今や、公式ライバルのAKB48をしのぐ勢いのある乃木坂46だが、テレビドラマにも乃木坂旋風が押し寄せつつある。

 現在、与田祐希は『モブサイコ100』、1月末に次回のシングルをもってグループを卒業することを発表した生駒里奈は『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』、そして、西野七瀬は『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』に出演している。どれも、テレビ東京系の深夜ドラマだというのが面白い。

 かつてAKB48のメンバーが『マジすか学園』シリーズ(テレビ東京/日本テレビ系)に出演したことで女優としての活路を切り開いていったように、今後は乃木坂のアイドルたちが女優として躍進していくことは間違いないだろう。

 中でも注目は、西野七瀬だ。

 彼女が出演している『電影少女』は土曜深夜0時20分から放送されているSF仕立ての恋愛ドラマだ。

 物語は海外で暮らす絵本作家の叔父の空き家で一人暮らしを始めた高校生・弄内翔(野村周平)が、古いVHSのビデオを見つけるところから始まる。

 ビデオの中にはビデオガールの天野アイ(西野七瀬)が封印されていた。実体化したアイは、3カ月だけ生命を獲得し、再生した男の願いを叶えてくれる理想の女の子になるはずだった。しかし、ビデオデッキが壊れていたせいで、性格や設定に不具合が生じてしまい、料理が下手で口調は乱暴という初期設定とは真逆の女の子になってしまう。

 本作は桂正和が1989~92年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していた漫画『電影少女』の実写映像化作品だ。物語の舞台は2018年の現代で、原作漫画の続編となっている。

 ビデオガールのアイは年を取らない。漫画版の主人公で翔の叔父にあたる弄内洋太(戸次重幸)はすでに中年男性となっていて、アイには洋太の記憶がないというのは泣かせるが、そのことによって物語は、ちゃんと現代のものとなっている。

 それにしても驚いたのは、天野アイのビジュアルである。

 もともと桂正和の描く女の子は、アイドルの水着グラビアを見ているかのようなリアルな肉体描写と、漫画やアニメの記号化されたキャラクターの持つかわいらしさが共存していたのだが、ドラマ版『電影少女』は漫画版の感覚を実写に落とし込むことに完璧に成功している。

 自分のことをオレと言い、SFチックな衣装を着ている天野アイは、人間の姿をしているが人間ではないビデオガール。文字通り漫画の世界から現実に現れたような女の子だ。

 だから普通の女の子とは考え方も違い、微妙におっさんくさいところもある。でも気持ちはピュアで優しいという、チグハグなところがまた、チャーミングである。

 漫画版にあったエッチな描写は控えめだが、何気ないシーンで見せる華奢でスラッと伸びた手足からは健康な色気を感じる。

 とにかく、天野アイを演じる西野をかわいく見せようという作り手のこだわりが随所に炸裂しており、まるで動く写真集のようだ。

 特にエンドロールで流れるスチール写真が素晴らしい。

 映像は静止画で西野の映像は止まっているのだが、水や湯気といった周囲のものは動いているという不思議なものとなっている。これは時間の止まった少女としてのアイを見せる上で見事なアプローチと言えよう。監督の関和亮はPerfumeのMVを通して女の子の身体を人工的なアンドロイドのように見せてきたのだが、本作でも生身の女の子を漫画やアニメのキャラクターのように見せる手法は見事に生きている。

 そして、西野七瀬も天野アイに完璧になりきっている。

 最初に西野が天野アイを演じると知った時は正直、イメージと合わないなぁと思った。

 同じ乃木坂46ならショートカットで少年性も見え隠れして、本人も漫画好きの生駒里奈の方がいいのではないかと思った。しかし本作のために髪を切って登場した西野七瀬を見た時は驚いた。そこには、本物の天野アイがいると思った。

 女優としては野島伸司脚本のドラマ『49』(日本テレビ系)などに出演している西野だが、『電影少女』以前で、鮮烈な印象が残っているのは、映画『溺れるナイフ』などで知られる山戸結希監督が撮った西野のソロ曲のMV「ごめんね ずっと…」だ。

 このMVは、アイドルとして活躍する西野七瀬と、アイドルにならずに看護師になった西野七瀬の姿が同時に映し出され、幼少期や学生時代の映像や写真が挟み込まれるノンフィクション形式のMVだ。西野の哀しい歌声もあってか、なんだか見てはいけないヤバイものを見てしまったように感じて「あれは何だったのか?」と、今でも思い出す。

 MVの印象が鮮烈だったため、西野はもっと生々しい演技をする方向に女優として向かうのではないかと思っていた。

 だが、初主演となった映画『あさひなぐ』では『電影少女』にもつながるようなコミカルな姿も見せており、そして『電影少女』では、漫画的なキャラクターを演じるツボを完全につかんだように見える。

 漫画的なキャラクター性と女としての生々しい色気が、西野七瀬の中には共存している。

 かつてなら漫画の中でしか成立できなかった美少女・天野アイは、西野七瀬というアイドルの身体を借りることで見事、現代に蘇ったのだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

テレビ東京系『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』公式サイトより