働く堅実女子のみなさんは、つい最近こんな炎上事件があったことをご存じでしょうか?
歌のお兄さんを卒業した横山だいすけさんが出演する、動画配信サイト「Hulu」の番組『だい!だい!だいすけおにいさん!!』。この番組内で、絵本作家ののぶみ氏が作詞を手掛けた楽曲「あたし おかあさんだから」が公開された時に、騒ぎはおきました。一般の方がTwitterに投稿した「最後まで読んだら救済されるかと思ったけどダメだった……」的なコメント付き歌詞が、リツイートしまくられたのです。そして、ママ界隈で「どうなの?この歌詞?」とざわざわ話題になったのです。

最初は、「大手企業のCMならまだしも、アーティストの手掛けた作品にいちいち目くじらたてなくても」「共感する部分はあるし、なんでもかんでも炎上させようとする風潮のほうが問題」という意見も少なくありませんでした。でも、「おかあさんだからガマンしないといけないの?」「おかあさんだけど、やりたいことやってるよ」などの声がどんどん大きくなっていったのです。

さらに、のぶみ氏がFacebookやTwitterで批判に対して発言した内容が燃料となり、注目度が加速。さらに批判の声が大きくなって、のぶみ氏が謝罪する事態となりました。そして、だいすけお兄さんの歌う動画は削除され、「あたし おかあさんだから」のリリースも未定に。この騒動は、終焉となったといえます。

でも、まだくすぶっている、もやもやした気持ち。それは、「意見を言おうが言うまいが、結局、ママの気持ちなんて、同じ境遇の当事者以外とは共有できないんだな」という徒労感が引き起こすのかもしれません。

筆者が「あたし おかあさんだから」の歌詞を最初に見たのは、知人から「これ、ネットで炎上してるよ」というメッセ―ジとともに送られてきたメールです。最初の印象は、「なにこれ、怖い」でした。

「あたし おかあさんだから」は、おかあさんが我が子に語り掛けるという体裁をとっています。そして、「あなた」と呼びかけながら、自分が子供を産む前に自分が普通にしてた「キラキラした」ことと、今やってる「あなたのためにしてること」を列挙し、子供を産む前は痩せてたし、産む前に戻れるなら自分の好きなことしまくりたい。けど、あなたに会えたからおかあさんになれてよかった、というものです。

「こういうふうに考えるママっているよね」という点を「共感」とするならば、そこに異を唱えた人は、筆者の周囲にもいませんでした。それを踏まえた上での批判で、その批判は、大きく3つに別れました。

ひとつは、「自己犠牲を強制されている気がして不快」というもの。この歌詞に登場するママは、ネイルも夜更かしもせず、朝5時に起きて子供のお世話だけしているようです。そのあたりに、「私はそんなママじゃないけど……暗に非難されている?」「ここまでしないとダメな母親ってこと?」と反発する人が多かった。

もうひとつは、「子供に対して恩着せがましいところがムリ」というもの。これは、上にも書いたように、おかあさんが我が子に語りかけている構成が原因です。おそらく作者は、最後の「あなたに会えたから、おかあさんになれてよかった」をキモにしたのだと思います。でも、そこまでに綿々と語られる「おかあさんの今は(あなたのせいで)こんな感じよ?」という部分が、重すぎて。「自分の子供に、母親がこんな風に思ってるんだと思われたらイヤ」「とうてい我が子には聞かせられない」と感じた方々です。

そして、3つめが「呪いか?」というものです。筆者の「なにこれ、怖い」という気持ちも、ここに一番近いと思います。

要するに、育児ノイローゼ直前なんじゃないかと

「子供を産む前は立派に働けると思っていた」「子供を産む前は好きなことだけして自分のことばかり」と、出産前の自分を全否定して、今の状況を淡々と並べ、何度も何度も、タイトルを連呼するこの歌詞は、辛くて絶望気味の気持ちを払拭するために、自分に言い聞かせているように読めました。誤解を恐れずに書くと、「育児ノイローゼ直前の人の呟きポエム」のように感じたのです。これを、当事者が書いたのだとしたら、こんな風に思っちゃうのはちょっとまずいから、誰かに相談したほうがいいよ……というような。

実際は、のぶみ氏は男性です。そのせいで、「わかんないのにわかったようなことを」という批判も出ました。

それに対するのぶみ氏の「ちゃんと取材したし、アンケートもとった。決めつけでつくっていない」という反論にカチンときた方々が、作者がTwitterで「おかあさんになってガマンしたことを教えてください」とガマン縛りで意見を募集していたツイートのキャプチャや、「ガマンしていることはないです」と書いた人と「ほんと?小さなガマンはしてるでしょ?」とガマン方面に意見を誘導しているやりとりのキャプチャを拡散。アンケートの取り方に問題があるのではと、わちゃわちゃしはじめたあたりから炎上が加速しました。

のぶみ氏には、「ガマンしているママは頑張っていてエライ」という気持ちがあるんだと思います。それは、「アンケートにハッシュタグをつけて答えてくれた人には、頑張ったね!エライよ!って返信します!」というコメントからも明らかです。なんだよ、ボット対応かよ、という点はおいといて、のぶみ氏は、自分のことを犠牲にして子供のために頑張っているママたちを「エライ!」と思っているんです。それは、悪いことではありませんよね。

でも、「エライ」って、上から目線の言葉なんですよね。だって、目上の方に、面と向かって言わないじゃないですか。つまり、そこに感謝も尊敬も感じられないんですよね。ママ同士、「私たち、けっこうエライよね」とねぎらい合うことはありますが、そうでない人からエライと言われると、んん?と思ってしまのです。

では、作者が年齢が上の子育て経験済み女性だったらよかったのか、というとそれもまた微妙なところです。「歌詞のような母親にだけはなりたくない」という人もいるし、「こんなふうになるなら子供なんていらない」という人もいます。「こんな歌詞を当事者然として歌われたら、よけいもやもやしたと思う」という意見が多かったのでした。

いろんなママがいて、いろんな価値観をもつ女性がいます。結局のところ、それを「ママはガマンしている生き物」とひとくくりにして、「ガマンしているからエライ」と上から目線で語られたところ。そして、「そこを抽出してナイスな歌詞にした俺ってすごくない?」っていうあざとい感じ。イラっとさせられたのは、そこかなーと思ってなりません。

「ママ業をサボってるみたいでママ友ランチも肩身が狭くなっちゃう」と肩を落とすママも。

17歳はるかぜちゃんも「おまえ おとうさんだろ」で参戦。「エライねって言って欲しいわけじゃない」ママたちの本音は!?~その2~に続きます。

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