大規模な危険ドラッグ工場や販売者の摘発が相次いでいる。昨年11月、川崎市内の製造工場が摘発され、男女8人が逮捕された事案では、約30億円相当の危険ドラッグが押収され“過去最高”を記録した。今年に入ってからも、約36億円相当の危険ドラッグが押収されるなど、ここにきて“危険ドラッグ”製造・販売業者の暗躍が、再び目に見える形で露呈し始めている。

 かつて「合法」とされていたが、池袋で乱用者の大事故が起きて以降、危険ドラッグは絶滅の一途を辿っていたかに思われていたが。いま、なにが起きているのだろうか?

◆危険ドラッグの事件が再び急増中、なにが起きている?

「だから、なくならないですって(笑)。ノウハウもあるし儲かるんだから。パクられたって長くて2~3年でしょ? だったらやったほうが得じゃん」

 こう話すのは、自身も過去に危険ドラッグの製造や流通、販売に関わった経験があるという町田氏(仮名・40代)。 

 2014年6月の池袋駅付近で起きた乱用者による自動車の暴走事故を皮切りに、2015年に相次いだ危険ドラッグが起因とみられる事件や事故。町田氏はそれを受け、商売からは綺麗さっぱり足を洗った。

 それまでは成分の規制をすり抜けようとする業者と警察のいたちごっこが続いていたが、厚生労働省は危険ドラッグの横行に迅速に対応するため、「包括指定」によって類似する成分を一括して取り締まることを可能にした。

 厚生労働省の公表データによると、全国の危険ドラッグの販売店舗数は2014年3月末の時点で215店舗あったが、2015年7月10日時点ではゼロとなり全滅したとされている。こうして、店頭で販売する業者は(おおっぴらには)見られなくなったはずだが。それでもすり抜けようとする連中がいるらしい。

「危険ドラッグはとにかく儲かるので、新たな製造業者、売人が出てくるのも当然。当時パクられた連中のなかにも、すでに危険ドラッグ製造を再開し、派手に儲けてる連中がいる。事故や事件が相次いだ時の“モノ”よりもいくらか効能が弱いとか聞くけど、本当はどうなんだか……」

 2016年、度重なる規制によって、図らずも「指定薬物」となった危険ドラッグ。その使用により死者まで出す凄惨な事件・事故が相次いだが、現時点で再び流通し始めた「危険ドラッグ」の成分は、当時と比べていくらか「ソフト」なものだという。

 町田氏は、危険ドラッグがなくならないことも、危険ドラッグがいかに儲かる「商材」であるかも、すでに当時から確信していた。ある種の「社会問題」として大きく語られ、危険視された危険ドラッグが、わずか数年の間に再び世に蔓延しようとしているわけだが、町田氏の予見は概ね正しかった、ということになる。

「現状はほぼ通販だけの取り扱いらしいけど、繁華街のエログッズ専門店や雑貨店では、また“お香”やら“バスソルト”といった名前で買える店もチラホラあるとか。サツ(警察当局)に見つかるように堂々とはやってないだろうけど……。ネットで捌けるから、実店舗での販売はそうそうないだろうね」

 また、池袋や新宿といった繁華街に実店舗を構えていた危険ドラッグ販売店だったが、いまはそのほとんどが「ネット販売」型に移行しているのだという。とはいえ、厚生労働省の麻薬取締部は、インターネット上で危険ドラッグを販売している業者の動向を常時監視し、そのすべての摘発に向けて捜査を進めているらしいが……町田氏は、販売側、購入側、それぞれの身元が分からないように購入可能な方法も確立されているのだと話す。

「危険ドラッグだけじゃない。匿名化ソフトを使えば、ダークウェブ掲示板でシャブ(覚せい剤)や草(大麻)もすぐ手に入る。危険ドラッグもここで堂々と売れる。支払いもビットコインなどの仮想通貨を使えば、ここでも足がつくことはない。あとはダークウェブの中で販売実績をこなし、顧客と信頼関係が構築できれば、もっともっと儲かるシノギ(仕事)になる。規制したって、欲しがる奴がいれば作る奴もいる。またデカい事件が起きると思いますよ」

 再び、危険ドラッグが日本社会を不安に陥れる日が来るのか。関係当局はすでに、実態調査に乗り出しているともいうが、果たして――。<取材・文/伊原忠夫>