文・取材:メタボIKEDA

 2017年11月17日の発売から好調なセールスが続いている『ポケットモンスター ウルトラサン・ウルトラムーン』(以下、『ポケモン US・UM』)。『ポケモン サン・ムーン』とおなじアローラ地方を舞台に物語が展開する本作の見どころはどのあたりなのか? 伝説のポケモンネクロズマを巡る物語や、これまで『ポケットモンスターシリーズに登場した悪の組織ボスたちが集結する“エピソードRR”に込められた想いのほか、じつは本作を楽しむ上での大きなポイントであるサブイベントについて、ディレクターの岩尾氏と、ストーリープランニングセクションディレクター中氏に聞いた。
※本インタビュー記事は、週刊ファミ通2017年12月28日号(12月14日発売)掲載記事を加筆・再構成したものです。

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ポケモン US・UM』の開発で重視された“現地感”


――まずは、ゲームの大の部分で『ポケモン サン・ムーン』 、『ポケモン US・UM』共通のテーマがありましたら教えてください。

岩尾両作の舞台となるアローラ地方は、ハワイモチーフにしています。温暖な気で色鮮やかな土地を表現するべく、『ポケモン サン・ムーン』では、フィールドマップだけでなく、登場人物たちのセリフや立ち居振る舞いまでを意識しました。『ポケモン US・UM』では、新要素であるマンタインサーフやアローラフォトクラブを通じて、アローラ地方の魅をさらに引き出すことをしています。

――アローラ地方については、これまでの『ポケットモンスターシリーズに登場した冒険の舞台とべても、細部まで描こうというこだわりが強いように感じられますが。

岩尾冒険の舞台をしっかりと描こうというスタンスはこれまでと変わらないですが、ニンテンドー3DSでの開発ノウハウが蓄積され、環境が成熟したこともあり、舞台を描く際の表現が深くなっていることはあるでしょうね。

中とくに『ポケモン US・UM』では、より“現地感”を出すことに注しています。細かいことのように思われるかもしれませんが、じつはストーリーを描くうえでは登場人物の魅の掘り下げや、新たな一面を見せることにもつながっているんです。

岩尾冒険の舞台を作り込むことは、『ポケットモンスターシリーズにおいてとても大事なことだと考えています。『ポケモン』の世界にどっぷり浸かってもらうため、必要な舞台や設定をえていくというプロセスは、とても念入りに行っています。

――メインストーリーとはあまり関係がないように思える町の人たちのちょっとした会話もたくさんあるじゃないですか。そうしたものの積み重ねが、舞台のリアリティにつながり、プレイヤーの没入感にもつながっていくのでしょうね。

ゲーム内の挨拶などにも、そうしたこだわりを取り入れました。「アローラ!」という挨拶は、ハワイに取材に行ったときに体験した、「アロハー!」から考案しています。自分は気恥ずかしくて、最初はなかなかできなかったのですけれども(笑)。でも、慣れてくるとノリノリで「アロハー!」と言えるようになって。この感覚をそのままゲームに落とし込みたいと考えまして、「アローラ!」という挨拶を入れ込むことを提案しました。

ーーあの挨拶中さんの発案だったのですね(笑)

中わかりやすいですし、覚えてもらいやすいだろうということで、同じくシナリオ担当の宮(ゲームフリーク宮稔展氏)とふたりで話し合って決めました。

ーーちなみに、挨拶のときのポーズはどうやって決められたのですか。

中 ハワイという土地には、イメージした意のものがあちこちにあるんです。それを活かしたかったのと、人と人とをつなぐイメージを持たせて“懸け”を描くポーズになりました。

ーー何となくハワイっぽい印はありましたが、あのポーズにはさらに深い意味があったのですね! さて、めて『ポケモン US・UM』を作るために定めたテーマについて教えてください。

前回のインタビュー取材でも岩尾が話していましたが、『ポケモン US・UM』では、開発チームの各セクションが“核心”をテーマに据えていました。“現地感”を高めるということは、プレイヤーの皆さんにアローラの核心へ近づく物語をより深く楽しんでもらうための取っ掛かりのようなものだったのです。

ーー人物の掘り下げ、という観点で考えると、『ポケモン サン・ムーン』とは少し違う行動を取るキャラクターも出てきますよね。とくにハウには変化が感じられたのですが。

中本作でのハウの役どころについては、初めから構想がありました。“そこ”にたどり着くためには、ハウをどう活躍させ、どう成長させるべきかをかなり考えていて。ハウは冒険の初めはとにかく“楽しみたい”という気持ちが強い人物なのですが、ポケモンと触れ合うことによって、より高みに行きたいと望む欲求が生まれてくると。その結果が、本作での彼の\最終的な役割につながるというわけです。

岩尾ハウが本作においてあの立ち位置になったのには、メインストーリーの展開とはまた別の狙いがありました。プレイヤーの皆さんと同じタイミングで初めてポケモンをもらい、同じタイミングに出て、ともに成長しつつ戦う彼は、プレイヤーの皆さんに自身の成長を感じていただくにはうってつけの存在でした。

ーーそのほかの要な人物でいうと、ルザミーネグラジオリーリエの親子関係がわりと変わったことが印的でした。

中前述のハウもそうなのですが、じつは登場人物たちの性格付けを変えているわけではないのです。では何が変わったのかというと、彼らを取り巻く状況です。ルザミーネの場合、ウルトラ調隊との出会いによって行動理念が大きく変化します。『ポケモン サン・ムーン』のルザミーネは、ウルトラホールとの関わりの中で大きなトラブルを引き起こしますが、『ポケモン US・UM』では、ウルトラ調隊から得られたウルトラホールの知識によって違う行動を取るようになる。アローラ地方危機が迫っているという事態が間近にある限り、彼女はそちらへの対処を優先します。

岩尾『ポケモン サン・ムーン』では起こるはずだったことが、本作ではウルトラ調隊がいることによって変化して、違った展開になっていくというわけです。このルザミーネの描きかたは本作のキーワードとも言える“別の可性の世界”を表す要素になっているのです。

ーーこれは『ポケモン サン・ムーン』から感じていたことですが、スカル団やそのボスであるグズマの描きかたが、これまでの『ポケットモンスターシリーズに登場した、大きな野望や思想を持つ悪の組織ボスたちとは少し違う印を受けました。

中『ポケモン サン・ムーン』、『ポケモン US・UM』の場合ですと、メインストーリー主人公と深く関わりを持つ組織として、エーテル財団スカル団のふたつがあります。“世界危機に陥れるかもしれない存在はどちらなのか?”ということを想像しながらゲームを遊んでいただくためにも、スカル団はこれまでのシリーズ作の悪の組織とは少し立ち位置を変えています。ちなみに、『ポケモン US・UM』では、ウルトラ調隊と関わったルザミーネの行動が変化していますから、そこに関わりの深いグズマも間接的に影を大きく受けて言動が変化しています。

ーーたしかに、『ポケモン US・UM』でのグズマは“男を上げる”といいますか、見せ場が増えていますよね。

中もともといい男だったんですけどね(笑)。今回は、また違ったグズマの一面が見せられたと思っています。

ーーちなみに、本作のストーリーはどういう作りかたをされているのでしょうか。ゲーム制作においてストーリーは中核の部分だと思いますが、先にすべてを完成させておくものですか。

中『ポケモン US・UM』の場合は、大の部分はあらかじめ固めて、そこから新たに追加される細かい遊びをうまくつなげていくという流れでストーリーを決めていきました。そこは、同じ『ポケモン』でも、タイトルによってやりかたはそれぞれですが。


ついに明かされる伝説のポケモンネクロズマ


――メインストーリーで描かれる大ネタとしてはネクロズマが最大の見どころかと思いますが、注された点を教えてください。

ネクロズマに関しては、アローラ地方の根に関わる存在であり、本作の核心にもっとも迫るポケモンですので、当然のことながらいちばん最初から考えていました。

岩尾日食月食ネクロズマパッケージにすることは最初から決めていました。パッケージに描くということは当然ながら本作を徴する存在ですので、一連のネクロズマに関する物語が最初にできあがりました。その印をより強めていく中で、ウルトラホールの先に行く展開や、ネクロズマに関する部分が固まっていきました。

――対峙すると非常に強ネクロズマですが、物語の中での存在感も大きいですね。

岩尾ネクロズマの描きかたは、かなり気を使ったポイントです。どうしたらその存在感が大きく打ち出せるのか、かなり考えました。そこで取り入れようと思ったのが、私たちがいる世界の各地に残る、神話や伝承をとらえるうえでの組みとしての“文化英雄”という概念です。これは、全知全の“”ではなくて、炎や農作物など、人間の生活を豊かにするものを与えてくれる特別な存在のことをします。ギリシャ神話に出てくるプロメテウスや、ポリネシアの伝承にあるマウイなどがそれにあたるのですが、文化英雄の中には、いたずら好きで二面性をもったトリックスターが少なくありません。本作におけるネクロズマもそんな文化英雄フレームワークを参考にすることで、プレイヤーの皆さんにとって強く印に残るような存在にできるだろうと考えていました。


すべき存在感を放つウルトラ調隊の面々


――存在感ということでいうと、ネクロズマとも深く関わるウルトラ調隊の面々も、独特ですよね。とくに、仲間どうしでポケモンを共有していることに驚きました。

ウルトラ調隊に持たせていた役割は、“異文化の表現”でした。アローラ地方の人々とは違うということを明確に知らせるために、それを強調する演出を入れています。

岩尾ウルトラ調隊の人たちは、別の世界からきているので、アローラ地方の人々とはまったく違う文化や違う考えかたを持っているはずなのですね。言葉すら通じない、というような設定にすることもできたのですが、ある程度はアローラ地方の人々とも会話が通じるくらいのほうが文化の違いを見せるうえではおもしろいと思いました。なかでも違いを持たせたのが、ポケモンとの関係性です。

――なるほど。そのほかにも、彼らがアローラ地方挨拶や習慣を微妙に間違って認識しているところが、異文化コミュニケーションの描きかたとしておもしろいですよね。

中彼らが頻繁に見せる、挨拶する際のジェスチャーがカクカクしているのは、全に彼らの勘違いです。あれが正しい挨拶だと思ってしまっているという(笑)

――細かい演出ですが、見ているとほっこりする場面ですよね(笑)ウルトラ調隊の面々の言動には、ちょっとかわいげを感じます。

岩尾らも外に行くと、こちらはにしているつもりでも、地元の人から見るとちょっと変な感じになっていることってあり得るじゃないですか。ダルスとシオニラがとくにそうだと思いますが、異観光地にやってきた人たちというイメージで、慣れていない感じや、かわいげを出しています。

――展開されるストーリーを考えると、本作の彼らをもっとシリアスに描くこともできたと思うのですが、あえて嬌のある描きかたにしたのはなぜなのでしょうか。

岩尾アローラ地方という、ゆったりとした時間が流れる舞台にシリアスすぎる集団が出てくると、遊んだときの印に必要以上のギャップが出るのではないかという不安がありました。もちろん、真剣な話も描きたいと思ったのですが、アローラ地方空気感になじませるうえで、バランスを考えた人物造形にしています。

――なるほど。ところで、ウルトラホールの先にある各ウルトラビースト世界の描きかたも、とても印的でした。どのようなコンセプトがあったのでしょうか。

中たとえば、あるウルトラビースト世界である“ウルトラビルディング”には、“可性の話”を盛り込んでいます。基本的に、“ポケモンは悪い存在ではない”ということを描いているのですが、プレイヤーの皆さんには、“なぜそうなったのか”が想像できるようにしてあります。々としては、ひとつひとつのウルトラビースト世界について、“1本の映画が作れるくらいしっかりした設定を盛り込みたい”という想いで制作にあたりました。

――ウルトラビースト世界には、それぞれ壮大な設定があるわけですね。

中そうですね。明かしていない部分を含めて、かなり設定を作り込んだうえで、いちばんおもしろい部分を抽出してお見せしています。各世界のあちこちにヒントを隠してありますので、大いに想像を巡らせていただければと。

――そのあたり、プレイヤーはさまざまな憶測や想像で盛り上がっていますが、一応の“正解”はあるわけですね。

中開発側として考えていた物語はありますね。ただ、そこはひとつの正解があるというよりは、皆さんが思い描くそれぞれの考察が答えということでいいとは思っています。

――メインストーリー部分以外の細部のお話もお聞きしたいのですが、マンタインサーフやアローラフォトクラブ、ヌシールといった、本作での新要素を入れ込むうえで追加されたシナリオもありますよね。

中まさにそこは、アローラ地方の新しい魅を提示するために入れ込んだ部分です。“アローラ地方にもともとある文化”として、『ポケモン サン・ムーン』でも冒険した舞台に登場させるわけなので、ストーリーの中で自然に遊んでいただけるように、かなり工夫しています。とくに、既出の登場人物たちとの絡ませかたは熟慮しまして、たとえばマンタインサーフでいうとナリヤ・オーキドサーフィンしていたりと(笑)、納得感のある作りを心掛けました。


アローラ地方の各地にヌシールを貼ったのは!?


――ちなみに、ヌシールを集める遊びを入れ込むために工夫したことは?

中ヌシールは、めぐりの習慣の中のひとつとして追加した収集要素です。めぐりをする冒険者たちのために各キャプテンたちが思い思いに貼っているという設定なのですが、じつはポータウンについては、スカル団がそれをジャマして、剥がしたものを貼り直しているという演出を加えています。

――あちこちに貼ってあるヌシールを剥がすだけでなく、ある意味儀に貼り直してくれるのがスカル団っぽいですよね(笑)

中ええ。だからポータウンのヌシールはけっこうヤケクソ気味に貼ってある。同じ場所に3つ貼ってあったりしますが、あれはスカル団なりのパンクなんですよ(笑)

――あのシールの位置にはそんな細かい裏設定(笑)。でも、各キャプテンが何を思ってその場所に貼ったのかを想像すると、ヌシール集めがより楽しくなりますね。


刷新されたキャプテンの試練に秘められた意外な事実


――キャプテンと言えば、試練の内容やそれに関わるストーリー展開も、新しいものが加わりました。

中試練はアローラ地方にしかない文化なので、よりアローラ地方を好きになってもらえるように作りました。中でも大きく変化したのは、マーマネの試練ですね。

――マーマネの試練は、遊びの要素がより強くなりましたよね。あの着想はどこから?

中発端は、自分がやりたかったという想いからきています。学生時代から乾電池がすごく大好きで、集めたりしていて……。

――えっ、乾電池!?

特性や形状が好きなんです。人それぞれ、いろいろな趣味があると思いますが、とにかく乾電池が好きで。デンヂムシというピッタリのポケモンがいたので、これはもう、今回の試練に活かすしかないなと(笑)

岩尾マーマネの試練は、ストーリー的にも中盤の、プレイヤーの皆さんが慣れてきたころなので、ちょっと『ポケモン サン・ムーン』とは別の刺を入れたいという話をしていたんです。そんな中で中が出してきたのが本作でのマーマネの試練でした。開発の要所には、開発担当者の「なんとしても、おもしろくしたい」という想いが前面に出るものですが、あの試練はとくにそのこだわりが大きく出たところですね。

――ほかのキャプテンたちの試練についても、人物の掘り下げが行われていますよね。

中大きなところですと、マツリカの試練がそれにあたります。マツリカの試練はストーリー的にキリがいいといいますか、アローラ地方危機をしのいだ後に本来の的であるめぐりに戻る起点として、大事なところなのです。そこでめぐりの集大成を表現しようと思いまして、マツリカの試練では、それぞれのキャプテンを訪れるようにしました。じつはその試練を進める中で、各キャプテンのこれまでとは別の側面が見られるようにしてあります。カキやまおとこダイチの関係性など、本作で初めて明かされるものもありますので、ぜひ楽しんでいただければと。


を再び訪れることで発生する新たなサブイベントが熱い!


――キャプテンたちの意外な一面を見られるのは、ファンとしてはうれしいポイントですよね。そのほか、プレイヤーにはなかなか気づかれにくいけど、じつは変えている、というような部分がありましたら教えてください。

キャプテンたちを含めて、登場人物の掘り下げをしているのが本作の特徴なのですが、これにはメインストーリーを追うだけでは出会えず、サブイベントで初めてわかるものがたくさんあります。意外と気づいていない方もいらっしゃると思うのですが、メインストーリー上で一度訪れた場所に再び戻ることで発生するイベントがたくさんあるのです。

――確かに、意外な場所で意外な人物のサブイベントが始まることがありますね。

中本作は、遊べば遊ぶほど味が出るスルメのようなゲームしていましたが、そのための取り組みのひとつがサブイベントの追加ですね。新規エピソード100以上入れ込んでありますが、個人的にはクチナシイベントがお気に入りです。ほかにもハウオリシティの交番で発生するイリマサブイベントなど、とにかく数が多いので、アローラ地方観光を楽しむひとつの要素として、一度通った場所を再度訪れてみるなどして探してみてください。

――100以上の追加というのは、相当なボリュームですよね。制作の労もたいへんなものだったと思いますが。

中『ポケットモンスターシリーズに収録されるサブイベントは、だいたい80100くらいなんです。『ポケモン US・UM』では、『ポケモン サン・ムーン』に収録されていたものに加えて、さらに同じくらいの分量を追加しているので、シナリオ全体のボリュームはかなり大きくなっています。

――岩尾さんは、新たなサブイベントのボリューム感やエピソードの方向性については、どのように考えられていたのでしょうか。

岩尾メインストーリールートとは別に、アローラ地方のことがもっともっと理解できるエピソードがポツポツと存在していて、それを望むプレイヤーの皆さんはより多くの情報を得られるという構造はよかったと思っています。それに、あくまでもポケモン役のゲームなので、ポケモンのことをさらに深く知ることができる要素が欲しい、という想いもずっとありまして。『ポケモン US・UM』のサブイベントには、これまであまりフォーカスされていなかったポケモンにも興味を持ってもらえるものがたくさんありますので、ぜひあちこちをしてもらえればと思います。

――ちなみに、開発段階で出たサブイベントはどのくらいの数があったのでしょうか。

中たくさんありますね。

岩尾ぜんぶ足すと、実際に収録された量の数倍になると思います(笑)

中収録されている100サブイベントは、膨大な数の中から魅的なものを選抜した結果、残った精鋭たちなんです。

――そうしたアイデアは、常日ごろ考えているのですか。

中自分がアイデアを思いつくのは、だいたい日常ワンシーンだったりします。たとえば、『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』のバトルフードコートは、自分がショッピングモールのフードコートに実際に行き、満席で座れなかったときに思いつきました。そういうふうに、日常生活で何かしらの感情を揺さぶられたものをゲームに落とし込むことが多いですね。意識的にアイデアをストックしている人もいると思いますし、そこは人それぞれだと思いますが。

――確かに、日常生活からアイデアを抽出するやりかたは、内容に生活感というかリアリティが出る気がします。

中世界観をよりおもしろく、より深くすることがサブイベントの役割だと思っていますので、その意味では日常生活からの着想はシンシーを得やすいのかもしれません。

――それで言うと、ハワイしているとアローラ地方に関するサブイベントはたくさん生まれそうですね(笑)

中まさしくその通りなんです(笑)ジムオブカントーマリエシティにあるジムの対戦施設)は自分がハワイに行ったときに日本のものを扱ったお店を見て、「あっ、自分のの文化というのは、外ではこういうふうに受容されているんだ」と思った体験を表現しています。あれはクチバシティジムモチーフにしているのですが、アローラ地方ではちょっと変貌してしまっています。

――たしかに、カントー地方にあるオリジナル版とは、少し様子が異なるところがありますよね(笑)

ゴミ箱の底のスイッチくなっていますからね(笑)

岩尾きっと、ジムオブカントーオーナーカントー地方観光に行ったとき、たまたま見たのがマチスジムだったのでしょうね。「ジムという場所には、ゴミ箱が置いてあるのか!」と思って、ゴミ箱をそのまま置いてしまったのだろうと(笑)

――そうかもしれません(笑)。それにしても、『ポケモン US・UM』に収録されているサブイベントは、表現しようとしている事柄がバラエティーに富んでいますよね。実生活で感じる微妙空気感の表現にまで挑戦しているところが興味深いです。

岩尾すべてが現実じみたものになってしまうと夢がなくなってしまうのですが、一方で、大きなファンタジーダイレクトに迫ってくると、それはそれで感情移入がしにくいときもあると思うんです。わくわくする冒険やがありつつも、もう少し身近なところから『ポケモン』の世界に入り込んでもらいたい。その入り口の役割を担っているのが、サブイベントというわけです。

――サブイベントをじっくりと楽しむことで、メインストーリーの深みや魅がさらに大きくなっていく仕掛けなのですね。

岩尾それもまた、々が『ポケモン US・UM』で掲げた“核心”というテーマを体現するひとつのやりかたなのだと考えています。

――ちなみに、さらに細かい仕様の部分でも、“じつは変えている”という要素はあるのでしょうか。

中ちょっと地味ですが、出来事の場面が暗転する際のフェードの演出を変えていたりしています。ストーリー進行をテンポアップしたいという岩尾からの要望がありまして、フェードの時間が少し短くなっているんです。

――あっ、そう言えばそうですね。

中演出自体を削っているわけではないのですが、じつは全体的にテンポアップしていて、かなり遊びやすくしたつもりです。それと、これは気付かれているか不安なのですが(笑)ストーリー中で“はい”と“いいえ”の選択をするときに、主人公がうなずくようになっているんです。

――すいません、あまりに自然すぎて言われるまで気がつきませんでした(苦笑)。

中じつは本作から新しく追加した要素なのです。“この操作キャラクターは自分である”という没入感をより高めることがこの仕様の意図なのですが、気づいていなかった方は、めて見てみていただければと。

――気づいていなくても、意識のうちにその効果が得られているのかもしれませんね。


掟破りのサプライズだったレインボーロケット団


――殿堂入り後には、これまでの『ポケットモンスターシリーズに登場した悪の組織ボスたちが集結するレインボーロケット団物語、“エピソードRR”がありますが、こちらを収録した経緯を教えていただけますか。

中まず、“主人公の乗り越える最大のとはなんだろう?”という問いから始まりました。その自問が自答に至ったのが、悪の組織の集結という答えでした。これまでに登場した悪の組織ボスたちが歴代最強の状態で集まってきて、それを乗り越える、というエピソードはまさに最大のだといえますよね。

――ド直球の大きなですね。

中今回はウルトラホールがありますし、ストーリーの中に理なく溶け込むだろうと思いました。注ポイントは、各ボスに優劣を付けず、同格になるように描くことに尽きます。それぞれに多くのファンがいるキャラクターたちですからね。全員に見せ場があって、人物の掘り下げもして、可性の物語も示唆できるように熟考を重ねました。各々がどんな世界からやってきたのか? 遊んでいただく方の想像を掻き立てる内容にできたと考えています。

――ディレクター線で、レインボーロケット団エピソードを採用しようとした理由はどのあたりにあるのでしょうか。

岩尾じつは、もともとはバトルエージェントという遊びのボスの扱いで考えていたんですよね。その方向で企画を練っていたのですが、彼らの魅をうまく引き出せる形ではうまくまとまらなくて。そこで、悪の組織ボスたちの魅をもっと引き出せる方法を模索する中で中から出てきたのが、レインボーロケット団エピソードでした。

――中さんからこのエピソードアイデアを最初に聞いたときの印はどうでしたか。

岩尾とにかく、めちゃくちゃミーハーな企画だなと(笑)はどちらかというと、ゲームの設計をシステム寄りで考えがちなので、頭の片隅にあったとしても、中の提案のような形にまとめることはできなかったと思います。ただ、最初に聞いたときにこの企画の魅は十分にわかったので、これはやるべきだろうと言いました。実際にこのエピソードを作るのは、かなり難産になりましたが……。

――このエピソードの存在が対外的に明かされたのはソフトの発売直前の時期でしたが、インパクトが大きかったですね。「いや、それはズルい!」とに出してしまいました(笑)

中それだけプレイヤーの皆さんに喜んでいただけるものにできたんだな、という手応えがあるので、とてもうれしく思いますね。

――“エピソードRR”におけるレインボーロケット団は、エーテル財団の面々とも関わりがありました。このあたり、エーテル財団ファン視点でも見どころを教えてください。

中じつは、自分がいちばん好きなキャラクターザオボーエーテル財団の支部長)なんです。“エピソードRR”では、彼が魅的に描けてよかったと思います。騒動のなかで千載一遇のチャンスが到来するにも関わらず残念なことになるのですが……それでも諦めずに1歩ずつ進む彼の姿。“すべき小悪党”ということで、彼の活躍を見守っていただければと思います。

岩尾ほかにも、“エピソードRR”にはビッケやリーリエなども登場していますし、メインストーリーでは描いていない各人物の話を盛り込めたのは、すごくよかったと思います。

――グズママーマネも大活躍でしたよね。したっぱたちの描きかたも魅的でした。

岩尾やはり彼らの活躍はもっと描きたいと、強く考えていましたからね。下っ端たちの扱いにもかなり気を使ったのですが、おもしろ味のある描きかたにできたと思います。

――ちなみに、エピソードの中で出てくるそれぞれのボスたちが存在している世界と、ゲーム中に主人公がいる世界との関係性はどのように考えればいいでしょうか。

サカキたちがいたのは、“別の可性の世界”ということになります。ネクロズマの影によって、これがゲーム中の世界とつながってしまったと。ただ、それぞれのボスが歴代最強の状態で登場しているというところからもわかる通り、“別の可性の世界”では、らが知っている世界とは別のことが起こっているのかもしれないということがおわかりいただけると思います。

――ネクロズマにより、『ポケモン サン・ムーン』と『ポケモン US・UM』で別の可性の世界が描かれたように、各ボスがやってきた世界にも、らが知らない、別の可性の出来事が起こっているというわけですね……。そんなレインボーロケット団ですが、サカキが最後にとても気になるセリフを発しています。あれはどう考えたらいいでしょうか。

中どうお答えすればいいのか(笑)。でもそこは、プレイヤーの皆さんのご想像にお任せするのがいいのかなと。あまりりすぎるのもかなと思いますので。

――めちゃくちゃ気になりますが……。最後に、これから新たに『ポケモン US・UM』をプレイするという方に向けてメッセージを。

中本作には、アローラ地方という冒険の舞台をさらに魅的に演出するために、いろいろな遊びやシナリオイベントを盛り込んでいます。駆け足で遊ぶのもいいですが、アローラ地方観光するような気持ちでゆっくりと遊んでいただけると、新たな発見があって、より深く楽しめるはずです。一部にはソフトごとに異なる出来事もありますので、ぜひどちらもスルメを味わって食べるように、じっくりと楽しんでいただければと思います。

岩尾本作は、これまで『ポケットモンスターシリーズを遊んでこなかった方でも、まったく問題なく楽しんでいただける内容になっています。この機会にぜひ触れてみてください。また、すでに遊んでいただいている方は、ぜひ、ほかのプレイヤーの皆さんといっしょに遊んでみてほしいと思います。ポケモンの交換や通信対戦はもちろんですが、本作には強ポケモンレンタルして戦うバトルエージェントという新しい遊びもあります。近くの人とでもいいですし、本作は9言に対応していて、世界中のプレイヤーの皆さんとも遊べるようになっているので、ぜひ楽しんでいただければと。日本からですと、遅めの時間帯だと外プレイヤーの皆さんとマッチングしやすいので、世界中の人たちとの一体感を味わいつつ、本作を遊び尽くしてください。





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