日本カヌー連盟は1月9日、昨年9月石川県で開かれたスプリン日本選手権で、鈴木康大選手(32)が、五輪日本代表の座を争うライバル小松正治選手(25)の飲みものに禁止物を混入させていたと発表した。鈴木選手は、アンチドーピング規程にもとづいて、8年間の資格停止処分となった。鈴木選手は罪に問われるのだろうか。

小松選手は被害届を提出、石川県警も受理

カヌー連盟の発表によると、鈴木選手は昨年9月11日日本選手権のレース前、ライバル小松選手を陥れる意図をもって、みずから購入した禁止物(メタンジエノン)を小松選手のペットボトルの中に混入。知らずに飲んだ小松選手の尿からは、レース後に禁止物が検出された。カヌー連盟が独自調する中で、鈴木選手が事実関係を認めた。

鈴木選手はさらに、小松選手以外のほかのライバルにも、練習や競技で使用する具を盗むなどの行為を繰り返していたという。カヌー連盟は、鈴木選手の行為について「スポーツの精であるフェアプレーとは正反対の行為であり、極めて悪質と言わざるをえない」と批判している。

報道によると、石川県警は、小松選手から、禁止物の混入などについて被害届を受理している(他の選手とは示談成立)という。カヌー連盟は、捜機関の処分を待ってから、鈴木選手を最も重い「除名」処分にする方向ですすめている。

偽計業務妨害罪」が成立する可性が高い

刑事事件にくわしい落合弁護士は、鈴木選手の行為について「犯罪が成立する可性が高い」と摘する。

物混入については、被害にあった選手やカヌー連盟などの業務を偽計により妨したとして、偽計業務妨害罪が成立する可性が高いでしょう。ほかの選手の具を盗んだことについては窃盗罪が成立します。さらに、盗んだことで、被害者の活動が妨されたのであれば、ここでも偽計業務妨害罪が成立する可性があります」

カヌー連盟は「極めて悪質」としているが、鈴木選手が逮捕・起訴される可性はあるのだろうか。それとも、業界内の処分にとどまるのだろうか。

逮捕・勾留がありうるかについては、身柄を拘束して捜をすすめるだけの理由(罪隠滅の恐れなど)があるかによります。報道によると、鈴木選手は事実関係を認めて、窃盗については示談もすすめているとのことですから、身柄拘束まで至る可性は高くないでしょう。

ただ、事案の悪質さはかなり高く、起訴される可性は一定程度あると考えます。今後の選手生命が事実上断たれていることや、事実を認めて反しているといった事情が考慮されれば、執行猶予が付されるケースだと思います」

日本で、ほかの選手による物混入の違反が起きたのは初めてだということだ。「今後、こうした事案への対策が急速にすすむのではないかと思います。明正大であるべきスポーツ世界で『性悪説』に立って動かざるをえないというのは、大変残念なことです」(落合弁護士

弁護士ドットコムニュース

【取材協弁護士
落合(おちあい・ようじ)弁護士
1989年、検事に任官、東京地検公安部等に勤務し2000年退官・弁護士登録。IT企業勤務を経て現在に至る。
事務所名:岳寺前法律事務所
事務所URLhttp://d.hatena.ne.jp/yjochi/

ライバルの飲料に禁止薬物混入「犯罪の可能性が高い」、スポーツ「性善説」に衝撃