年からセブン初の生え抜き社長として事業を伸ばしてきた。だが、コンビニの生みの親でセブン&アイ会長だった鈴木氏は16年2月、「新しいアイデアが出てこない」として井阪氏に退任を要求。その人事案が同年4月の取締役会で否決されると鈴木氏は即座に退任の意向を表明して、揺さぶりをかけた。社内外の大混乱の末、最後に経営トップに選ばれたのが井阪氏だった。

 その井阪氏は“脱鈴木路線”に舵を切った。時給上昇により加盟店の人件費の負担が増している。セブンは9月から、加盟店の経営指導料(チャージ)を1%引き下げた。セブンのチャージ率は他チェーンと比べて高く、高い収益を支える源泉である。鈴木氏が「チャージには絶対に触れるな」と言明していたことから、チャージはセブンの“聖域”となっていた。井阪氏は加盟店の負担を軽減するため、その聖域に手をつけた。

 チャージ引き下げの影響は下半期に80億円、年間で160億円になる見通し。そのためセブンの18年2月期の営業利益は2440億円と横這いにとどまる見込みだ。

 コンビニの集客力を高めるために自転車のシェアサービスに進出。従業員の作業を軽減する次世代型店舗を12月7日に東京・四谷に開店した。省力化で生まれた時間を接客や発注に向けることで店舗の魅力を高め、来店客数の増加につなげたいとしている。

●ファミマ、サークルKサンクスの合併は失敗か

 ユニー・ファミリーマートホールディングスは、18年2月期の連結営業利益(国際会計基準)を従来予想の412億円から329億円に下方修正した。主力のコンビニ事業で不採算店舗を追加で閉鎖することに伴う減損損失などで160億円の費用が発生するためだ。

 ファミマとユニーグループ・ホールディングスが16年9月に経営統合してユニー・ファミマが発足。傘下のコンビニ事業は、ファミマがサークルKサンクスを吸収合併した。

 直接比較はできないが、統合前の旧2社の業績をもとに前年同期で比べると、ファミマ単体の17年3~8月期決算(日本会計基準)のチェーン全店売上高は前年同期比0.5%増の1兆5513億円、営業総収入は2.8%増の2543億円、純利益は186億円の黒字(前年同期は164億円の赤字)に転換した。

 だが、国際会計基準に基づくファミマ単体の18年2月期の当期純利益は21億円の見通しだ。チェーン売り上げは3兆円超なのに利益はたったの21億円。吸収合併したサークルKサンクスが、強烈に業績の足を引っ張る。

 ファミマの10月の既存店売上は1.2%減、客数は4.8%減。17年3月以降、既存店売り上げは5月を除いて毎月前年割れ。客数は4月以降7カ月連続の減少だ。

 惨憺たる成績なのがサークルKサンクスだ。既存店売り上げと客数のマイナスは8カ月連続。その結果、11月のチェーン全店の売上高は前年同月比58.6%減。半減どころではない。穴が空いたバケツから水がこぼれ落ちるような惨状ぶりだ。

 ユニーの総合スーパーの不振は統合前から予想できたが、サークルKサンクスがこれほど弱いとは考えていなかった。ファミマがサークルKサンクスを合併したことは、大失敗だったと言わざるを得ない。

 コンビニ事業の行き詰まりを糊塗するために、コインランドリー、スポーツジムを始めると発表したかたちだ。古くから、大きな内部矛盾を抱える企業は、華々しい新規事業の花火を打ち上げる。自前のスポーツジムの展開には無理がある。そもそも2階建ての店舗をどれだけ確保できるのか。初期投資にどのくらいかかり、何年で回収できるのか。ファミマの自営店以外で、スポーツジムを展開できるのだろうか。スポーツジムより、投資の回収が早い業種がたくさんある。

 セブンとファミマを比べると広報力、特に情報収集力と情報発信力に絶望的といっていいほどの差がある。ファミマの広報をテコ入れするために、親会社の伊藤忠商事から、優秀な広報マンが送り込まれる可能性もある。

 コンビニが誕生して40年余。「コンビニ5万店飽和説」が声高に唱えられながらも、右肩上がりの成長を遂げてきた。16年(暦年)の売上高は10.5兆円(日本フランチャイズチェーン協会調べ)。16年度のスーパーの売上高は13兆円(日本チェーンストア協会調べ)。

 減少を続けるスーパー全体の年商に迫り、小売業の首位の座が射程圏内に入ってきた。ところが、客足が遠ざかるという大きな壁にぶち当たった。コンビニ業界は初めて冬の時代を迎えることになる。
(文=編集部)

ファミリーマートの店舗(撮影=編集部)