いまの仕事楽しい?……ビジネスだけで成功しても不満が残る。自己啓発を延々と学ぶだけでは現実が変わらない。自分も満足して他人にも喜ばれる仕事をつくる「魂が燃えるビジネス」とは何か? そのヒントをつづる連載第40回

 世の中には様々な文章作法、文章術が溢れています。「起承転結で書け」「序論、本論、結論で書け」「最初にテーマを決めろ」「一文一文を短くしろ」といったアドバイスはあなたも見かけたことがあると思います。

 こうしたアドバイスを読んだり聞いたりしている時は、「なるほど文章とはそうやってできているのか!」と納得できるかもしれません。しかし、ペンを持った時、あるいはキーボードの前に座った時、それで文章が書けるようになったでしょうか? おそらく答えはノーでしょう。

 文章を書くためには方法や技術の前に、まず用意しなくてはならないものがあります。それは自分の思いや考えです。「自分の思いや考えを伝えたい、表現したい」という原点がなければ、それは小学生の頃に嫌々書かせられた読書感想文と変わりません。

 言いたいことが何もないのに、「お前の考えを書け、感想を書け」と迫られても苦痛でしかありません。無理矢理ひねり出そうとしても、「◯◯と思いました、マル」といった表明的なものになってしまいます。

 そして、私たちは「あなたはどう思うの?」や「あなたの考えを聞かせて」といったタイプの質問や要求が苦手です。方法論や正解志向でがんじがらめになっているので、「おかしいところはないか」「間違っていないか」「みっともなくないか」を気にしてしまって、自由に手を伸ばせなくなっています。

 しかし、文章を書くというのは、まさにこの「自分の周囲に対して、意識の手を伸ばすこと」を意味しています。

 私はコーチングの一環としてメール相談をお受けしています。このサービスでも、初月は送られてくるメールが一通だけ、それも数行だけというケースが珍しくありません。しかし二ヶ月、三ヶ月と続けることで、次第に言葉が増えていき、十数行あるいは数十行といったメールが送られてくるようになります。

 もちろん相談事が増えたとか、悩み事が増えたということではありません。このサービスは「相談」と銘打っていますが、実は内容のほとんどは報告です。自分の身の回りでどんなことが起きて、それについてどう思ったのか。それをメールで報告してもらっています。

 自分の日常と思考を観察すれば、そこに自分の主張が見えてきます。何も書けないのは「主張がないから」ではなく、「主張が見えなくなっているから」です。

 お風呂や就寝前、帰宅途中などの空き時間を使って、最近自分に起きた出来事について思い返してみましょう。すると「あの時は、ああだったな、こうだったな」という思いが浮かんできます。そうしたら一言二言でもいいので、メモ帳やスマホに記録します。

 記録を続けているとはじめは短い単語だったのが、次第に文節を持った文になり、さらにそれが文章になっていきます。またよく使う単語やフレーズが明らかになり、それが自分の思考パターンだと理解できます。

 自分の思考パターンに気づくと、「自分のことくらい自分でわかっている」というのがデタラメだということがわかります。確かに他の人よりは、知っているかもしれません。しかし、だからといってそれは自分を深く知っていることにはならないのです。

 人間関係は鏡です。自分を知るには、誰かに話すことで他者を通じて知るのが早道です。頭ごなしに否定したりせず、しっかり話を聞いてくれる人が身近にいればいいのですが、お互いに忙しい現代ではそう言った機会がなかなかありません。私のコーチングや、自分でもできるメモはその代わりです。

 もちろん文章術や文章作法が無意味というわけでもありません。ただ、そうした方法論はある程度書けるようになった時に、ふと思い出す形で「なるほど、あの本に書いてあったのは、そういう意味だったのか」と役に立つのが基本です。

 方法論は「1」を「2や3」に増やすためにあります。しかし「ゼロ」を「1」にはしてくれません。その役割は自己啓発が担っています。だからこそ自分自身の声がわかるようになる自己啓発は、文章が書けるようになる第一歩なのです。

【佐々木】
コーチャー。自己啓発とビジネスを結びつける階層性コーチングを提唱。カイロプラクティック治療院のオーナー、中古車販売店の専務、障害者スポーツ「ボッチャ」の事務局長、心臓外科の部長など、さまざまな業種にクライアントを持つ。現在はコーチング業の傍ら、オンラインサロンを運営中。ブログ「星を辿る