大相撲場所の初日も近いが、いまだに貴乃花親方をめぐる騒動が波紋を呼んでいる。

 手にかけて育ててきた子が先輩力士からの暴力相撲人生を絶たれるかもしれない――そんな怒りや、何より相撲協会に対する積年の思いがあったのだろう。しかし、問題の本質力士間の暴力相撲協会との関係性であったはずだが、図らずも貴乃花親方のファッションが注されてしまった。なぜ、そうなったのか。

『できる男になりたいなら、を見ることから始めなさい。』(CCCメディアハウス)の著者でイメージコンサルタントという立場から、貴乃花親方のファッション読み解いてみたい。

「なぜ?」と思わせる貴乃花親方のファッション

 ファッションにおける大失敗のひとつが、見る人に「なんで?」と思わせてしまうことだ。

 貴乃花親方については、長すぎるマフラーを首にぶら下げ、パーマにオールバックサングラスという姿が「マフィアにしか見えない」といったを生んだが、つまりは「なぜマフィアファッション?」と思う人が多かったということだ。それゆえ、図らずも注されてしまったのではないだろうか。

 それは、グーグル検索結果を見てもわかる。「貴乃花 マフラー」で検索すると、約215000件もヒットする(※3月9日時点)。おそらく「あのマフラーほしいな、どのブランドだろう?」というよりは「あのマフラーはなんなんだろう……」という思いで検索する人が多いのではないだろうか。

「なんで?」と思われるということは、「狙ったのに外してしまった」ということでもある。それなら、まだ「装について何も考えていない頓着な人」のほうがダメージは少ないのだから、ファッションというのは恐ろしい。

 ファッションというと、多くの人が「+(足す、盛る)」で考えがちだが、それよりも、特に男性ビジネスシーンにおいては「余計なことをしない」努のほうが重要だ。何しろ、男性ビジネスシーンファッションでは、すでに「スーツ」という、男性をもっとも美しく見せるがある。ただ、そのまま着れば違和感は発生しなかったはずだが、貴乃花親方の「マフラー」や「パーマ」は過剰だった。

 また、貴乃花親方の「(マフラーは)のどの調子が悪いので、のどを守るため」という説明に対しては、「そのわりには、のどのところはいている」というツッコミが散見される。

 もちろん、時期的にもマフラーを巻くこと自体はおかしくないが、首から垂らすのではなく、一度首に回したり室内では首回りのものを外したりするなどの着こなしをしていれば、また反応は違ったはずだろう。

ビジネス装が注されるのは損でしかない

 ファッション業界に勤めているならともかく、そうでないなら「装がクローズアップされてしまう」というのはだけが悪立ちしているということで、損でしかない。貴乃花親方も、本当に訴えたいのは相撲協会の体質善だったはずだが、前述のようにファッションツッコミが入る事態となってしまったのだ。

 個人的には、ファッションは本人に似合っているほど「なんで?」という違和感がなくなるので、ビジネスでもプライベートでも自分に合った装が好ましいと思う。しかし、それとは別に「自分が着たいものを着たい」という気持ちも大切だ。

 そこで、「似合う」と「着たい」の間にズレがある場合、プライベートであれば「着たい」を優先する日があってもいいだろう。常に自分の気持ちを押し殺す必要はない。

 ただし、ビジネスシーンとなれば話は別だ。職場や取引先などの間で「着たい」優先では、「まわりが見えない人」「自分にしか関心がない人」とみなされてしまう。ビジネスシーンでは装ではなく仕事役だ。仕事以上に装で立ってしまうのは、やはり損でしかない。口を開く前に勝負が決まってしまっては、あまりにもったいない。

見たに“ワル”を醸し出すのはNG

マフィアファッション”は貴乃花親方に限らず、麻生太郎総理兼財務大臣もやっていた。

 2013年2月ロシアで開かれたG2020財務大臣・中央銀行総裁会議)に、ロングコートにハットを斜めにかぶったファッションで出席し、「マフィアスタイル」「日本アル・カポネ」と話題になったのだ。

 若者のストリートファッションから、中年、壮年男性マフィアファッションまで、“ワル”には抗いがたい魅があるのだろう。“ワル”はや強さも感じさせるため、男性メロメロになる気持ちもわかる。かつて、男性ファッション誌「LEON」(主婦と生活社)が提唱してブームとなったのも、「ちょい不良(ワル)オヤジ」だった。

 なお、「自分はマフィアファッションなんてしないから」という人も、油断は禁物だ。ビジネスシーンなのに、やたらと立つピカの腕時計をしていたり、場に乳首が浮くほどピタピタのワイシャツピチピチズボンを着ていたりする人も、部類としてはマフィアファッションと同様の“ワル”にあたる。共通するのは、「普通のいい子ちゃんとは違うぜ」というメッセージを発したい点だろう。

 プライベートであれば、ストリートだろうがマフィアだろうが、いくらでも“ワル”をせばいい。しかし、ビジネスシーンでは装で“ワル”を演出するのではなく、「品行方正で優等生生徒会長が、実は陰の番長だった」というような、「装や身なり、たたずまいはきちんと正統派それなのにやることはびっくりするほどえげつない」という方面の“ワル”をすことをおすすめしたい。少なくとも、そうしたほうがモテる。

 いかに“ワル”を見たに出さないか。そう腐心する人こそ、自分のあくどさを知っている本物の“ワル”だろう。
(文=石徹未亜/ライター

貴乃花親方(写真:日刊スポーツ/アフロ)