とあるファッション誌のモデルオーディション会場。煌びやかなハイヒールを履きこなした美女たちの中に、ひとりだけ、ぺたんこのスニーカーを履いた少女がいた。

中条あやみ、当時はまだ13歳。オーディションのきっかけは、よくあるスカウトだった。「学校の友だちに自慢できるかも」という軽い気持ちで受けたそのオーディション会場で、彼女は愕然とする。

「すごく綺麗なモデルさんがたくさんいて、みんな高いヒールを履いているのに、私だけ古着屋で買ったスニーカーを履いていたんです。あ、場違いだ、って気づきました」

絶対に受からないと思っていた。だけどスニーカーの彼女が秘めていた原石の輝きを、審査員たちは見抜いたのだろう。厳しい選考を勝ち進み、最終モデル候補20人のうちのひとりとして誌面に載るまでに至った。たちまち学校中の噂になり、友だちにも「いつの間に受けてたの!?」と驚かれたという。

「ここで落ちたらただの公開処刑になる、と思って。せっかく最終選考まで進んだなら、絶対に受かりたいという気持ちに変わりました」

結果はグランプリ。新川優愛、橋爪愛、坂東希と並んで、見事モデルデビューを果たした。新しい世界に足を踏み入れた彼女を待っていたのは、キラキラしたモデルの仕事と、大阪と東京を往復する日々。

キャリーケースを持ち運ばなくてもいい生活を夢見て、上京。

「最初のころは、仕事のために大阪から東京に通っていました。1~2週間分の服をキャリーケースにまとめて持ち運んでいたので、エスカレーターがない場所では階段を上り下りするのも大変で。早く上京して、お仕事をがんばって、いい家に住んで、キャリーケースを持って移動しなくてもいい生活を送りたいと思っていました」

それから本格的に上京した彼女は、決意を新たにする。今までは学生だったから許されていたことが、これからは許されない。まわりの人たちも「あなたはもう上京しているんだからね」という態度で接してくるようになり、プロの自覚を持って芸能の仕事に向き合うようになった。

「特に思い入れがあるのは、映画『チア☆ダン』と『覆面系ノイズ』への出演ですね。どちらもすごく厳しい現場だったんですけど、共演者は同世代の子たちが多くて。みんなそれぞれすごくいいところを持っていたので、勉強させてもらいました」

少しずつ自分の力で歩けるようになってきた。

役者とモデル、どちらの仕事も絶対に手を抜かない中条あやみ。映画『覆面系ノイズ』では、1年間訓練を積んで苦手な「歌」を克服し、初めての主役を演じきった。そしてモデルの仕事では、学生時代のオーディションで受かった雑誌を去年卒業。もうひとつ上の年代のお姉さん向け雑誌に専属モデルとして抜擢された。

「少しずつ、自分の力で歩けるようになってきました。地に足をつけて、プロとしてがんばらなきゃいけない。これからの20代、努力も忘れず、いろんなことにチャレンジしたいです。そうすることで、ちゃんと結果はついてくると思うので」

そう言って彼女は、ピンクレッドの唇で微笑んだ。ぺたんこのスニーカーで立ち尽くす中条あやみはもういない。そこまでヒールは高くなくとも、きちんと磨かれたパンプスを履いて東京の街を歩く彼女が、これからどんな女性に成長するのか。このシンデレラストーリーの続きは、また今度。

(編集・文:高橋ちさと/マイナビウーマン編集部、撮影:前田立)

スニーカーを履いたシンデレラ。中条あやみインタビュー