マリナーズに復帰したイチロー、ディポトGMが語る舞台裏

 マリナーズへの電撃復帰が決まり、初練習に合流したイチロー外野手。2012年のシーズン途中にヤンキースに移籍して以来、6シーズンぶりとなる帰還決定にキャンプ地は熱気に包まれている。その中、7日(日本時間8日)の入団会見にも同席したジェリー・ディポトGMがイチロー復帰交渉の裏話を披露。一度交渉が立ち消えになっていたことを明かしている。 

 同GMが交渉の舞台裏を告白したのは、マリナーズの球団公式ポッドキャスト「 ザ・ウィールハウス・ウィズ・ジェリー」でのことだった。 

「(代理人の)ジョン・ボッグスとは色々な会話をしてきた。ジョンは2017年シーズン終了とほぼ同時に連絡してきた。イチローがチームにフィットする可能性について、だ。その時、外野手ではミッチ・ハニガーとギジェルモ・エレディア、ベン・ギャメルが(オフシーズンからそのまま)戻ってくる予定だった。 

 ポストは空いていたが、いかにして埋めるか完全にわかっていなかった。我々は外野の組み合わせをどうするのか、模索していたんだ。一塁、そしてユーティリティプレーヤーのスポットが空いていたし、有意義な投手の補強を行いたかった。我々はジョンと話を続けていたんだ」 

 ディポトGMはそう話し、ストーブリーグの開始直後からボッグス代理人と交渉を続けていたことを明かした。 

 イチローは今オフ、マーリンズを退団し、メジャーでの現役続行を模索。代理人は数球団と接触していることを明かしていたが、停滞するFA市場の影響もあり、思うように話は進展しなかった。 

“ある出来事”によってイチロー獲得が一時消滅に

 一方、ディポトGMはイチローの補強の可能性を探りつつ、投手や一塁で補強を模索していたようだ。しかし、ある出来事によってイチロー獲得の話が立ち消えになる。 

「現存の外野手が3人いるローテーションにおいて(イチローが)いかにフィットするか。一塁と投手のフリーエージェントで大物を狙う一方で、イチローは外野のローテーションの中で費用効果の高い解決法だった。(代理人との)会話は、ディー・ゴードンを獲得するまでずっと、何度も何度も続けられた。そして、(ゴードンを獲得したという以上、イチローが)フィットする余地はなくなったかのように見えた。そして、交渉は静かになったんだ」 

 ディポトGMはこう明かしている。 

 昨季までイチローとともにマーリンズに所属した盗塁王ディー・ゴードンは昨年12月にマリナーズへ電撃トレードが決定。マイアミでは二塁手としてゴールドグラブ賞を受賞した名手だが、マリナーズではロビンソン・カノが君臨しているために、センターにコンバートされることが決まった。これにより、マリナーズの外野布陣は一旦固まり、イチローの復帰話は一時消滅したという。 

「そして、スプリングキャンプに入った。(代理人との)会話は2、3回続けていたところで、先週、ベン・ギャメルがダウンした。復帰まで4週間から2か月かかるかもしれないということがわかった。ベンを失ったことで、会談が大きくなったんだ。もう1回交渉を再開し、結論に達するまでそこまで長くはかからなかったよ」 

 ディポトGMはそう振り返っている。 

 ギャメルは腹斜筋の負傷で数週間離脱する見通しとされていたが、同GMは最大で2か月間に及ぶ可能性にも言及。その中で、イチローに白羽の矢が立ち、数日の交渉で一気に契約がまとまっていったようだ。

「球団の象徴が常時ベンチに座っているということはあり得ない」

 今年1月に行われたファンフェスタではシーズンチケット保有者など熱心なファンからイチロー復帰を求める声も上がっていたが、当時は外野手事情から肯定することはできなかったとディポトGM。「獲得を求めたファンに対して一言」を求められると、「今は(我々のことを)気に入ったでしょ?」と笑い、イチローを常時起用する計画も明らかにした。 

「1月の段階ではイチロー(獲得見送り方針)についてはロジカルだったと思う。もしも、イチローが復帰するのなら、球団の象徴が常時ベンチに座っているということはあり得ない。我々は定期的に彼に打席を与え、彼が能力を発揮できる状況を見出さなければならない。なぜなら彼の昨年のマイアミ・マーリンズの後半戦を見ればわかると思うが、彼は(試合の)重要な局面でいい仕事をしてきた。出場機会さえ手にできれば、彼は依然として素晴らしい選手なんだ。色々な力強いことができるんだよ」 

 同GMの言葉通り、イチローは昨年のオールスター前は74試合で打率.220だったが、オールスター明けは打率.299と復調。代打でも勝負強い打撃を見せていた。 

「彼にチャンスを与えることになる。ベンが戻ってきたとしても、イチローは我々をいい立ち位置に置かせてくれるんだ。我々にこれまでになかった多様性、柔軟性を手にすることになるんだから」 

 ディポトGMはそう期待を寄せている。 

 かつて鉄壁の守備力でイチローの守るライトは「エリア51」と呼ばれたが、センター、レフトでも高い守備力を誇る。ギャメルが故障から復帰後も、背番号51には輝く道があるとディポトGMは考えているようだ。(Full-Count編集部)

入団会見に臨んだディポトGM(左)とイチロー【写真:盆子原浩二】