ゲームやSF映画に登場するマンドラゴラは根が人の形をしていて、引き抜くと悲鳴を上げ、その声を聞くと死んでしまうといわれる恐ろしい植物だ。意外だったのだが実在する植物である。兵庫県南あわじ市にある観光施設「淡路ファームパーク イングランドの丘」でもマンドラゴラが育てられており、昨年の12月につぼみをつけた。

マンドラゴラは地中海地方に生育している植物なので、気候などの違いから日本ではあまり花をつけない。同園ではマンドラゴラの栽培を始めてから10数年経つが、開花は初めてのことだという。お世話は大変なのだろうか? マンドラゴラを担当する後藤敦さんに話を聞いた。

―普段はバックヤードで育てているそうですね。公開して反響はいかがでしたか?

「ファンタジーゲームなどに出てくるマンドラゴラを知っている大人の男性が特に驚かれている印象です。空想上の植物と思われていて、実際に存在する植物であることはあまり知られていないからではないでしょう」(「淡路ファームパーク イングランドの丘」施設管理課 係長 後藤敦さん 以下同)




後藤さんは普段、コアラやワラビーなど同園にいる動物全般の飼育を担当している。なぜマンドラゴラを育てることになったのだろうか?

「私が担当するようになったのは、5年前です。前の担当者が辞められたのではっきりとした年数は分からないのですが、当園にある大温室にマンドラゴラの株があり、貴重な植物だからと育て始めたのが10数年前。4年前に変わった生き物を展示するイベントを行うタイミングでお借りして、その後譲り受けた形です」

―珍しい植物ですし、やはりマンドラゴラの栽培は難しいのでしょうか?

「比較的丈夫な植物で、冬も5℃を切らなければ越冬できます。気をつけていることといえば…乾燥した地域に生息する植物なので、水の上げすぎには注意しています」

―えっ!? それだけですか? ではメインでされている動物のお世話と植物のお世話。後藤さんとしては、何か気持ちの違いなどはあったりしますか?

「動物のお世話は毎日ですが、マンドラゴラは気が向いた時に水をやればいいので、少し勝手が違いますね。油断して枯らしてしまわないように気をつけています」

1年に一度、担当者をやきもきさせる変化とは


こうして後藤さんの手をあまり煩わせないマンドラゴラも、心配をかける時期があるという。

「マンドラゴラには初夏の6月あたりに休眠期があって、地面から上にある葉が全部落ち地上に何もない状態になります。その時は茎もありません。根の先端が見えることがあるくらいでしょうか。この時は見た目で生きているのか死んでいるのかが分からないため、今後また生えてくるのか非常に不安ですね」

ちなみに、ファンタジーゲームなどに登場するマンドラゴラの根は人の形をしているが、同園のマンドラゴラは人型ではない。とはいえ茎が二股になりやすい種類で、人型に見えなくもない姿に育つケースもあるそうだ。

こうした不気味なイメージをまとうマンドラゴラも、花は愛らしい。

「可愛い花なのでイメージとのギャップも楽しんでください。栽培を始めて10数年経ち初めての開花が見られて嬉しい気持ちでした。ぜひ皆さんにも見ていただきたいです」

マンドラゴラの花の見頃は1月20日頃までだそうだ。



(石水典子)
2013年ごろ撮影されたマンドラゴラの根