仙頭正教です。アジア一の繁華街、新宿歌舞伎町のガイド人をやっています。

 ガイドと言っても、私の場合、立ちんぼスポットからボッタクリ客引き、心霊ビルまで、町の“怪しい”スポットを紹介するのがメインです。

 今年の都内の冬は、記録的な寒波襲来で、最低気温が0℃という日も珍しくありません。何かと防寒対策の話題が多いわけですが、そういう観点で夜の街を見たとき、やはり気になるのはホームレスです。歌舞伎町を抱える新宿は、路上生活者がとにかく多いですから。

 暦の上では「立春」を迎えましたが、しかし変わらず冷え込んだ2月4日。知人の新宿の現役ホームレスMさん(男性51歳・仕事は日雇い)に、極寒の夜の過ごし方を聞いてみました。

◆19:00-23:00/とにかく“鬼殺し”を飲む

――2月の歌舞伎町は寒いですよね。

Mさん:自分はたまにネットカフェに泊まったりもするんですが、基本は外で寝ているんで、今年の冬はかなりキツイですね。19時~23時のこの時間帯は、新宿駅の地下道で、鬼殺しの100円パックを飲んでることが多いです。酒はやっぱり体が温まりますから。

――鬼殺しでまず体を温める、と。

Mさん:でも先日、先輩のジイさんが、リュックに鬼殺しをいっぱい詰め、その重みでうしろにひっくり返り、頭を打って病院送りになったという悲劇もありました。あとで聞いたら、医者に「寒くても、あんまりいっぱい日本酒を持って歩かないように」と忠告されたようです。

◆23:00-04:00/仲間とくっつき合う“奴隷船スタイル”就寝

――寝るときはどうしてるんでしょうか。

Mさん:23時になると、新宿駅そばの某ビルの前に、自分を含めた12人のホームレス仲間で向かいます。ウチらはそこにみんなで一緒に寝るんです。“寝床”の作り方は、地べたにダンボールを敷きつめ、その上に新聞紙とブルーシートをかけ、周囲も背丈くらいのダンボールでぐるりと囲むんですが、一番のポイントはあえて狭く作ること。ギューギューの寿司詰めで仲間と互いに体がくっつき合うように、です。よくやるなぁと思われるかもしれませんが、この奴隷船スタイル、本当に暖かいですよ。

◆04:00-5:30/早朝の冷え込みを“落とし物探し”で乗り切る

――歌舞伎町で朝まで飲んだ日、店から外に出ると本当に冷え込んでます。さすがに起きるのでは?

Mさん:寒さで目が覚め、体が震えてしょうがなかったりするときは、寝床から出て歩き回ります。体を動かして体温を上げるわけです。が、極寒の早朝を、あてもなく歩くのはツライ。そこで気を紛らわすために自分たちが行うのが、“落とし物探し”です。歌舞伎町の靖国通り沿いや明治通り沿いといった、酔っ払いがタクシーに乗るためにカバンからサイフを出すことが多そうな付近を中心に散策します。

――それは、小銭拾いをするということ?

Mさん:まあ、わずかなもんですわ。……と、まれに見かけるのが、路上で寝ている泥酔者風情のおっさんです。もちろん、チャンスなんて思いません。とりあえず「大丈夫ですか!」と声をかけてみるんです。すると、けっこうな頻度で相手の目がすーっと開き、こんなことを言ってきますから。「警察です。捜査のために、わざとこうしていますんで、すいませんが、ほっといてもらえませんか」。この真冬に泥酔窃盗のオトリ捜査とは、頭が下がります。

◆5:30-7:00/早朝の地下道で振る舞われるあるモノ

――そんなこんなで朝を迎える、と。

Mさん:5時半には新宿駅の地下道へ向かいます。目指すは、寝ていても警備員に文句を言われることがない、唯一の2ヵ所です。

★西口/『小田急ハルク』地下・B16出口(6時~7時半まで)
★東口/『タカノフルーツパーラー』地下・A7出口(5時半~7時半まで)

どちらが居心地がいいか? 暖かいのは圧倒的に西口ですが、東口もまた捨てがたいです。実はこの東口のタカノの地下、毎日、新宿5丁目のインマヌエル教会の牧師さんや一般の方がオニギリを持ってきてくれるんです。それだけではありません。週2、3回ほど、80代くらいの老紳士がやって来て、ホームレスに一人ずつ「ごくろうさん」と声をかけながら、3千円ずつ配ってくれるんですから。

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【仙頭正教】
歌舞伎町ガイド人。立ちんぼスポットからボッタクリ客引き、心霊ビルまで、町の“怪しい”に精通。月2回、カブキの裏スポットを案内する『歌舞伎町観察ツアー』を開催中。ツイッター(@sento1025) ※月刊『裏モノJAPAN』編集部・所属