かねてより海上自衛隊のいずも型ヘリ護衛艦は、いざとなれば改修し、F-35B戦闘機の艦載が可能との見方がありました。しかしこれが非現実的であるという理由がふたつあります。

日本政府、空母の保持を検討か?

2017年12月26日(火)に一部メディアが報じたところによると、2019年度に策定される我が国の次期中期防衛力整備計画において、日本政府はヘリコプター搭載護衛艦「いずも型」に対し垂直離着陸戦闘機F-35B「ライトニングII」の艦載を視野にいれ検討中であるとのことです。

現在2隻が就役中の「いずも型」はヘリ空母としてはかなり大型の部類に入るため、かねてより戦闘機の搭載は、物理的には可能であると見られていました。もしこの報道が事実ならば、おそらく8~12機程度のF-35Bの搭載を見込んでいるものと推測されます。

しかしながら本件に関しての実現性は、現在のところかなり不透明です。

第一に憲法9条との兼ね合いです。空母搭載の艦上戦闘機の主な役割は「本国から離れた地点への戦力投射(爆撃)」であり、政府は長年にわたりこうした能力をもつ「攻撃型空母」の保有は違憲であるという見解を繰り返し行ってきました。

離島防衛等の用途に限定すれば合憲であるとみなすことも可能かもしれませんが、そうしてしまうと、そもそもの「本国から離れた地点への戦力投射」という空母と艦上戦闘機の意義が完全に失われてしまいます。

艦載型F-35B導入が非現実的なもうひとつの理由

第二に垂直離着陸型であるF-35Bは、航空自衛隊への導入が始まっている通常離着陸型F-35Aよりも搭載燃料が少なく航続距離に劣り、また機動性に大きな影響を与えるG制限もF-35Aの9Gに対して7.3Gと小さい上に、兵装搭載量も劣ります。さらに価格も高く第10期低率初期生産(LRIP10)におけるF-35Aの調達コストは9430万ドル(約107億円、2017年12月27日現在)、F-35Bは1億2240万ドル(約139億円、同)となっており、当然これまでになかった、艦上戦闘機という機種を運用するためのパイロットや整備士などの育成費用ほかも必要です。

空母とは搭載航空機に戦力のほとんどすべてを依存した、たんなる「航空機のいれもの」にすぎません。そして離島防衛ならばはるかに大きな「いれもの」である陸上の飛行場が使えますし、尖閣諸島程度ならば那覇基地(沖縄県)はもちろんのこと、空中給油機を使うことで九州の基地からF-35Aを発進させても十分に届きます。

つまり、あえて性能に劣り高価なF-35Bを「いずも型」にわずか10機前後搭載するくらいならば、同じ予算でF-35Aまたは空中給油機を増やした方が、はるかに戦力の向上を見込むことができます。

以上のように「いずも型」への艦載を前提としたF-35Bの導入はかなり非合理的で、かえって防衛力を損ないかねない選択であるといえます。ゆえに実際に導入のための予算がつくかどうかはわかりません。

半世紀以上浮沈を繰り返す空母導入議論の背景

海上自衛隊はこれまでも、何度か空母の導入を検討する機会がありました。古くは海上自衛隊の前身である海上警備隊創設期の1951(昭和26)年からアメリカ製の「コメンスメント・ベイ級」と思われる護衛空母の導入を検討しており、その後もたびたび、空母保有論が浮き上がっては沈んでを繰り返していました。

1970年代以降は、イギリスにおいて就役したばかりの画期的な垂直離着陸戦闘機、ホーカー・シドレー「ハリアー」と空母がセットで海上自衛隊への導入を語られるようになります。しかしこれも「こんごう型」イージス護衛艦の導入などによって潰れています。

「守るも攻むるもくろがねの 浮かべる城ぞ頼みなる」

軍艦行進曲でうたわれる「頼みなる城」とは、かつて巨大な戦艦でした。現在では戦艦の代わりに空母が「頼みなる城」となっています。

ヘリコプターの運用に限られるものの「いずも型」ないしやや小型の「ひゅうが型」によって城主となった海上自衛隊が、次にこれに戦闘機を載せようと考えたとしても当然の成り行きであると言えるかもしれません。

ですが上記のように艦上戦闘機とは本国から遠く離れた場所で使用するための装備ですから、いま日本の防衛においてこれに大金を投入するだけの価値があるのかどうかは、かなり厳しいと言わざるをえません。

【写真】最後の国産空母「葛城」

海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦いずも型1番艦「いずも」(画像:海上自衛隊)。