日本貿易振機構(JETRO)がまとめた「ジェトロ世界貿易投資報告」(2017年版)によると、2016年日本のEC(電子商取引)市場における企業別のシェアは「アマゾン」のアマゾンドット・コムが20.2%トップに立った。2位の「楽天市場」の楽天は僅差の20.1。3位は「YAHOO!ショッピング」のソフトバンク8.9。上位3社の合計で市場の約5割を占めた。

 アマゾンは先進諸で、ことごとくトップだ。米国では33.0英国26.5ドイツ40.8フランス10.7となっている。ちなみに中国ではアリババ集団が43.5断トツだ。日本では長らく楽天を追う展開だったが、ついに抜き去りトップに躍り出た。楽天は果たして逆転できるのか。

 楽天の中核であるECの大苦戦を映し出しているのが価だ。ECを手掛ける企業12月7日の終値と1月4日の始値を較すると、楽天は2.8安。ヤフーは12.1高、アパレル通販のスタートトゥデイ64.6高で、はっきりと明暗を分けた。楽天価は、10年来の最高値(2395.0円、15年4月10日)の、ほぼ半分の準にまで落ち込んでいる。

 日経平均株価がこの間、16.6高と活況に沸いているなかで、楽天マイナスに沈み、ECで“ひとり負け”の構図だ。価低迷の最大の原因は、アマゾンドット・コムとの競争化だ。

楽天ネット広告に活路をめる

 楽天17年1~9月連結決算(会計基準)は好調だ。売上収益は前年同期21増の6764億円、営業利益は59増の1201億円、純利益は64増の726億円だった。

 クレジットカード事業やネット銀行など融事業が伸びた。出資先のライドシェア大手の業績拡大による式評価益228億円を計上したことが収益を押し上げた。楽天は15年、スマートフォンを介した「相乗りサービス」を手掛けるライドシェアの先駆者、Lyft社に3億ドル出資した。

 一方、内EC事業は苦戦した。7~9月期の営業利益は193億円と7減。取扱高は8559億円と14増えたが、「楽天スーパーポイント」の費用や、個人間の売買を仲介するフリマアプリの宣伝などの投資が膨らんだ。

 ポイント拡大やフリマアプリアマゾン対策の一環だ。楽天アマゾンに対抗して、客を呼び込むべく、ポイントの上積みやフリマアプリの販売手数料を無料にしており、ECの収益悪化の原因となった。

 楽天は「楽天経済圏」戦略として、ECだけでなくクレジットカードオンライントラベルなど1人の顧客にトータルサービス提供三木浩史会長社長は「クロスセルを実現」すると謳っている。

 クロスセルとは、ある商品の購入を考えている客に、その関連商品を勧める手法だ。わかりやすい例では、ハンバーガーを注文した客にサイドメニューを勧めるといった方法がそれに当たる。ECサイトでは、利用者の購入履歴アンケートの結果を分析して、次に売り込む物品やサービスを決める。

 だが、融などの利用で得た楽天ポイントの使いみちは、提携する一部の百貨店ドラッグストアなどを除けば、楽天市場を中心とした楽天内のECに限られる。楽天市場の出店店舗数は4万5519店(179月末)。ECの魅が薄れれば、ポイントをためる動機付けとはならない。

 スマホの普及で、アパレルのスタートトゥデイ電のヨドバシカメラなど自前サイト運営する専門が台頭。モール楽天は、直販アマゾンと専門の挟撃にあって悪戦苦闘している状態だ。

 そこで楽天広告事業に活路をめ始めた。7月電通と合弁で楽天データマーケティングを設立。長年ネット広告業界で活躍してきた有馬氏を引き抜き、新会社のCEOに据えた。有馬氏はヤフー常務取締役、グーグル日本法人の代表取締役を務めた経歴がある。

 三木氏は「これまでは楽天市場を中心としたECビジネスの会社だったが、これからは会員情報を中心に据えたデータビジネスの会社になる」とぶち上げた。

 AI人工知能)や、ビッグデータ活用する楽天ビジネスモデルの変革といえば聞こえはいい。しかし、「ECビジネスアマゾン敗北した宣言」と受け止める向きも少なくない。アマゾンに抜かれた楽天反転攻勢ののりは険しい。

アマゾンは採算度外視した手法でライバル駆逐

 アマゾンは独特の経営手法を採る。先の利益を度外視して、赤字でもいいからシェアを拡大する。また、大規模な物流システムとECサイトの拡充を優先してサイト巨大化を図っている。ライバル駆逐して圧倒的なシェアを握れば、利益は後からついてくるとの考えだ。

 アマゾン本体の最終損益が黒字に転換したのは15年12月期だ。配を継続したが、そもそも多くの投資は配当など当てにしていないだろう。いかに成長するか、価が上がるかで投資しているからだ。アマゾンの経営は時価総額の最大化に価値を置く。アマゾンの時価総額は63兆円(12月8日時点)。アップルマイクロソフトに次いで世界第3位だ。

 日本に上陸したアマゾンは、採算を度外視した手法でライバル社を蹴散らして駆け上がってきた。アマゾン日本事業の16年(1~12月)売上高(ドルベース)は107.9億ドルで、前期30.6増だった。

 16年の年間為替レート(108円)で換算すると、日本事業の円ベースの売上高は前期17.5増の約1兆1653億円となる。アマゾン日本事業の売り上げには、直販のほか第三者による販売(マーチャント売り上げ)の手数料収入も含まれる。

 アマゾンは書籍や文具、各種玩具、さらに飲料・食料品や大動物の実物大模型に至るまで多種多様な商品を取り扱う。さらに、地域によっては、注文した翌日どころか、当日に商品を入手できる。ECサービス本質的な部分で楽天をしのいでいる。

 9月には日本オフィス向け通販に本格的に乗り出した。10月にはファッション分野の強化の一環として、都内に世界最大の撮影スタジオを建設する計画を明かした。

 アマゾンのような直販は、商品の仕入れコストはかかるが自社の方針通りに運営できる。取引先はエンドユーザーだ。これに対して、楽天モールは商品の仕入れコストはかからないが、あくまで商品の販売は出店している企業が行うので、自社の思う通りには運営できない。直接の取引先は、出店している企業エンドユーザーではない。

 直販アマゾンモール楽天ビジネスモデルの違いが、両社の明暗を分けたといっていいかもしれない。
(文=編集部)

楽天受け取りボックス(「Wikipedia」より)