荘厳なきと精緻に組み上げられた重厚なリズム――。

 バロック以来のヨーロッパの伝統を継承しながら、クラシカルな音楽要素をモダンサウンドに展開してみせたPFMことプレミアータ・フォルネリアマルコーニ。その思慮深くスリリングな音楽性は、ルネサンスのスピリッツを体現した、まさにイタリアならではのレガシー自由な精性に裏打ちされたもの。決してアメリカなどの“新国家”からは出てくることのない、欧州独自の深い思考と黄昏センスが特徴的だ。躍動と斜陽コントラストがニヒルにも感じられる彼らの音楽には、他からは得られないヨーロッパ特有のヘヴィネスが滲んでいる。それは自己に対する批評性に富んだ“袋小路感覚”とでも表現すればいいのか。

 1970年に結成されて以来、幾度かの休止期間を経ながらも、着実に独自の音楽性を深めているPFM。同年代のプログレッシヴ・ロックバンドと同様、彼らの音楽に対する発想やコンセプト、そして演奏技術は高い評価を受け、73年にはELP宰するレーベルからアルバムリリースフランスのアトールやシャイ・ロック、同ゴブリンやバンコ、ニュートロルスなどと共に、長年にわたって“ヨーロピアンプログレ”のムーヴメントを担ってきた。

 昨年11月リリースされた『Emotional Tattoos』を含め、これまで19作のオリジナルアルバムを発表してきた彼ら。75年に初来日し、今世紀になってからはコンスタントに来日しているPFMだが、その度ごとに新なコンセプトライブを披露し、コアファンから熱狂的な支持を受けてきた。そして、今回。ファーストセカンド演奏曲が異なるステージを展開するという、まさにファン泣かせなプログラムを引っ提げてクラブ間で演奏する贅沢なパフォーマンス。彼らにとっても、新たなキャリアが刻まれるライブに違いない。

 意外にも最新作に収められた牧歌的な旋で幕を開けたセカンドステージ。2人のドラムスキーボードによって強化されたリズムはときに変拍子を刻み、鍵盤やヴァイオリンから発せられる大胆な転調を伴った音粒は鮮やかな色彩を伴う。ルネサンス絵画のように壮大で大胆な構成のサウンドは、例えば荘厳な教会で鳴らされても違和感がない。また、息をも衝かせぬ楽曲の展開は、各人の並々ならぬ発想テクニックを饒舌にっていて、まさに面躍如たるクオリティ。秀逸な才を発揮してきたマウロ・パガーニを筆頭とする歴代メンバーの進歩的な精が、今もグループの財産であり支柱になっていることが伝わってくる。これを“伝説”と呼ばずして、何と表現したらいいのか――。

 7つのシルエットほのか光の中に浮かび上がる。そこに漂う甘美な退地中海的な開放感が滲むエキゾティシズム。一にして観客の心を鷲掴みにするシンフォニックで理知的なサウンド。そして徐々にを広げていくエモーションのうねり。太でダイナミックビートを繰り出し、ときにはポップメロディも織り交ぜながら聴き手をしっかり抱き込んでいく。会場いっぱいにゴージャスなきが溢れ、「歓喜」と呼ぶにふさわしい空気ドラマタイジングされていく。高らかに謳われる欧州の栄。そして没落――。まるで歴史を紐解いていくような、タイムトラベルにも似た感覚が立ち上っていく。これは一種のイリュージョンと言っても差し支えないだろう。

 楽器を操る7人の姿が不思議とヴィジュアル的なのは、複雑に場面展開していくサウンドメンバーの動きがシンクロしているからか。演奏の進行と共に背筋の伸びた人影と硬質な音がイメージを1つに束ねていった。

 屹立するインテリジェンスとエモーション。まさに“衝撃”と表現してもいい、圧倒的にエスタブリッシュされた80分のステージ。このコンセプチュアルパフォーマンスは今宵も東京で、そして11日には大阪で繰り広げられる。「歴史的」と言ってもいい、PFM初のビルボドライブツアー。このチャンスを逃してしまったら、後悔するのは確実なのでは?新々の“事件”を撃できる奇跡を、ぜひとも堪して欲しい。


◎PFM情報
ビルボドライブ東京
2018年1月9日(火)~10日(
1stステージ開場17:30 開演19:00
2ndステージ開場20:45 開演21:30
演詳細>

ビルボドライブ大阪
2018年1月11日(木)
1stステージ開場17:30 開演18:30
2ndステージ開場20:30 開演21:30
演詳細>


Photo:Yuma Totsuka

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。いつになく厳寒の東京。重厚で発想に富んだPFMを聴きながら、ぜひとも堪したいのがイタリアの銘醸・タウラージ。アリアニコという地葡萄品種で造られた濃厚でふくよかな味わいは、長期熟成にも耐え得るもの。バローロやバルレスコ、ブルネイロ・ディ・モンタルチーノとは異なる個性を備えた、イタリアを代表するワインだ。例えばシカイノシシなどのジビエりながら楽しむのも、この季節ならでは。濃密で強さも感じさせてくれる「厚み」と「膨らみ」は、冷え込んだ身体をホッコリさせてくれる。ゆっくりとグラスに注いで、豊かな香りとコクを満喫してみて。