信号機のない横断歩道を渡ろうとしても、目の前を車がビュンビュンと通過して渡れない。こんな経験をしたことはないだろうか。

英国出身で日本在住が長いという男性が、朝日新聞(2017年11月9日朝刊)の投稿欄で日本の横断歩道について憂えた。「多くの外国人が訪れる東京五輪の際、横断歩道で車が止まるのが当たり前だと思っている外国人は、すぐに事故に遭ってしまうだろう」と。

男性は名城大学准教授のマーク・リバックさん。弁護士ドットコムニュースの取材に対し、こうコメントを寄せた。

「横断歩道で命を落とす子どものニュースを見聞きするたびに、自分の子どもの命を守るためにも何とかしなければと思い、(朝日新聞に)記事を投稿しました。これを機会に、みんなが横断歩道での一時停車について真剣に考えてもらえればうれしいです。そして、横断歩道での事故が少なくなり、またオリンピックで多くの外国人が来日したときに、トラブルが起きないことを願っています」

投稿をきっかけに、twitterなどのSNS上では「本当にその通り」「これからは実践します」などと、リバックさんの問題意識に賛同する声が次々と上がった。

●9割以上の車が停車しないことがJAF調査で判明

JAF(日本自動車連盟)の調査では、9割以上の車が停車していないという。一方、横断歩道で車が停まるのは「世界標準」との指摘もある。2020年の東京五輪が日に日に迫るが、少しでも事態は改善していくか。それとも「日本では信号機のない横断歩道で車は停車しない」と、訪日外国人向けにアナウンスをすることになるのか。

JAFによる調査は2017年8〜9月、全国94箇所(各都道府県2箇所ずつ)で行われた。信号機のない横断歩道を通過した10251台が対象で、このうち歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止したのは867台(8.5%)にすぎなかった。JAFは「取り締まるのは警察。JAFとしては、調査が交通マナーを改めて考えるきっかけになってほしい」(広報担当)としている。

停車しない理由は、JAFが2017年6月に行ったネットアンケート(4965人が回答)からうかがえる。信号機のない横断歩道で一時停止できない(しない)理由について複数回答で多い順に、「(1)自車が停止しても対向車が停止せず危ないから」(44.9%)、「(2)後続から車がきておらず、自車が通り過ぎれば歩行者は渡れると思うから」(41.1%)、「(3)横断歩道に歩行者がいても渡るかどうかわからないから」(38.4%)などだった。

●道交法上は明確に違反、日本政府観光局は訪日外国人向けに「注意喚起する予定なし」

そもそも交通法規はどうなっているのか。道路交通法38条は「歩行者や自転車がないことが明らかな場合を除いて、横断歩道の直前の停止位置で止まれる速度で進行しなければならず、歩行者や自転車がある場合には一時停止して、その通行を妨げてはならない」と定めている。違反すれば、3か月以下の懲役または5万円以下の罰金に処される可能性がある。

リバックさんは「日本の警察は、駐車違反や一時停止違反には厳しいけれど、横断歩道前での停車で、違反を取るところを見たところがありません」と指摘する。

警察庁交通企画課は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「横断歩道における歩行者の優先が、運転者により励行されることが最も重要」とし、歩行者の横断を妨げるのは違反であり、取り締まりを行なっていることを強調した啓発をしているなどと回答した。

日本政府観光局(JNTO)では、訪日外国人向けに多言語で電車の乗り方などについて案内しているが、横断歩道を渡る際の注意事項についてはアナウンスしていないという。「今後、注意喚起する予定もない」(担当者)としている。

(取材:弁護士ドットコムニュース記者 下山祐治)早稲田大卒。国家公務員1種試験合格(法律職)。2007年、農林水産省入省。2010年に朝日新聞社に移り、記者として経済部や富山総局、高松総局で勤務。2017年12月、弁護士ドットコム株式会社に入社。twitter : @Yuji_Shimoyama

(弁護士ドットコムニュース)

横断歩道で停止しない車が9割超、「五輪で来日した外国人が事故に遭う」英国出身の研究者が指摘