愛犬のカルテの開示請求をして動物病院に拒まれた場合、どうしたらいいのかーー。大切な家族の一員としてペットと暮らしている人にとっては、通う動物病院を変える場合や医療過誤が疑われる場合などに、カルテがほしいと考えるのは自然なことでしょう。

京都弁護士会所属の西村友彦弁護士もその一人。愛犬の治療のために通っていた動物病院を変更する際、カルテ開示を求めたものの応じてもらえず、日本獣医師会などに問い合わせをしたのちに改めて法的観点を盛り込んで請求したら、一転して応じてもらったといいます。

どのように開示請求をし、なぜ開示されるに至ったのか。事の経緯とこの問題から浮かび上がる動物病院の飼育者対応における課題について、西村弁護士に聞きました。

●動物病院「法的義務はない」と当初応じず

ーーまず、どのようにカルテの開示を求めたのでしょうか

「最初は、動物病院の出方が分からなかったので、カルテの全てのコピーを欲しいと電話で伝えました。人間の医療機関でカルテの開示そのものを拒否されることはまずなく、動物病院も請求には応じる可能性があると考えました。しかし、動物病院は、今までそのようなことを言われたことはない、カルテを開示する法的義務はないと言って拒否しました」

ーー法的な開示義務はないということは間違いないのでしょうか

「確かに獣医師法の規定では診断書の交付義務(獣医師法19条2項)はありますが、カルテの開示義務はありません。しかし、日本獣医師会が小動物(犬や猫など)医療に従事する獣医師の職業倫理として定めた『小動物医療の指針』には、『飼育者から診療簿の開示を求められた場合には、積極的にこれに応じるよう努めなければならない』と明記されています」

ーー努力義務とはいえ、獣医師会の職業倫理に照らせば問題がありそうです

「努力義務ではありますが、これに反する行動を取ることは、日本獣医師会が定める職業倫理規範に反すると理解できます。この『指針』があることは動物病院に電話する前に調査済みでしたが、カルテの開示を拒否された後、日本獣医師会に連絡を取り、私の理解が正しいことを念のため確認しました。

また、ペットの医療情報は、飼い主の所有物についての情報、つまり飼い主の『個人情報』との解釈も可能だと考えられます」

●結局、動物病院は開示に応じる

ーー最終的に、どのようにして開示を実現したのでしょうか

「今度は正式に文書で、(1)カルテの開示に応じないことは日本獣医師会が定める職業倫理規範に違反するというのが日本獣医師会の見解であること、(2)ペットの情報は飼い主の『個人情報』との解釈が可能であり、個人情報保護法上の手続を取ることも考えられること、(3)しかし無益な争いをしたくはないので任意に開示してほしいこと、を記載し、『指針』のコピーも添付して送付しました。

動物病院が、私が送付した文書のどの点を見て態度を変えたのかは分かりませんが、文書を送付した4日後にカルテの全てのコピーを送付してきました。

今回のことで、動物病院がカルテの開示義務はないとの対応をすることを現実に認識しました。動物医療の領域でも広くカルテが開示されるよう、この問題には関わっていきたいと思います」

(弁護士ドットコムニュース)

【取材協力弁護士】
西村 友彦(にしむら・ともひこ)弁護士
京都弁護士会所属 京都大学卒
弁護士は、「良くないことを取り除く」のではなく「積極的にプラスを生み出す」との信念で弁護活動を行っている。
事務所名:加藤・藤田法律事務所
事務所URL:http://lawyernishimura.com/index.php?FrontPage

ペットのカルテ請求を動物病院が拒否、「愛犬家」弁護士が開示を実現させた手法