『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが民族主義的な右派思想が広がる欧州の現実について語る!

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2月6日、ポーランドで驚くべき法律が成立しました。かつてナチスドイツが犯したホロコースト(ユダヤ人大虐殺)などの罪に関し、ポーランドが「責任」を負っていると主張した者は、罰金刑または禁錮刑に処される――というものです。

この通称“ホロコースト法”は2015年に政権を奪取した右派政党「法と正義」が進めてきたもので、表向きの理由は、ナチスがポーランド国内に建設したアウシュビッツ強制収容所が「ポーランドの収容所」などと呼ばれることを防ぐためとされています(当然、イスラエルなどは歴史改竄[かいざん]だと猛反発していますが)。

ただ、ポーランドの同政権がこれまでもメディアや司法への統制を強化してきたことを考えれば、ホロコースト法もそうした強権的な流れのなかにあると見るべきでしょう。

昨今は中欧や東欧の多くの国で民族主義的な右派思想が広がり、反EU(欧州連合)の感情も高まりを見せています。例えば、ポーランドも参加する「ヴィシェグラード(V4)」という4ヵ国のグループ(ほかにハンガリー、チェコ、スロバキア)は反EUで団結し、EU域内の難民受け入れ分担を提案したドイツに猛反発。

なかでも過激なハンガリーに至っては、移民流入の背後で自国出身のユダヤ人投資家ジョージ・ソロス氏が暗躍しているとの陰謀論まがいの言説をオルバン首相本人が声高に主張するなど、国を挙げてキャンペーンを展開しています。

今年はハプスブルク帝国が崩壊してから100年の節目。約700年続いた帝国の後、バラバラになった各地域の人々は100年もの間、不安定な社会での生活を余儀なくされてきました。

そう考えると、中・東欧の近年の“右旋回”は、共通の被害者意識を持つ者同士が“100年の憤懣[ふんまん]”を爆発させているということかもしれませんが、それを見逃さないのがロシアや中国。ロシアは右派政党への支援、中国は露骨な経済援助などの形で介入し、EU全体に揺さぶりをかけています。

ただし、反EUという面では結束する中・東欧諸国ですが、その内実はポピュリストたちが自国の事情を利用して世論を煽(あお)っているだけ。その根底にナチズムやコミュニズムのような“大きな世界観”はなく、個別の分野に目を移せば、互いに相容れない部分が目立ちます。

例えば、スロバキアは自国への移民・難民受け入れに反対する一方、自国民の西欧への出稼ぎは維持したいという微妙な立場。逆に「V4」に隣接するオーストリアでは、連立政権内の極右政党・自由党が、ムスリム難民のみならずハンガリーなど中・東欧諸国からの移民にも強く反対しています。

また、そのオーストリアは原発に頼らないエネルギー政策を打ち出していますが、隣国ハンガリーがロシアと協力してオーストリアとの国境付近に原発の建設を決定するなど、周辺は原発建設ラッシュ。摩擦の火種となっています。

多くの日本人にとって、EUとはリベラルな世界観の象徴のように映っているかもしれません。しかし、その「東半分」は経済的に取り残され、ポピュリストが跋扈(ばっこ)し、EUの理想とは程遠い現状です。この“剥き出しの欧州”の現実を見つめることで、かえって現代という時代の本質が見えてくるかもしれません。

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)










国際ジャーナリスト。1963年生まれ、米ニューヨーク出身。10月より日テレ系情報番組『スッキリ』の木曜コメンテーター。ほかに『教えて!ニュースライブ 正義のミカタ』(朝日放送、隔週土曜出演)、『ザ・ニュースマスターズTOKYO』(文化放送、毎週火曜出演)などレギュラー多数。

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反EU、移民排斥、そして言論統制まで! 欧州「極右旋風」の現実