初場所で初優勝を果たした栃ノ心の活躍は、本当に見事だった。

 もともと前(まえみつ)の取り方、引き付けての寄り身など、外国人力士にしてはパワー以上に技術に優れ、08年十両に昇進したときから、いずれは三役に定着する力士と注していたが、幕内昇進後、右膝十字靱帯断裂という大怪で4場所連続休場。

 番付も幕下西55まで落としたが、春日野親方(元関脇和歌)に励まされ幕下と十両での4場所連続優勝を経て幕内に復帰。そして春日野部屋では1972年栃東以来46年ぶり、力士としては12年の旭天鵬以来6年ぶりとなる見事な優勝を果たした。

 とはいえ、この栃ノ心の快挙にを注したのが、春日野部屋で新たに発覚した暴行事件だった。

 4年前の14年9月春日野部屋の元力士が、入門してまだ日の浅い子に対して暴行。子は折して全治1年6カの重傷。しかも味覚消失という傷も負ったというのに、スポーツが記事にするまで表沙汰にならなかった。

 被害に遭った力士は、日馬富士の暴行事件が騒がれる一方で、自分の事件が揉み消されることに不信感を抱き、表したという。

 事件の起きた直後、春日野親方は「冷やしておけば治る」と言ったとか‥‥。被害者が部屋を逃げ出して自宅に戻ると、病院に連れて行くからと言われて部屋に戻され、しかし技館の相撲診療所に連れて行かれただけだったので、被害者が自分で大学病院へ行き、即入院して手術と診断されると、春日野親方に「余計なことをしやがって」と言われたとか‥‥。

 まったく意のない対応に、被害者は加者の兄弟子と親方を刑事告訴春日野親方は不起訴となったが、加者の力士には懲役3年執行猶予4年の重い判決が下された。そして現在も、春日野親方と加者に対して、損賠償3000万円をめる民事裁判が争われているという。

 問題は、これほど大きな暴行事件が、4年間も「隠蔽」されていたことだ。

 事件発覚後、春日野親方は「隠蔽」などしておらず、当時の協会執行部には報告済みと発言。表しなかったのは、当時の北の湖理事長、危機管理部長貴乃花親方、危機管理委員会(宗像委員長小林顧問)の判断と発言。

 しかし、北の湖理事長は既に死去。宗像危機管理委員長テレビ番組で「聞いてない」と発言。貴乃花親方はノーコメント

 事実関係はともかく、これほど重大な暴行事件を表しない(そして反もしない)相撲協会の体質では、暴力行為は永遠になくならないだろう。

 しかも07年6月時津風部屋で力士暴行死亡事件が起き、暴力追放の運動を実践していた最中の「隠蔽事件」には、相撲ファンとして呆れ返るほかない。

 貴乃花親方はこの事件を知っていたのか? 隠蔽に加担していたのか? この事件を知っていたから日馬富士暴行事件では、自分の部屋のノ岩を守るために警察に訴えたのか? しかし、知っていたなら表すべきだったのではないか?

 さらに日馬富士事件に関しても、貴乃花親方が理事会に提出していた「報告書」がメディアによってめて暴露され(貴乃花親方の仕掛けだろうか?)、八親方などから貴乃花親方に対して、警察への告訴を取り下げるよう執拗な圧があったことなど、事実関係に相当の違いがあることもわかった(再調も必要だろう!)。

 栃ノ心をはじめ、土俵上の力士たちは頑ってる。が、もはや相撲協会を信頼している人などもいない。その信頼を取り戻すことが急務だと、「新理事」たちはわかっているのだろうか?

玉木正之)

アサ芸プラス