10日と11日の2日間、千葉県・幕張メッセにて開催された、ゲームファンとゲーム大会の祭典『闘会議2018』。例年、ゲームファンを中心に盛り上がりを見せる本イベントだが、今年はプロゲーマーが誕生する日本初のイベントということもあり、例年よりも高い注目度の元で実施された。本イベントが、日本の“eスポーツ”の歴史において画期的だったとされる理由、そして話題となっているeスポーツの五輪種目化への現実味と課題を考える。

【写真】見てビックリ!? ラスベガスの「eスポーツ」大会は“賞金”も“規模”も桁違い

■海外のeスポーツ大会の優勝賞金は11億円! 1億円を稼ぐプロゲーマーも

 そもそもeスポーツとはエレクトロニック・スポーツの略で、コンピューターゲームやテレビゲームで行われる対戦型ゲーム競技のことを指す。欧米を中心に賞金のかかったイベントが多数開催され、プロチームやプロリーグも発足。今や、賞金やスポンサーとの契約金で1億円超えのトッププロゲーマ-も少なくない。

 実際、世界に目を向けるとその規模の大きさに驚かされる。マルチオンライン(MOBA)で最も流行っているゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』のプレイヤー人口は推定7500万人。シューティングゲーム(FPS)『オーバーウォッチ』は3000万人。当然、海外で開催される大会規模は段違いで、昨年アメリカで開催された人気ゲーム『DOTA2』の大会では賞金総額が26億円。優勝賞金は約11億円にのぼった。

 こうした人気に企業が目を向けないわけもなく、世界的人気を誇るサッカーゲーム『FIFA』の場合、世界大会で優勝すると実際の「バロンドール式典」にて表彰され、16万ドルが授与。あのメッシやクリロナと肩を並べて表彰されるのだ。また、ドイツ・ブンデスリーガやプレミアリーグのビッグクラブが自前の“eスポーツ部門”を抱え始めたりと、eスポーツが持つ“若年層へのマーケティング効果”を狙った動きは拡大の一途を辿っている。

■日本では賞金がたったの10万円!? 日本人プロゲーマーは“海外へ出稼ぎ”に

 一方、世界のゲーム市場規模で中国、アメリカに次いで第3位の日本はeスポーツ分野において世界から取り残されている現状がある。いくつかの課題がある中で、その大きな要因のひとつとして挙げられているのが“賞金問題”だ。

 世界の主要大会で20億円以上の賞金が出るのに対して、日本で開催された場合、賞金が“10万円”しか出せないのである。それはなぜかと言うと、日本でeスポーツの大会が開催された場合、主に「景品表示法」「風俗営業法」「賭博罪」の3つの法律が関係し、大会賞金が低く抑えられてしまうのだ。

 そこで、一般社団法人デジタルメディア協会(AMD)はこれらの問題解決を図るため、業界内はもとより総務省など関係各省庁と連携。『闘会議2018』では景品表示法をはじめとした法律の課題をクリアし、賞金1,000万円の大会を実現させたのだ。

 これにより、“プロ”にとってのステータスである、高額の賞金制大会の道筋を『闘会議』が作った点で本大会の意義は大きい。これまで、プロゲーマーにとって日本は魅力的な戦場となりえず、多くの日本人プロゲーマーは“海外への出稼ぎ”を余儀なくされていた。当然、渡航費の面などを考えると、一部の有力者以外がプロゲーマーとして活躍するには厳しい現状だった。こうした点にプロゲーマーの先駆者・板橋ザンギエフ(板ザン)氏は「韓国では子どものなりたい職業の1位がプロゲーマーなんです。日本でもプロゲーマーが夢のある職業になってほしい」と語る。

 実際、板ザン氏は10日に行われた『ストリートファイターV アーケードエディション 闘会議GP大会』で、招待されたプロ選手20名の中から勝ち上がり見事優勝。優勝賞金200万円を獲得。プロゲーマーに“夢”があることを自ら示した。

■2024年パリ五輪で正式種目化が検討、世界の潮流に日本もいよいよ始動

 今回の『闘会議』にまつわるトピックとして、国内の各eスポーツ団体がひとつに統合され、日本eスポーツ連合(JeSU)が誕生したこと。そしてJeSUが公認するゲームタイトルで15人のプロを認定したことがある(プロライセンス発行総数は46人8チームに)。これはどちらも、eスポーツの“五輪種目化”実現を目指す世界の潮流に乗り遅れないための動きでもある。

 「ゲームが五輪種目になるわけない」と笑う人もいるだろう。しかし現実はまったく逆の流れとなっている。アジア五輪評議会は、2022年に開催される『アジア競技大会』でeスポーツを正式なメダル種目とすることを発表。さらには、2024年のパリ五輪でも正式種目化が検討されている。

 こうした世界の動きに対し、2022年の「アジア競技大会」に選手を送り込むためには、eスポーツの統一団体を作る必要があったのだ。つまり、『闘会議』で見られたeスポーツのうねりは、将来実現が予想される“五輪種目化”を見据えた第一歩と言える。

■eスポーツの認知や国民の理解が必須、険しいメジャー化への道

 “eスポーツ元年”と呼ぶに相応しい改革が矢継ぎ早に続く中、当然課題もある。まず、メディアへの打ち出しが弱い点があげられる。プロゲーマーという職種の説明は? プロライセンスの条件は? こうした基本的なことを理解している人が国民の中にどれだけいるだろうか。

 以前からプロゲーマーとして活躍する板ザン氏も、「ゲーマーという言葉自体、まだ“悪い”イメージがある」と語る。そして今後、eスポーツがどう発展していくべきかについて「自分たちも探り探りでやっている」と本音を吐露。つまり、eスポーツはまだ若い競技であるため、誰もが手探りの状態なのは否めない。

 とは言え、今回の『闘会議』で何が一番変わったかと板ザン氏に聞くと、「メディアの数が圧倒的に増えた」と率直に語ってくれた。「それこそ、以前はゲームの大会をやってもメディアなんて全く取材に来てくれなかった」と振り返る。

 こうして注目を集める中で、JeSUはどうメディア戦略を立てるのか。かつてマイナースポーツだったサッカーがプロスポーツ化した際に、KING KAZUこと三浦知良選手を前面に押し出したように、若いファンを誘引する“スター”を産み出すことができるのか。また、プロゲーマーの世界に25歳限界説もある中で、プロゲーマーたちの引退後のセカンドキャリアをどうするのかなど、環境整備も急がなければならない。

 eスポーツの五輪正式種目化を見据え、競技大会の普及、選手の育成などを急ピッチで進めるJeSU。今後も多くの若者たちにプロライセンスが発行されていく中で、ゲーム業界がプロゲーマーと共にどう成長していくのか、その成長過程を見守りたい。
『闘会議2018』で200万の賞金を手にしたプロゲーマー・板橋ザンギエフ氏 (C)oricon ME inc.