毎回、高視聴率を記録し、感動のラストで幕を閉じたドラマ『陸王』(TBS系)。その舞台となった埼玉県行田(ぎょうだ)市には、多くのファンが“聖地巡礼”で訪れたというが、劇中には地元の銘菓である「十万石まんじゅう」も登場、そのコラボまんじゅうも飛ぶように売れているとか。

「うまい、うますぎる」のフレーズが印象的なCMはテレビ埼玉で何十年にもわたって放送されており、十万石まんじゅうは「埼玉県民なら知らぬ者はいない」と言われるほど親しまれている。

そこで、埼玉出身の記者が行田本店を訪れ、その知られざる歴史について「十万石ふくさや」社長の横田康介氏を直撃! 創業以来、守り抜いてきた銘菓のこだわりとは――。

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―『陸王』とのコラボが話題になっていますが、どのような経緯で実現したんですか?

横田 『陸王』は10月放送開始でしたが、8月か9月の段階で、行田市に馴染みのあるお菓子ということでTBSさんから劇中で使いたいと声をかけていただきました。弊社としてもチャンスですので、販売商品としてドラマのロゴを使わせていただく許可を得て、展開させていただいたんです。

―実際、劇中に十万石まんじゅうが登場した時はどう思われました?

横田 当初、ドラマの中でどう出てくるのか、お聞きしても教えていただけなかったんです。というより、これは後からわかったことですが、直前までロケをして編集しているから、どういう形で登場するかその時点では明言できなかったのでしょうね。

ほんの一瞬、おまんじゅうが出てくるのか、もしくは包装紙だけが出てくるのか…と思っていたら、実際に十万石まんじゅうを手に取っていただけたので、少なくとも行田市周辺の皆さんにはわかっていただけたかと思います。

―コラボまんじゅうには『陸王』の焼印が入っています。反響はどうですか?

横田 まさかここまでとは思っていなかったくらいです。

―おお~、前年比の何倍とか?

横田 そういうこともよく聞かれるのですけれど、何倍もなんてなろうはずがないですよ。弊社はおまんじゅうに特化した生産ラインを持っておりますけど、何倍もの生産を確保できるまでの能力はないですから。

―ということは、常に品切れ状態?

横田 毎日、出せば売れる状況で生産が間に合いません。全従業員が頑張ってはおりますけれど、追いつきません。ですから、最初は嬉しい悲鳴だったんですけど、今は悲鳴になっています(苦笑)。

―単なる悲鳴に(笑)。

横田 「それでも売れているからいいだろう」と思われるかもしれませんが、本音を言えば「明日からやめたい」くらいになっているんです(苦笑)。想定外の売れ行きで、とにかく間に合わない。ただ、お客様にそういうことを言ってもしょうがないです。ご来店いただいても目当ての商品がないわけですから「欠品しております。申し訳ございません」とお伝えするしかない、本当に心苦しい状況です。

―買えた人はラッキーくらいに思わないと。

横田 それではいけないことは承知しております。影響がここまでのものだとは思っていなかった。7、8年前に『秘密のケンミンSHOW』(読売テレビ系)で取り上げていただいた時も影響は大きかったのですが、今回ほどではなかったですから。

『陸王』は舞台が行田に特化しているということが大きいんでしょうね。私は古い人間なものでよく知らなかったのですけれど、今はアニメやドラマで取り上げられるとそれを観た方々がロケ地を回られたりするじゃないですか。

―“聖地巡礼”というやつですね。

横田 この辺ですと、(久喜市にある)「鷲宮(わしのみや)神社」には相変わらず若い方が集まっているそうです。なんのマンガで取り上げられたのかは存じていませんが(※2007年にアニメ化された『らき☆すた』で鷲宮神社をモデルにした「鷹宮(たかのみや)神社」が登場)。

だから、舞台になった場所には人が集まるというのはある程度、情報としてはわかっていましたし、『陸王』の舞台が行田であるならば、商売になるのかな?という淡い期待は抱いておりましたが、フタを開けてみたらそんなことでは済まない程になってしまって、ただただビックリしております。

行田市以外からも撮影のエキストラでお越しの多くの方々が、弊社のおまんじゅうをご購入いただきました。大変ありがたいことですが、生産が追いつかない状況なんです。

―そこまでの反響があると、その後が逆に心配になりますね。

横田 まあ、やはりそういうものは一過性のブームでしょうから、ドラマが終わると同時に終わっていくのかなとは思っております。それでも、先ほどの“聖地巡礼”じゃないですけれど、ロケをした場所はこれからも多くの方が訪れるのかなと。映画『のぼうの城』が大ヒットしたのは2012年ですが、今でもカメラを持った人がいらっしゃいますからね。

―あの映画は行田にある忍城(おしじょう)が舞台でしたね。

横田 忍城にはたくさんの人が来ていましたが、うちの本店までは距離にして1kmあるかないかの場所なのに、お城だけ観てそのまま帰られてしまう方がほとんどで、街の中心部には大して影響がありませんでした(苦笑)。

だから、観光っていうのは難しいなと。例えば、同じ埼玉でも川越は蔵の街として知られていますけど、一画にまとまっているから観光客の方も回りやすいんでしょうね。その点、行田はお城にしろ、古墳にしろ、(田んぼアートで有名な)蓮の里にしても、点在していて1ヵ所にまとまっていないので、なかなか観光という面では難しかったのかもしれません。

しかし、『陸王』は街の中心部でロケをしていますから、そういう意味ではあちらこちらに人が流れてくるのかな、とは思いますけどね。

●この続き、後編は明日配信予定!

(取材・文/“Show”大谷泰顕)

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『陸王』コラボ商品が売れ過ぎて社長も悲鳴…うまい、うますぎる!「十万石まんじゅう」の謙虚な誤算