【クアラルンプール時事】北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏が2017年2月にマレーシアで殺害されてから13日で1年。クアラルンプール近郊の高等裁判所では、実行犯として殺人罪で起訴された女2人の公判が同年10月から続いている。しかし、両被告は無罪を主張。犯行を指示したとされる北朝鮮人容疑者らは既に帰国したとみられ、真相解明の見通しは立っていない。

 女2人はベトナム人のドアン・ティ・フォン被告とインドネシア人のシティ・アイシャ被告。

 起訴状などによると、両被告は昨年2月13日、北朝鮮国籍の容疑者4人と共謀し、クアラルンプール国際空港で正男氏の顔に液体を塗り付けて殺害したとされる。遺体からは猛毒の神経剤VXが検出された。殺人罪で有罪になると、死刑が適用される。

 両被告は「いたずら動画に出演すると思っていた」と殺意を否認。アイシャ被告の弁護人は、同被告が犯行前にも、事件の重要参考人の北朝鮮人リ・ジウ氏から指示を受けて、クアラルンプールのショッピングモールなどでいたずらを行い、報酬を受け取っていたと説明。「彼女には(正男氏殺害に関して)目的がない」と無実を訴える。

 これに対し、検察側は、両被告が犯行直後に手を洗うためにトイレに向かったことなどを追及。殺意の立証に向け、警察関係者から「ドアン被告は(猛毒と知っていて)犯行後にやらなければいけないことを理解していたようだった」などの証言を引き出している。

 ただ、北朝鮮人容疑者らを訴追できていないため、これまでの審理では殺害の動機や北朝鮮の国家的関与の有無といった事件の核心は何も明らかになっていない。黒幕不在で進む裁判に、アイシャ被告の弁護人は9日、記者団に「事件に北朝鮮が関与していると明確に言えるだろう」と訴えつつ、裁判で必要な捜査をするよう求めても応じない捜査当局に「本当に失望している」といらだちを見せた。 

〔写真説明〕北朝鮮の金正男氏とみられる男性=2001年5月4日、千葉・成田空港

北朝鮮の金正男氏とみられる男性=2001年5月4日、千葉・成田空港