【松井大輔インタビュー|Part 1】元日本代表のテクニシャンが語る、乾の“技術論”

 類は友を呼ぶならぬ、テクニシャンはテクニシャンを認める――。そんな“サッカー諺”を作りたくなるくらいの逸話を明かしてくれたのは、元日本代表MF松井大輔だ。

 現在はポーランドのオードラ・オポーレでプレーする36歳の持ち味と言えば、トリッキーなテクニックとドリブルだ。そんな松井にとってかねてより気になる存在なのが、リーガ・エスパニョーラのエイバルで輝きを放つMF乾貴士なのだという。日本サッカー史に残るテクニシャンに、現日本代表屈指の“スキルマスター”について語ってもらった。

 今回インタビューに応じてくれた松井に種々雑多な質問を投げかけたが、最も興味深いテーマとなったのは「サッカーファンに今、日本で最も見てほしいと思うドリブラーは誰ですか?」という質問だ。松井は間髪入れず、このように切り出してくれた。

「乾かな、やっぱりそうでしょう! スペインでやっている自信が一番大きいと思います」

 2017年、乾は鮮烈なインパクトを残した。エイバル在籍2シーズン目の2016-17シーズン最終節で、バルセロナ相手に鮮やかな2ゴールを叩き込み、敵地カンプ・ノウを凍りつかせた。迎えた今シーズンも2列目左サイドのレギュラーの座を渡さず、第17節ジローナ戦での2ゴールなどUEFAヨーロッパリーグ圏内のチームで存在感を放っている。

 またバヒド・ハリルホジッチ監督率いる日本代表でも左サイドのアタッカーを原口元気(ヘルタ)と争い、ロシアの地での活躍を期待されている一人だ。

 

「プレーを見てあの感覚は本当にいいな、と」

 インタビュー中、乾の話題が挙がった際に関係者が「ホントに昔から“乾推し”だよね」と口にするほど、松井は乾のプレーぶりに注目していたという。そのきっかけはいつだったのか。

「一回、代表で一緒にやったんですよ。確かザック(アルベルト・ザッケローニ元監督)の時かな。当時ちょっと喋ったのは覚えているし、プレーを目にして、とにかくめっちゃ速いなという印象が強かったんです」

 当時感じた“めっちゃ速い”という印象――。乾と言えば、リズミカルなドリブル突破が最大のストロングポイントだ。その素早さはもちろんだが、松井はもう一つ違うポイントにも“速さ”を感じていたのだという。

「当時のトレーニングなどで感じたのは、単純な走りだけじゃなくて、パスを出した後に抜け出していく、その動きがものすごく速いっていうイメージだった。これは想像なんですけど、きっとセレッソにいた頃に、パス&ゴーを(香川)真司とかとやっていたからこそだと思うんだよね。あの感覚は本当にいいな、と」

 08年から10年にかけて、Jリーグで鮮烈な印象を残したのはセレッソ大阪の華麗なアタックだった。若手育成に定評があるレヴィー・クルピ監督(ガンバ大阪新監督)の下で攻撃の中心を担っていたのは、松井も触れた通り、乾と香川真司(ドルトムント)のコンビネーションだったのは記憶に新しいだろう。彼らがC大阪時代に築き上げた土台が、現在のプレースタイルに生きていると見ている。

 

もし今、一緒にプレーしたら…

 ちなみに、こんなことも聞いてみた。「乾選手と松井選手がチームメイトとしてプレーしたら、こんなコンビネーションができるというイメージはありますか?」と。

「(パスを受ける)壁になることはできますけどね。ボールを当ててもらって、トントーンとボールを出して。“おう、行ってこい!”みたいな。年取った発言かな(笑)」

 もちろん、この表現はユーモアを交えたものだろう。松井のキャリアで強いインパクトを残したのは8年前、2010年の南アフリカ・ワールドカップ(W杯)だ。松井はサイドアタッカーとして守備の役割をこなしつつ、チャンスメーカーとしても機能。本田圭佑(パチューカ)の決勝ゴールをアシストした、グループリーグ初戦カメルーン戦(1-0)での獅子奮迅の働きぶりを思い出せば明らかだ。

 その時を知るからこそ、ボールを奪ってからの攻撃が生命線となる現代表について「一人でボールを持ってキープできたり、時間を作れる選手が必要になってくると思います」ともポイントを挙げている。半年後に迫るロシアW杯、攻撃のキーマンとして乾が躍動するのか。松井も注目するテクニシャンから、目を離してはならない。

【了】

茂野聡士●文 text by Satoshi Shigeno

荒川祐史、ゲッティイメージズ●写真 photo by Yuji Arakawa , Getty Images

 

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