7年前の東日本大震災では、人間のみならず多くのペットたちも命を落とした。避難所でペットが受け入れられないため、被災地に置き去りにされて死んだ動物は数え切れない。ほとんどの家庭において、今やイヌやネコは家族同然だ。断腸の思いで諦めたという被災者の気持ちは察するに余りある。しかし一部には、大災害をペットとともに生き抜くことに成功し、そればかりかペットに“助けられた”という事例まで報告されている。危機的状況の中で大切なペットを助け、そして飼い主もペットから助けられるためには何が必要なのか、じっくり考えてみたい。

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■大震災でペットはどのように扱われてしまうのか

 現在、日本でペットとして飼われているイヌは約900万匹、ネコは約950万匹。単純計算すると、全国で5~6世帯に1匹ずつイヌかネコが飼われていることになる。これだけ多くの人々がペットと暮らしていれば、大災害の時にどう扱うかは大問題だ。

 阪神・淡路大震災(1995年)では、イヌやネコの持ち込みが禁止されている避難所が多かった。その後、新潟県中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)などを経て状況は少しずつ好転し、熊本地震(2016年)では多くの飼い主がペットとの同行避難が可能だったという。しかしそれでも、世界有数の地震国であり災害対策で最先端にあるべき日本で、まだまだペットと災害に対する無理解が蔓延っている状況だ。

 たとえば東日本大震災の発生後、NPO法人「SORAアニマルシェルター」の二階堂利枝氏は被災動物シェルターを開設し、取り残されたイヌやネコたちを保護していたが、現地で遺体を捜索している人たちの前で「飼い主とはぐれたペットを探している」と話すと“白い目”で見られるなど、積極的に捜索できるような状況ではなかったという。


■災害時に飼い主を助けたペットたち

 災害発生時には、やはり飼い主がペットを助けることが最重要かつ当然だ。しかしその一方で直接的・間接的に、ペットに人間が“助けられる”ケースもあることは、あまり知られていないのではないだろうか? 以下に事例を紹介する。

・ 大地震前、イヌは外に出ようとする

 1948年10月5日、中央アジアのトルクメニスタンの首都アシガバードでM7.3の地震が発生し、2万人が命を落とした。その直前、とあるガラス工場の女子職員が、飼っていたスピッツが騒ぐため目を覚ました。犬は悲しげに吠えながら、パジャマを咥えて主人を家の外に引っ張り出した。ちょうどその時に大地震が発生したが、彼女はイヌのおかげで無傷だった。

 1966年4月26日、ウズベキスタン共和国で発生した直下型のタシケント地震(M7.3)では首都が壊滅したが、この時も発生直前に主人を家から引っ張り出して助けたイヌがいた。

 阪神・淡路大震災の前兆現象をまとめた『前兆証言1519!』(東京出版)には、発生前にイヌが外に出たがる例が9件、外で寝た例が3件記録されている。そのうち1件を紹介すると、地震当日の朝5時すぎ、大阪のある家で室内飼いのイヌが部屋の戸に何度も体当たりしていた。飼い主が起きると、外へ連れて行けと言わんばかりにリードを咥えてきたので、着替えて外に出たところ大地震が起きたという。

 このように、イヌの場合、何らかの手段で大地震の前兆を察知し、飼い主に危機的状況を伝えようと奮闘するケースがよく見られるようだ。ただし、イヌが飼い主を家から引っ張り出そうとする行為は、「散歩に連れて行ってほしい」という意思表示だった可能性も残る。その点についての判断は、人間の方がしなければならないだろう。

・ 大地震前、ネコが起こしてくれた

『前兆証言1519!』のネコの事例を見ても、飼い主を起こそうとした例が報告されている。大阪府豊中市で、地震当日の朝5時半、ヒマラヤンが今まで聞いたことのない大きな声で飼い主を起こそうとした。そのネコは普段、6時に目覚ましが鳴ると起こしに来てくれるのだが、「まだ早い」とネコを叱りつけても、しつこく大きな声で起こそうとする。そうしているうちに大地震が発生した。この場合は、ネコがパルス電磁波などの異変を察知して、飼い主に知らせようとしていたのだろうか。


■ハムスター26匹が次々と怪死!

 以下のケースは、フェイスブックのハムスター飼育グループで、筆者が直接教えてもらった、阪神淡路大震災のときの体験談だ。

 近畿地方に住む女性が飼っていたハムスター総勢26匹が、地震発生の数日前から全員同じ方向を向き、顔を洗う仕草をしていたという。筆者はそれを聞いて非常に驚いた。“全員が同じ方向を向く”現象は、地震発生前に金魚や熱帯魚などによく見られるが、これはパルス電磁波の発生によって水中に流れる電流を回避するための行動なのだ。また、洗顔行動はネコによく見られるが、これは地震前兆として発生するパルス電磁波により、目に電流が流れるためという説もある。いずれにしても、ハムスターがこのような行動を見せるなど、聞いたこともなかったのだ。

 この女性宅は被災を免れたが、地震翌日に26匹のうち半分のハムスターが死に、さらに次の日には、残り全員が息絶えていた。まったく理由がわからず、ただ悲しかったという。恐らく、初めて体験した大地震のショックと精神的ストレスから死んだものと思われる。その女性は、他にもイヌ3匹、金魚5匹を飼っていたが、金魚はおなかを上に向けて泳ぎ、イヌたちもソワソワ落ち着かない様子だった。これら全ては地震前兆としてよくあるケースだと筆者が説明したので、今後は大地震の前に報告してくれるかもしれない。

 これと似たような事例が『前兆証言1519!』にも記されている。大震災発生の3日前、兵庫県尼崎市で飼われていたハムスターが、昼間にもかかわらず落ち着かず、カゴの金網をガリガリ掻きむしっていたという。そのハムスターは、翌日に死んでしまった。このケースは地震発生前のことだが、逃げ出そうとしてもままならず、ストレスによって死んでしまったのだろう。


■大混乱必至! ないがしろにされるペットのこと

 東京都の『東京防災』ブックを見ると、ペットに関する記述は、「避難所のルールに従って、飼い主が責任を持って世話を行います」のたった1行で終わり。これには愕然とさせられる。ペットは家族の一員であるにもかかわらず、その存在がないがしろにされているとしか思えない。今年になって東京都が配布した女性視点の防災ブック『東京くらし防災』には大幅な加筆があったようだが、このような状況では、首都直下地震が発生した際、たとえば避難所におけるペットの処遇面だけを考えても、大混乱に陥ることは必至だろう。人間のための防災対策も重要だが、それと同時に、ペットの防災対策も常日頃から考えておくことが大切だ。

(百瀬直也)

イメージ画像:「Thinkstock」より

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