2月4日に放送された『99.9-刑事専門弁護士-SEASONII』(TBS系)の第4話。今シリーズのテーマを「弁護士」と「裁判官」の攻防と考えると、谷間の回だったと言える。

今回、斑目法律事務所と対峙したのは検事でも裁判官でもなく、“三谷幸喜”であった。

第4話あらすじ
斑目法律事務所に岩村梢(有森也実)が刑事事件の弁護で相談にやってきた。被疑者は、梢の夫で工場の社長・岩村直樹(ユリオカ超特Q)。
直樹は、取引先のタナハシ機械製作所専務・棚橋幸次郎を殺害後に自殺。事件は被疑者死亡のまま書類送検され、不起訴処分になっていた。しかし梢はその日に届いたメールから直樹は絶対に殺人を犯してないと確信しており、何としても無実を立証してほしいと依頼してきた。

被疑者死亡の場合、裁判が開かれないからこれ以上の弁護は無理だと一度は依頼を断った佐田篤弘(香川照之)だったが、直樹がエンジンに関する特許を個人で持っており、莫大な価値があったことに気付くや態度が一変。梢の依頼を正式に引き受けることにする。

梢は、幸次郎の兄でタナハシ機械製作所の社長・政一郎(迫田孝也)から3億円の損害賠償請求をされていた。払えるはずのない大金を請求し、相続を放棄させることで特許を手に入れようと政一郎は目論んでいる。
「こんな手の込んだやり方、素人にはできないんだよ! で、俺がちょっと調べたら、こいつがバックにいたんだよ」(佐田)

政一郎の弁護士は、森本貴(近藤芳正)。森本は民事でやり手の弁護士で、佐田と面識はないが、お互い名前を知っているライバル関係だ。

三谷幸喜を意識しまくり
近藤芳正と言えば、三谷ドラマの常連。SEASONIと同時期に放送されていた『グッドパートナー 無敵の弁護士』(テレビ朝日系)では弁護士役を演じていた。

また、直樹が飛び降りたビル付近で深山大翔(松本潤)は防犯カメラを発見。当日の映像を提供してもらえるよう尾崎舞子(木村文乃)が訪れたのは「株式会社三谷工機」である。即ち、三谷幸喜。
社内に掲示されたポスターには「ラヂオ、いえ、ホテル、街道、会議室…あなたの生活に優しくステキなマジックをかける工業機械を目指して!」と書かれている。『ラヂオの時間』、『みんなのいえ』、『THE 有頂天ホテル』、『ギャラクシー街道』、『清須会議』、『ステキな金縛り』、『ザ・マジックアワー』をもじっていることは明らかだ。

この“三谷意識しまくり”な状況の中、香川照之vs近藤芳正という構図でストーリーは進んでいく。

見得を切る「市川中車」こと香川照之
佐田はタナハシ機械製作所の下請け「アダチ工業」へ出向き、足立靖男(塚地武雅)から真相を聞き出す。近年、タナハシ機械製作所は売上が落ち込んでおり、そんななか幸次郎は直樹と新会社を立ち上げようと計画していた。それに政一郎は憤慨していたのだ。
「兄の棚橋政一郎さんには弟と岩村さん、この両方を殺す強い動機があったんだよ。特許を開発した岩村さんに出資して、一緒に仕事しようとしたんだ。その弟の裏切りに気が付いて、兄が憤慨して弟を殺害した。そして、その罪を岩村さんに着せようとして、自殺に見せかけて殺したってことだろ? 挙句、特許まで自分のものにしようとしたなんて、虫がいいにも程があるよ!」(佐田)

佐田はこの推測を主張するため、証人として足立を出廷させた。しかし、足立は証言を翻す。
「岩村さんは契約を切られることを悩んでました。幸次郎さんと二人で会社を立ち上げるなんて話、聞いたこともありません」(足立)
「突然契約を切られた直樹の衝動的な殺害」という森本側の主張を後押しした格好だ。

閉廷後、佐田は森本に詰め寄った。
佐田 うちの証人に何をしたんだ?
森本 え? 何の話でしょう。
佐田 手を回したな?
森本 あなたと一緒にしないでいただきたい。(佐田の肩を押す)
佐田 痛い!

佐田らは改めて、自宅~ビル(自殺現場)間の直樹の目撃証言を探すことにする。それがあれば、直樹は工場(幸次郎殺害現場)→ビルという経路を辿っておらず、無実を証明できるからだ。
そんな彼らの前に、森本が現れた。

森本 佐田先生、まさかこんな所で目撃者探しですか?
佐田 そうですよ。
森本 岩村さんは工場からビルに向かったはずですが。
佐田 ……森本先生! 岩村さんがね、自宅からビルに向かう姿を見たという目撃者を見つけたんですよ。今度の法廷で証人として呼ぶことになるでしょうねぇ~。

ウソだ。目撃者は見つからずじまいである。
「さすが、佐田先生。いぃ~見得の切り方でした!」(深山)
「市川中車」の名で歌舞伎役者としても活動する香川へ、深山から強烈なイジリが入った。

『99.9』と三谷作品のコラボか?
一方の森本は、直樹が工場からビルに向かった間の目撃者を立てるよう政一郎に要請する。
「別に本当に見たかどうかは必要じゃありません。法廷で証言してくれる人がいればいいんです」(森本)

法廷に登場したのは、またしても足立だ。
「岩村さんは棚橋幸次郎さんを殺害後、工場からビルに向かっていたんだと思います」(足立)
この男、政一郎にいいように使われ過ぎ……。

しかし、足立は目撃していない。当日、直樹はアイボリーのセーターを着ていたと足立は証言するが、防犯カメラにはコートを羽織る直樹の姿が残っている。
矛盾が明らかになり動揺する足立に、深山は「真犯人はあなただ!」と指を差す。その姿は、まるでゲーム『逆転裁判』のよう!

佳境に差し掛かってきたぞ。ここで、佐田が割って入る。
「おい! ちょっと、この後俺がやるからさ。最後は俺がやるって言ってる。対決してんじゃん、あいつ(森本)と。だからさ、お願いしてんじゃん」

クライマックスで、尋問は佐田へ交代。さらに追い詰められた足立は、ついに白状した。
「違う、本当は岩村なんか見てないんだ。ウソの証言をするように私は頼まれたんだ!」(足立)
ウソの証言を頼んだのは政一郎だ。彼は法廷から逃走したが、すぐに捕まった。

重要人物不在の法廷で、佐田は森本に詰め寄る。
「でっち上げの証言を裁判に持ち込んだのは、君の依頼人だったようだな。(森本の弁護士バッジを指差し)さぞかし、この良心が痛むだろうな。グゥの音も出ないとはこのことか!」(佐田)
佐田の完全勝利だ。

勧善懲悪の図式がわかりやすく、痛快なストーリー展開が楽しめた第4話。多すぎな小ネタをうるさく感じることもあるが、今回は小ネタと本筋が上手くリンクしていた印象。
ただ、野暮なツッコミを一つだけ。「別に本当に見たかどうかは必要じゃありません」と弁護士が口にするのはいかがなものか? 偽証罪を推奨するかのような蛮行だ。せっかく、スカッとするエンディングが用意されているのだから、“悪”の側のリアリティにも留意していただきたい。

最後に、三谷作品を代表する形でゲスト出演した近藤に拍手を送ろう。『釣りバカ日誌』に島耕作が、『会長 島耕作』に浜崎伝助が登場したコラボを見るようであった。
(寺西ジャジューカ)

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イラスト/まつもとりえこ