運動が体に良いのは誰もが理解しているが、様々な理由から、実際に運動できていない人は多い。だが、飲むだけで運動の効果が得られるという秘密道具のような薬が開発中だという。今月6日付の「Science Alert」が報じている。

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■飲むだけで脂肪燃焼!?

 体型や体重のコントロール、健康維持のためには毎日の運動習慣が重要だ。だが、病気や障害、怪我などによって運動できない人は多い。そこで、実際に走ったり動いたりすることなしに、運動したのと同じ効果を身体に与えるような薬剤が世界各地で開発中であるという。

 米国カリフォルニア州のソーク研究所の生物学者ロナルド・エヴァンス氏は、運動した時に働く遺伝子ネットワークを働かせる化合物、通称「516」を2007年から研究している。高度に訓練されたアスリートたちのように、炭水化物ではなく脂肪を燃焼させる遺伝子群を働かせようというものだ。

 エヴァンス氏はこの研究を「エクササイズ遺伝子ネットワークへのバックドア」と表現し、運動できない人を救うものだとしている。彼は骨格筋が衰え運動機能が徐々に低下する難病デュシェンヌ型筋ジストロフィーの患者をターゲットに薬の開発を続け、ヒトへの安全性試験を受けている。

 516は内臓や組織をより健康な状態に戻し、慢性的な炎症性の損傷状態から回復させるのに役立つとエヴァンス氏は語る。薬の効果は筋ジストロフィーのみならず、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ハンチントン病など幅広い病気に有効だと考えているという。

■細胞を騙して糖分をエネルギーに

 516のような化合物は他にも見つかっている。英国サウサンプトン大学の生物化学者アリ・タバソリ氏は「化合物14」と呼ばれる薬物を発見した。この化合物は「エネルギーがない」と細胞を騙す働きをもつ。エネルギーが足りないと誤解した細胞は糖の代謝経路を刺激し、糖分をエネルギーに変えるのだという。

 化合物14は糖分を分解する効果があり、糖尿病やメタボリックシンドロームの治療法となりうる可能性がある。タバソリ氏によると、肥満のマウスを使った実験で、体重の減少や血糖値を一定に保つ調節機能の向上が見られたという。だが残念ながら、この化合物のヒトへの効果はまだ不明である。

 これらの薬は病気などで体を動かせない人々にとって福音となりうるが、心配されるのはアスリートへのドーピングである。実際、エヴァンス氏の516はすでに世界アンチ・ドーピング機構のリストに記載済みという。

 とはいえ、こんな薬が販売されたなら、病気以外の人々も買い求めるのは必至だ。毎日のデスクワークで運動不足の弊害を感じている人々は世界中に大勢存在する。エヴァンス氏は自らの薬の社会へ与える影響をを評して「ゲームチェンジャー」だとしている。飲むだけで運動の効果を得られる薬の登場は社会をどのように変化させるか? その日が訪れることを楽しみに待とう。

(編集部)
イメージ画像:「Thinkstock」より

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