王者ホワイトと激闘…戸塚転倒で中断&騒然の“魔の2本目”に生まれた“連続4回転”

 平昌五輪、スノーボード男子ハーフパイプの決勝で、平野歩夢(木下グループ)の銀メダル獲得の瞬間を目撃した。

 フェニックススノーパークは寒かった。前日(13日)の予選は快晴だったが、この日は時折、雪がちらつく曇り空。風こそさほど強くないものの、座って観戦していると、たちまち体の芯まで凍えそうになる。にもかかわらず、会場はほぼ満員。スタンド前方の立ち見エリアは、満員電車さながらのすし詰め状態。それでも競技が始まれば、人の熱気で、寒さがかき消された。

 1本目。平野は着地をミス。会場はざわつくが、本人に焦りの色は見られない。続く2本目の3番手で飛んだ戸塚優斗が転倒。自力では立ち上がれなかった。競技が中断し、今度は会場が騒然。このアクシデントがその後の選手に与える影響は小さくないだろうと予測したが、やはり2本目、完璧な演技をする選手は少なかった。

 スコッティ・ジェームスは手をついたし、ショーン・ホワイトも着地に失敗した。だが、平野はこの2本目を完璧に決めてみせた。五輪史上初の連続4回転を決めるなど、95.25点で一気にトップに立ってみせたのだ。なんという強靭なメンタルなのだろう。関係者は「平野も大ケガをしたことがある。影響がないとは思えません」と心配していたが、結果は杞憂に終わった。

 曇天を吹き飛ばすような、会心の滑りに場内は割れんばかりの大歓声。会場の気温は氷点下3度だったが、体感温度は一気に上がった。

 勝負の、運命の3本目。メダルは間違いない。果たして逃げきれるのか。平野はさらなる高みを目指したが、3つ目のエアで着地を失敗。「アユムは2本目でスコアを出しているので、入りのスピードからかなり速かった。エアも高かったですし、決まっていたらとんでもないスコアが出ていたと思います」と関係者は声を上げた。

最後の最後で生まれた逆転劇、場内に響き渡った「USA」コール

 95.25点で残り2人と戦う。まずはジェームスだったが、エアで転倒した。これで銀以上。その色はホワイトの滑り次第に。だが、王者の滑りは完璧だった。

 激しいガッツポーズで、勝利をアピールするホワイトに、場内からは「USA」コールが響く。日本人ファンの間には、なんとも言えない空気が漂ったが、それも一瞬だった。「ショーン・ホワイトってやっぱりすごいんだね」。そんな声が、漏れてきた。悔しさよりも“いいもの”が見られたという感覚が上回ったのだろう。

 平野は惜しくも届かなかった。関係者は「平野はXゲームズの時と内容はさほど変わらなかったが、99.00点を出した当時に比べれば、ほんのわずかにエアが低かった」とみていた。ホワイトについては「1本目で出た94.25点というスコアで今日の流れを作ったと言っていい。本人もあれで、気持ちが楽になり、3本目の会心のエアにつなげられたのだろう」と分析していた。

 平野は悔しい2大会連続での銀メダル。だが、表彰式でも、その後も、表情は晴れやかだった。ミックスゾーンでは何度も、ギャラリーとの写真撮影に応じた。

 前日の独占インタビューでは「あとは、やれることしかやれない。自分の滑りというか、やれることをやってそれがいい結果になればいい」と話してくれた19歳。やれることをやっての、結果が銀メダル。充実感でいっぱいだったに違いない。

 期待したいのは、4年後、北京五輪でのホワイトとの再戦。頂点に立つときは、レジェンドを倒して――。そんなシーンを今から描きたくなる。(THE ANSWER編集部)

平野歩夢、ショーン・ホワイト【写真:Getty Images】