●A350 XWBの市場規模--A350-900とA350-1000の相違性
「国際線長距離のメインの機材として、現在飛んでいるボーイング777-300ERの後継機に」とJAL代表取締役社長の植木義晴氏が話すのが、エアバス機最大の最新双通路型機であるエアバスA350-1000だ。2017年11月には欧州航空安全庁(EASA)および米連邦航空局(FAA)より型式証明を取得し、2018年2月20日に初号機がカタール航空に納入される予定となっている。

JALは2013年10月にA350 XWBを31機(A350-900を18機、A350-1000を13機)発注しており、A350-900は2019年度より受領する。A350-1000の受領時期はまだ未定だが、今後のJALの主力機として世界の空を駆け巡ることが期待されている。では実際、どのような機材なのだろうか。
○8,100海里を行く3クラス制・366席の双通路型機

A350 XWBの航続距離は8,100海里。これを東京発で見てみると、欧州・アフリカ、あるいは北米へノンストップで飛行することができる。飛行距離が伸びることを考えると、燃費効率をいかにして上げるかとともに、長時間のフライトでも快適に過ごせる機内環境・設備が必要だ。その意味でも、最も静かな双通路客室、高い空気質、最適化された客室高度・温度・湿度を満たすことも、A350 XWB開発において重視された。

A350-1000は標準型のA350-900より7m長い胴体を持ち、40%広いプレミアムクラスのスペースを確保する。A350-1000は標準の3クラス制で366席を装備し、18インチ(45.72cm)幅の快適なエコノミークラス席を備える。また、前世代の競合機に比べて燃費を25%削減する。これらの特長を踏まえてA350-1000のことをごく簡単に言うと、国際線長距離路線においてより多くの乗客を乗せられる、快適かつ経済的な飛行機がエアバスに加わったということになる。

○就航前からA350-1000は11社より169機受注

一度、A350-1000の市場を整理してみよう。エアバスは今後20年の世界航空機需要として、約3万5,000機の新造機・貨物機の需要を予測しており、市場価格は5.3兆ドルと計上している。その内訳は、A320などの短通路型機が2万4,800機、A350 XWBなどの双通路型機が8,700機、そして、A380などの超大型機が1,400機と予測している。

とりわけ、アジア太平洋地域の重要性が今後も高まるとしており、世界需要の42%を占める約1万4,450機の新造旅客機・貨物機の需要を予測。内訳は、短通路型機が9,800機、双通路型機が4,000機、超大型機が650機と見ている。

エアバスは現在、双通路型機にあたるA330neo(A330-800/257席とA330-900/287席)とA350 XWB(A350-900/325席とA350-1000/366席)を開発・納入している。A330neoに関しては、A330-900が2018年中頃までにTAPポルトガル航空へ納入、A330-800が2018年半ばに初飛行を予定している。

一方、A350 XWBに関しては、A350-900初号機が2014年12月にカタール航空へ納入されたのを皮切りに、アジア太平洋地域ではすでに8社(アシアナ航空、キャセイパシフィック航空、チャイナ エアライン、香港航空、マレーシア航空、シンガポール航空、タイ国際航空、ベトナム航空)が運用している。また、A350-1000が2018年2月20日にカタール航空へ納入される。

A350 XWBは2018年1月現在、受注数854機・引渡し数146機・受注残数712機であり、アジア太平洋地域では14社から287機の確定受注を得ている。A350-1000だけをいうと、2018年1月現在、11社から169機の受注となっている。その中の一社がJALということになる。

なお、A350-900はさらに、A350-900リージョナル型とA350-900超長距離型がそれぞれ2018年運航開始予定となっている。競合機材と比べると、6,350海里のA350-900リージョナル型は787-10より運航コストが5%低く、8,100海里のA350-900は787-9より42座席多く、9,700海里のA350-900は777-8より運航コストが20%低い、という特長をエアバスは挙げている。
○A350-900とA350-1000は足元を見れば分かる

A350 XWBの機体を見ていこう。330neoとA350 XWBはともに、前世代の競合機より座席あたりの燃費を25%削減する。この削減は軽量化による燃料のみならず、整備や空港運航援助も踏まえた削減数値となっている。

A350 XWBを見てみると、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)を53%・チタンを14%などと、全体の約70%を最先端材料にすることで軽量化と整備の簡素化を図り、A350-1000の自重は129tという目標重量を達成した。エアバスによると、競合機材である777-300ERと比較した場合、満席のA350-1000の方が自重だけの777-300ERよりも35t軽量化を実現するという。

またA350-1000には、離陸推力84klbのA350-900よりも離陸推力97klbとパワーを増したロールス・ロイス社製「Trent XWB-97エンジン」を装備する。このエンジンは、ICAO(国際航空民間機関)が定めるチャプター4(小型機の騒音レベル)より16.5EPNデシベル低いことが実証されている。さらにA350-900同様、就航時から8,100海里の航続距離を有しており、生物を模倣して変形する主翼によって揚力の最大化・抵抗の最小化を実現する。

A350-900とA350-1000を見分ける大きな特徴のひとつが主脚であり、A350-1000は4車輪ではなく6車輪のボギー式主脚となっている。これにより、着地面への荷重が軽減され、離着陸の衝撃を緩和する。

○コックピットにタッチスクリーン

A350-1000のコックピットには、双通路型機以上の民間機では初となる6つの同型タッチスクリーンディスプレイを搭載する。タッチパネルはグラスコックピット化と合わせて考えると、配線の減少、情報や操作の集約、見やすさというメリットが挙げられ、整備コストの削減とともにインタラクティブ性の向上が図られる。

また、A330neoは99%、A350 XWBは95%、システムや部品が共通化するという同一タイプレーティング(機種別操縦資格取得)を備えている。これは、操縦士の操縦選択の拡大のほか、整備コストの軽減にもつながり、運用会社にメリットをもたらす。

ちなみに、A350-1000もA350-900と同様、サングラスをかけたようなコックピットウィンドウをしている。このデザインは操作性や視認性が高まることを期待したものではなく、CFRPを多用し新しい客室を備えた未来志向の機材であることをイメージしたデザインとのことだ。

新機材においては通常、ある一定の初期故障が想定されている。しかし、エアバス・ジャパン代表取締役社長のステファン・ジヌー氏は、「飛び始めて3年間おおむね順調で、とてもいい飛行機になっていると思う」とコメントし、その運航信頼度の高さをアピールしている。

実際、機内ではどんな体験ができるのか。続いては、新しい客室「エアスペース(Airspace)」を、写真を中心にして紹介したい。

●330neoにも搭載された新客室「エアスペース」とは
○新客室「エアスペース」で快適さアップ

A350 XWBを正面から見ると分かるが、競合機材である787が真円なのに対し、A350 XWBは楕円形をしている。そのため、機内の壁は垂直になり、圧迫感が和らぐ。エコノミークラス席でも18インチ幅な座席のほか、ゆとりの足元スペース、また、客室の配線を床下に収めることで床がフラットなったことも、快適性を高めている。

頭上手荷物棚はスーツケースを5個収容できる広さを確保。照明には発光ダイオード(LED)を採用し、時差ぼけを軽減させる多彩なライティングが可能だ。

A350 XWBには受賞歴のある新しい客室「エアスペース(Airspace)」が搭載されているのが特長のひとつであり、このエアスペースは330neoにも導入されている。2月14日に羽田空港へ初飛来したA350-1000MSN065(製造者番号: 065)は、3機のA350-1000テスト機の内の1機であり、ビジネスクラス40席・エコノミープラス36席・エコノミークラス219席と、完全な客室を装備している。JALの仕様とは異なるが、現在JALでは「最高の飛行機」に向けて、機内仕様案を社内で公募しているという。

JALはA350 XWB導入に向け、整備中期経営推進会議A350導入分科会(CCF04)を社内で結成した。その活動の一環として、2018年1月17日創刊の「A350 Now!」を定期的に発行し、飛行機の概要や各システムなどを紹介していくという。A350-1000よりも先行して開発されたA350-900の導入は2019年度であるため、JAL社内での移行訓練などはまだ先となるが、社内でもA350 XWBを待ち望む声が大きいようだ。

一方ANAは2014年7月に、777-300ERの後継機としてボーイング777-9Xを20機、777-9Xデリバリーまでの国際線成長原資として777-300ERを6機、それぞれを確定発注している。777-9Xは座席数400~425席、航続距離7,600海里で、初号機は2020年に納入を予定している。今後、JALとANAがそれぞれ違う機材を運用することで、国際線長距離路線においてよりオリジナル性のあるサービスが提供されることになるだろう。
(松永早弥香)

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